毎年、その年を象徴する言葉として発表される「Word of the Year(今年の言葉)」。日本でも「新語・流行語大賞」が年末の風物詩となっていますが、世界ではどのような言葉が注目されているのでしょうか。
権威あるオンライン辞書サイト「Dictionary.com」が発表した2025年の「Word of the Year」が、今、世界中で大きな話題を呼んでいます。なんと、今年選ばれたのは…「67」という数字だったのです。
「え、数字が今年の言葉?」「どういう意味?」そんな疑問が聞こえてきそうです。この記事では、この不可解なトレンドの正体から、惜しくも大賞を逃した注目のノミネート語まで、2025年の世界の潮流を分かりやすく解説していきます。
大賞はまさかの「67」!その意味と背景とは?
驚くべきことに、2025年を象徴する言葉として選ばれたのは「67(シックス-セブン)」でした。決して「ろくじゅうなな」と読んではいけません。この数字は、一体何を意味するのでしょうか。
「67」の意味:
実は、「67」には明確な定義がありません。文脈によって「まあまあかな(so-so)」や「どっちでもいいよ(maybe this, maybe that)」といった曖昧な返答として使われます。手のひらを上に向けて交互に上下させる独特のジェスチャーを伴うこともあります。↓
その最大の魅力は、「定義できないこと」そのものにあります。若者、特にアルファ世代(2010年代初頭〜2020年代中盤生まれ)の間で爆発的に流行しており、大人をからかったり、仲間内での連帯感を確認したりするために使われるスラングなのです。「今日の学校どうだった?」と聞かれた子供が「67!」と答えれば、それは「まあまあだったよ」という意味かもしれませんし、単に「答えたくない」という意思表示かもしれません。
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なぜ「67」が流行したのか?
この流行の火付け役は、Skrillaというアーティストの楽曲「Doot Doot (6 7)」や、TikTokでバイラルになったバスケットボール選手の動画だとされています。そこから瞬く間に若者文化に浸透しました。
Dictionary.comは、この現象を「brainrot(脳の腐敗)」という言葉と関連付けています。これは、アルゴリズムによって延々と供給されるオンラインコンテンツを際限なくスクロールし続ける、いわば「ネットに毒された」状態を指す言葉です。意味があるようでない「67」の流行は、情報過多な現代社会が生み出した、必然的な帰結なのかもしれません。
トップ10入り!2025年を映し出す注目ワード
「67」以外にも、今年の世相を鋭く切り取った言葉が多数ノミネートされました。注目のワードを見ていきましょう。
| 単語 | 意味 | 解説 |
|---|---|---|
| Agentic(エージェンティック) | (AIなどが)自律的に行動する能力 | もともとは心理学用語でしたが、AIが自ら判断しタスクを実行するようになったことで、テクノロジーの文脈で使われるようになりました。「AIが自分で考えて動く」時代の到来を象徴する言葉です。 |
| Aura farming(オーラ・ファーミング) | オーラ(雰囲気)を養殖すること | SNSなどで自分の「雰囲気」や「カリスマ性」を意図的に作り上げ、注目を集めようとする行為。日本で言う「自己ブランディング」や「インスタ映え」にも通じる概念です。 |
| Broligarchy(ブロリガーキー) | 身内びいきの寡頭制 | 「Bro(仲間)」と「Oligarchy(寡頭制)」を組み合わせた造語。特定の(主に男性の)同質的なエリート層が権力を独占している状態を皮肉る言葉です。 |
| Clanker(クランカー) | ポンコツロボット(AIへの蔑称) | もともとはSF用語で物理的なロボットを指しましたが、現在ではAIシステムやチャットボットを嘲笑的に呼ぶ際に使われます。AIへの期待と不安が入り混じった大衆感情の表れと言えるでしょう。 |
| 🧨 (dynamite emoji)(ダイナマイト・エモジ) | テイラー&トラビス | 人気歌手テイラー・スウィフトとNFL選手トラビス・ケルシーのカップルの愛称「T’n’T」のシンボルとして定着。絵文字が文化的な出来事によって新たな意味を持つ好例です。 |
| Gen Z stare(ジェンゼット・ステア) | Z世代の無表情な視線 | Z世代が職場などで見せるとされる、感情の読み取れない無表情な眼差し。世代間のコミュニケーションギャップを象徴する言葉として話題になりました。 |
| Overtourism(オーバーツーリズム) | オーバーツーリズム | 観光地に許容量を超える観光客が押し寄せる問題。ヴェネツィアの観光税や日本の富士山へのアクセス制限など、世界共通の課題として再認識されています。 |
| Tradwife(トラッドワイフ) | 伝統的な妻 | 専業主婦として家庭を守るという、伝統的な女性の役割を理想とするライフスタイル、またはその思想。ジェンダーに関する現代的な議論を巻き起こしています。 |
まとめ
2025年の「Word of the Year」を振り返ると、AIの急速な進化、世代間のコミュニケーションの変化、そしてSNSが作り出す新たな文化という3つの大きな潮流が見えてきます。
特に大賞となった「67」は、一見すると無意味で、ふざけているようにしか見えません。しかしその背景には、常にオンラインで繋がり、膨大な情報に晒されながら生きる現代人の、新しいコミュニケーションの形が隠されています。それは、明確な言葉よりも、文脈やノリ、そして「仲間であること」の確認を重視する文化の表れなのかもしれません。
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