📖 英文(221 words)
Every student in Japan knows the sound: “Kin-kon-kan-kon.” It plays at the start and end of every class. But do you know where this melody comes from? Surprisingly, it comes from London, England. The melody is called the “Westminster Chimes.” It is the same tune that plays every 15 minutes at Big Ben, the famous clock tower next to the British Parliament.
The melody was first written in 1793 for a church clock in Cambridge, England. Later, in 1851, it was chosen for the new clock at the Palace of Westminster. Big Ben made the tune world-famous. People around the world know this sound.
So how did it reach Japan? In the 1950s, a junior high school in Ota, Tokyo, had a problem. Their old school bell broke often and made a loud, scary noise. A teacher named Inoue Shōbi wanted a gentler sound for the students. He and his cousin, an engineer, developed a new chime using the Westminster melody. It was first used in 1956 at Omori Daishi Junior High School. Students and teachers loved the calm, musical sound. Soon, other schools copied the idea, and it spread across the whole country.
Today, almost every school in Japan uses this chime. Most Japanese people do not know it is connected to London. Next time you hear it, think of Big Ben!
🔊 音読用音声
📝 重要語句
a series of musical notes that make a tune(曲を作る音の並び)
an area in London where the British Parliament is located(イギリス議会があるロンドンの地域)
the group of people who make laws in a country(国の法律を作る人々の集まり)
a piece of music or a melody(音楽やメロディーの一曲)
a large and grand building where a king or government works(王や政府が使う大きな建物)
stopped working correctly(正しく動かなくなった)
making you feel afraid(怖い気持ちにさせる)
soft, kind, and not strong(柔らかで強くない)
a person who designs or builds machines(機械を設計したり作ったりする人)
moved to many places or people(多くの場所や人に広がった)
🇯🇵 日本語訳
日本の学生なら誰でも知っているあの音——「キンコンカンコン」。授業の始まりと終わりに必ず鳴るチャイムです。でも、あのメロディーがどこから来たか、ご存じですか? 実は、イギリス・ロンドン生まれなのです。正式な名前は「ウェストミンスターの鐘」。イギリス国会議事堂のそばにそびえる有名な時計塔ビッグベンで、15分ごとに鳴り響いているのとまったく同じ旋律です。
このメロディーが最初に作られたのは1793年、ケンブリッジにある教会の時計のためでした。その後1851年、ウェストミンスター宮殿の新しい時計に採用されます。ビッグベンの鐘として世界中に知れ渡り、誰もが耳にしたことのある音になりました。
では、なぜ日本の学校に? 1950年代、東京都大田区のある中学校では、授業の合図に使っていたベルがしょっちゅう故障し、しかもその音がけたたましく、生徒たちを怖がらせていました。教諭の井上尚美(いのうえ・しょうび)は、もっと穏やかな音にできないかと考え、技術者の従姉妹とともに新しいチャイムの開発に取り組みます。ウェストミンスターの旋律を採用したそのチャイムが初めて鳴ったのは、1956年の大森第四中学校。穏やかで音楽的な響きは生徒にも教師にも好評で、瞬く間に他の学校へと広がり、やがて全国の「当たり前」になりました。
今では、日本のほぼすべての学校でこのチャイムが使われています。ロンドンのビッグベンとつながっていると知っている人は、実はほとんどいません。次にあの「キンコンカンコン」を聞いたら、ぜひビッグベンのことを思い出してみてください。
🔔 コラム:「キンコンカンコン」に秘められた230年の物語
あの4つの音の並び——じつは230年以上の歴史を持つ、由緒あるメロディーなのです。
🔸 ケンブリッジで生まれた「4つの音」
「ウェストミンスターの鐘」と呼ばれていますが、発祥の地はウェストミンスターではありません。もともとの作曲は1793年、イングランド東部の大学都市ケンブリッジにある「セント・メアリー・ザ・グレート教会」に新しい時計を設置する際、その鐘の旋律として生まれました。作曲を依頼されたのは法学教授のジョゼフ・ジャウエットですが、実際には音楽教授のジョン・ランドールか、その弟子で当時まだ10代の天才音楽家ウィリアム・クロッチが書いたとされています。じつは正確な作曲者が誰なのか、230年経った今も確定していないのです。メロディーはヘンデルのオラトリオ『メサイア』のアリア「我は知る、我が救い主は生きたもうことを」の旋律に由来するという説も長年信じられてきましたが、確かな証拠は見つかっていません。
🔸 ビッグベンの壁に刻まれた「祈り」
1851年、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジの卒業生であるエドマンド・ベケット・デニソンが、学生時代に聞き慣れたこの旋律をウェストミンスター宮殿の新しい時計に採用しました。大時鐘ビッグベンが初めて鳴ったのは1859年7月11日。以来160年以上、ロンドンの空にこの音色が響き続けています。時計室の壁には鐘のメロディーに合わせた銘文が刻まれています。「すべての時を通して、主よ、導きたまえ。汝の御力によって、迷いは消え去る」——旧約聖書の一節に基づく厳かな祈りです。学校で「授業始まるよ!」としか思えないあの音に、こんな敬虔な由来があったとは驚きです。
🔸 「怖いベルの音」を変えた人たち
日本での導入は、ある意味「偶然の一致」でした。大森第四中学校の井上尚美教諭がBBCラジオから流れるビッグベンの鐘にヒントを得て開発を進めていた同じ頃、発明家の石本邦雄や警報機メーカーの技術者も、それぞれ独自にウェストミンスターの鐘を学校用チャイムとして開発していたのです。当時の学校では工場のサイレンのような金属的なベルが使われており、「もっと優しい音を」という願いが各地で同時に芽生えていたのでしょう。時代が「穏やかな音」を求めていたのです。
🔸 チャイムのない学校も登場
近年、北欧式の教育方法を取り入れた「ノーチャイム制」を導入する学校が増えています。チャイムに頼らず、生徒自身に時間管理をさせることで自律心を育てる狙いがあるそうです。とはいえ、大多数の学校では今もあの旋律が健在です。
ケンブリッジの教会で生まれ、ロンドンの国会議事堂で世界に広まり、太平洋を越えて日本の教室に届いた4つの音。230年の旅を経た「キンコンカンコン」は、今日もどこかの学校で鳴り響いています。次にあのチャイムを聞いたら、その背後に広がる壮大な物語に、少しだけ思いを馳せてみてください。

