語源で覚えると何がうれしいのか
英単語を1語ずつ丸暗記していると、覚えた数がそのまま「覚えなければいけない量」になります。ところが語源のパーツを知っていると、1つの部品が何十語もの手がかりになります。
たとえば port(運ぶ)という語根を知っていれば、次の単語がまとめてつながります。
- import(中へ運ぶ → 輸入する)
- export(外へ運ぶ → 輸出する)
- transport(向こうへ運ぶ → 輸送する)
- portable(運ぶことができる → 持ち運べる)
- report(元へ運ぶ → 報告する)
語源学習の良さは3つあります。
- 記憶のフックが増える:意味のないアルファベットの並びより、意味のある部品の組み合わせのほうが覚えやすい。
- 初見の単語を推測できる:長文で知らない単語に出会っても、部品から意味の方向性をつかめる。
- 品詞がわかる:語尾の接尾辞を見れば、名詞なのか形容詞なのかがおおよそ判断できる。
ポイント:語源は「全部を覚える学問」ではなく、「覚えにくい単語に引っかかりを作る道具」として使うのがちょうどいい距離感です。
まず覚えたい頻出の接頭辞
接頭辞(prefix)は単語の頭につき、意味の方向を変えるパーツです。数は多いですが、よく出るものから押さえれば十分です。
否定・反対を表す
- un-:unhappy(不幸な)、unlock(鍵を開ける)
- in- / im- / il- / ir-:impossible(不可能な)、illegal(違法な)、irregular(不規則な)
- dis-:disagree(反対する)、disappear(消える)
- anti-:antibiotic(抗生物質)
in- が im- や il- に変わるのは、後ろの音に合わせて発音しやすくなるためです。possible の前では im-、legal の前では il- になります。
位置・方向を表す
- pre-(前):preview(下見)、prepare(準備する)
- re-(再び・元へ):rebuild(建て直す)、return(戻る)
- inter-(間):international(国際的な)、interview(面接)
- trans-(越えて):translate(翻訳する)、transfer(移す)
- sub-(下):subway(地下鉄)、submarine(潜水艦)
- ex-(外):exit(出口)、expand(広げる)
数を表す
- uni-(1):uniform(制服=1つの形)、unique(唯一の)
- bi-(2):bicycle(自転車)、bilingual(2か国語を話す)
- tri-(3):triangle(三角形)
ポイント:接頭辞は「単語の向き」を決める矢印。矢印がわかれば、細かい意味は文脈で決められます。
語根:単語の「中身」を担うパーツ
語根(root)は単語の中心にある意味のかたまりです。受験や資格試験でよく見かけるものを挙げます。
- dict(言う):dictionary(辞書)、predict(予言する)、contradict(矛盾する)
- spect(見る):inspect(検査する)、respect(尊敬する=振り返って見る)、prospect(見通し)
- ject(投げる):reject(拒絶する)、inject(注射する)、project(計画・投影する)
- mit / mis(送る):submit(提出する)、transmit(伝達する)、mission(任務)
- vid / vis(見る):video、visible(目に見える)、revise(見直す)
- struct(建てる):construct(建設する)、structure(構造)、instruct(教える)
ここで大切なのは、語根の意味は「そのまま日本語訳になる」とは限らないことです。respect を「再び見る」と直訳しても「尊敬する」にはなりません。「何度も振り返って見たくなる人 → 尊敬する」のように、少しイメージをふくらませてつなぐのがコツです。
自作例文で確認しよう
- The weather forecast predicted heavy rain.(天気予報は大雨を予測した)
- She submitted her report before the deadline.(彼女は締め切り前にレポートを提出した)
- They inspected every car at the border.(彼らは国境ですべての車を検査した)
語根を知ったら、その語根を含む単語を例文の中で確認する。この「分解→例文」の往復が記憶を強くします。
接尾辞で品詞を見抜く
接尾辞(suffix)は単語の最後につき、主に品詞を決めます。意味よりも「文の中での役割」を教えてくれるパーツです。
名詞をつくる接尾辞
- -tion / -sion:action(行動)、decision(決定)
- -ment:development(発展)、agreement(合意)
- -ness:kindness(親切)、happiness(幸せ)
- -er / -or(人):teacher、visitor(訪問者)
- -ity:ability(能力)、reality(現実)
形容詞をつくる接尾辞
- -able / -ible(〜できる):readable(読みやすい)、flexible(柔軟な)
- -ful(〜に満ちた):useful(役に立つ)
- -less(〜がない):careless(不注意な)
- -ous:dangerous(危険な)
- -ive:active(活動的な)、creative(創造的な)
動詞・副詞をつくる接尾辞
- -ize / -ise:realize(気づく)、organize(整理する)
- -en:widen(広げる)、strengthen(強める)
- -ly:quickly(速く)、carefully(注意深く)
品詞がわかると、長文や文法問題でとても役立ちます。空所の前に the があって後ろに of が続くなら名詞が入る、と判断できれば、選択肢の中から -tion や -ment の語を選べます。TOEIC Part 5 や大学入試の語形問題でよく使う考え方です。
ポイント:知らない単語でも、語尾を見れば「名詞っぽい」「形容詞っぽい」がわかる。これだけで読むスピードが上がります。
語源学習のよくある失敗
便利な語源学習ですが、使い方を間違えると遠回りになります。
失敗1:語源リストの丸暗記から始める
接頭辞100個、語根300個の一覧表を最初から覚えようとすると、単語を覚えるより大変になってしまいます。語源はすでに知っている単語から逆算して気づくほうが身につきます。
失敗2:すべての単語に語源を当てはめる
英語にはさまざまな言語から入った単語があり、語源どおりに意味が決まらない単語もたくさんあります。たとえば inflammable は in- があるのに「燃えやすい」という意味で、否定ではありません。語源は推測の手がかりであって、答えではありません。
失敗3:分解しただけで満足する
「pre+dict で predict」と理解しても、発音や使い方を確認しなければ使えません。分解したら、音声を聞いて発音し、例文で使われ方を見るところまでセットにしましょう。
失敗4:怪しい語源話を信じ込む
ネット上には、おもしろいけれど根拠のはっきりしない語源話もあります。気になったら、辞書の語源欄(英和辞典の多くに載っています)で確認するのが安心です。
1週間の語源トレーニングメニュー
1日10〜15分でできるメニューです。単語帳の学習に上乗せして使ってください。
- 月曜:否定の接頭辞――un- / in- / dis- を含む単語を単語帳から5つ探し、元の単語とペアで書く(happy / unhappy など)。
- 火曜:方向の接頭辞――pre- / re- / ex- / inter- を含む単語を5つ集め、「矢印の向き」を図にする。
- 水曜:語根1つを深掘り――port か spect を選び、その語根を含む単語を辞書で5つ調べて例文を1つずつ読む。
- 木曜:接尾辞で品詞クイズ――単語帳から10語選び、語尾だけを見て品詞を当てる。答え合わせで間違えたものに印をつける。
- 金曜:品詞の変身練習――decide → decision → decisive のように、1つの語を名詞・形容詞・副詞に変身させる。5セット作る。
- 土曜:長文で推測――英文を1つ読み、知らない単語を語源から推測してメモ。そのあと辞書で答え合わせ。
- 日曜:想起テスト――今週出会ったパーツを白紙に書き出し、それぞれ例の単語を2つずつ思い出す。
ポイント:週末の「思い出すテスト」がいちばん大事。書き出せなかったパーツを翌週にもう一度使いましょう。
まとめ:今日1つ、パーツを見つけよう
語源学習のコツは、表を覚えることではなく、知っている単語の中にパーツを見つけて、知らない単語へ広げることです。
- 接頭辞は単語の「向き」
- 語根は単語の「中身」
- 接尾辞は単語の「役割(品詞)」
この3つを意識するだけで、単語帳のページが「バラバラの暗記リスト」から「つながった地図」に変わっていきます。
まずは今日、単語帳を開いて re- か pre- で始まる単語を3つ探してみてください。それが語源学習のスタートです。



