なぜ「1日100語」なのか:じっくり1周より高速で何周も
単語帳が進まない人によくあるのが、「1ページずつ完璧に覚えてから次へ進む」やり方です。まじめな方法に見えますが、次のような問題があります。
- 最初の数ページだけ何度も見て、後半の単語にはいつまでも出会わない
- 完璧に覚えたつもりのページも、1週間後にはかなり忘れている
- 進みが遅いので、やる気が続かない
記憶の研究では、同じ回数だけ復習するなら、時間をあけて何度も出会うほうが長く残ることが知られています(間隔効果)。また、答えを見る前に自分で思い出そうとすることも記憶を強くします(想起練習)。
1日100語の高速回しは、この2つを単語帳で実行する方法です。1回あたりの接触は短くても、何日もかけて同じ単語に何度も出会い、そのたびに「意味、出てくる?」と自分に問いかけます。
ポイント:100語は「覚える量」ではなく「出会う量」。1回で覚えようとしないことが、高速回しの一番のコツです。
もちろん、100語という数字は目安です。部活や学校の課題で時間がとれない日は50語でもかまいません。大事なのは、毎日、前に進みながら、前の範囲にも戻るリズムを作ることです。
1語3〜5秒:高速回しの基本ルール
1日100語を回すには、1語にかける時間を決めておく必要があります。
基本の流れ
- 英単語を見る(日本語訳は隠す)
- 3〜5秒以内に意味を頭の中で言う
- 訳を見て答え合わせ
- 結果を○△×でつける
- 次の単語へ
1語5秒なら、100語で10分弱です。答え合わせの時間を入れても、15〜20分あれば1日の新しい範囲は回せます。
○△×の判定基準
- ○:3秒以内に正しい意味が出た
- △:時間はかかったが出た、または意味があいまい
- ×:出なかった、またはまちがえた
判定は厳しめにつけるのがコツです。「なんとなく見覚えがある」は△か×。見覚えがあることと、意味を言えることは別物です。
発音もいっしょに
単語帳に音声がついているなら、再生しながら回すのがおすすめです。目だけで回すと、リスニングで知っている単語が聞き取れない、ということが起きやすくなります。声に出せる環境なら、小さな声でまねしながら回しましょう。
ポイント:5秒考えて出ない単語は、それ以上ねばらない。すぐ答えを見て×をつけ、次へ。ねばる時間は、あとで×だけ見直すときに使います。
×の単語だけを集中攻撃する方法
高速回しの本当の勝負は、×がついた単語をどう処理するかです。
ステップ1:×だけを抜き出す
1日の100語を回し終えたら、×の単語だけを別リストにします。単語カード、ノート、アプリのどれでもかまいません。1日100語なら、最初のうちは×が30〜50語出ることもよくあります。気にしなくて大丈夫です。
ステップ2:×の単語に「フック」をつける
×の単語は、ただ見直すだけでは次の日もまた×になりがちです。何か1つ、記憶の取っかかり(フック)をつけましょう。
- 語源で分解できる単語:predict = pre(前もって)+ dict(言う)→「予言する」
- 音と意味がまったく結びつかない単語:語呂合わせでキーワードを作る
- 使い方がイメージしにくい単語:短い例文を1つ音読する(例:She was reluctant to speak in front of the class.)
ステップ3:寝る前と翌朝にもう一度
×リストは、その日の寝る前にもう一度テストし、翌朝にもう一度テストします。そこで○になれば、単語帳の通常の周回に戻します。
ポイント:全部の単語に時間をかけるのではなく、×の単語だけに時間を集中させる。これが「高速」と「定着」を両立させるしくみです。
1か月で1冊を回すプラン(4週間)
ここでは、1,500語前後の大学入試向け単語帳を例に、4週間のプランを紹介します。語数が違う単語帳でも、考え方は同じです。
1週目:新規100語+前日分の復習
- 毎日、新しい100語を高速で回す
- 前日の100語も、もう一度高速で回す
- ×だけのリストを毎日作る
1週目の終わりには、約700語に一度は出会っている状態になります。
2週目:新規100語+先週分の拾い直し
- 毎日、新しい100語を回す(2週目の終わりで約1,400語)
- 1週目の範囲を1日100語ずつもう一周。前回○だった単語は、見て1秒で意味が出たらすぐ次へ
3週目:残りの新規+全体の2周目
- 残りの単語を回しきる(数日で終わる)
- 余った日は、1ページ目から全体を2周目に入る。1日200〜300語ペースでも、○の単語は一瞬で流せるので意外と回せます
4週目:×と△だけの総攻撃
- これまでに×か△がついた単語だけを集めて回す
- 各単語に、語源・ゴロ・例文のどれかでフックをつける
- 週末に、ランダムに100語を選んで自分でテストする
ポイント:1か月で「完璧」は目指さない。1か月後に「1冊全部に3回以上出会っていて、苦手な単語がリストになっている」状態がゴールです。2か月目は、そのリストを中心にもう1周します。
高速回しでよくある失敗
失敗1:日本語訳を見ながら流し読みしている
訳が見えている状態で回すと、「思い出す」作業がなくなり、ただの読み返しになります。赤シートや手で隠すなどして、必ず自分で意味を言ってから訳を見るようにしましょう。
失敗2:○の判定が甘い
「ああ、知ってた知ってた」とすべて○にしてしまうと、×リストが空になり、弱点が見えなくなります。3秒以内に出なかったら△、と機械的に決めておくのがおすすめです。
失敗3:新しい範囲ばかり進めて、戻らない
新しい単語を進めるのは気持ちがいいのですが、戻らなければ前の範囲はどんどん忘れます。プランでは、毎日「新しい範囲」と「前の範囲」をセットにしています。
失敗4:意味を1つしか覚えていない
大学入試では、よく知っている単語の別の意味が問われることがあります。たとえば address は「住所」だけでなく「(問題に)取り組む」、fine は「すばらしい」だけでなく「罰金」の意味でも出てきます。2周目以降は、単語帳にのっている2つ目の意味にも目を向けましょう。
ポイント:高速回しは「速く読む」ことではなく「速く思い出す」こと。思い出す作業が抜けると、何周しても定着しません。
苦手な単語は「ゴロ」と「語源」で仕上げる
高速回しを続けていると、何周しても×のままの単語が必ず残ります。ここで役立つのが、ゴロと語源という2つの道具です。
ゴロが向いている単語
音と意味がまったく結びつかない単語です。STUDY HACK内の「超絶ゴロ暗記 大学入試英単語500」(/studyhack/goro/)では、大学入試で狙われやすい単語をゴロとイメージで確認できます。×リストに残った単語をここで探して、ゴロがあれば借りてしまいましょう。
語源が向いている単語
接頭辞や語根で分解できる単語です。「語源で覚える英単語」(/studyhack/gogen/)で、同じ語根の仲間をまとめて覚えると、1つ覚えるごとに周りの単語もついてきます。たとえば spect(見る)がわかれば、inspect、respect、prospect などがまとめて整理できます。
単語帳にのっていない単語の成り立ちが気になったら、原田英語の「英語語源辞典 AIはらだくん」(https://www.haradaeigo.com/gogen/ )で調べてみるのもおすすめです。
ポイント:高速回しで「知らない単語」をあぶり出し、ゴロと語源で「しつこい単語」をしとめる。この役割分担で、単語帳は1冊ずつ確実に仕上がります。
今日やることはシンプルです。単語帳の今日の100語を、訳を隠して1語5秒で回し、×の単語だけを書き出してみてください。



