口述試験の形式を正確に知ろう
観光庁の「全国通訳案内士試験ガイドライン」では、口述試験について次のように定められています(2026年9月時点で確認)。
- 外国語は筆記試験で選んだものと同じ
- 外国人観光客の関心が強い、日本の観光地等に関連する地理・歴史・産業・経済・政治・文化の主要な事柄を題材に、通訳案内の業務を擬似的に行う
- 試験時間は10分程度
- 内容は次の2題
- 通訳問題:試験委員が読み上げる日本語を外国語に訳し、その内容に関連した質疑を行う(メモを取ることが認められている)
- プレゼンテーション問題:提示される3つのテーマから1つを選び、外国語で説明し、そのテーマについて試験委員と質疑応答を行う
- 合格基準:評価項目ごとに具体的な評価基準を設定し、原則7割
JNTOの2026年度施行要領では、英語の口述試験の受験地は東京近郊・大阪近郊・福岡市とされていました。
5つの評価項目から逆算する
ガイドラインでは、評価項目として次の5つが挙げられています。
- プレゼンテーション
- コミュニケーション(臨機応変な対応力、会話継続への意欲等)
- 文法及び語彙
- 発音及び発声
- ホスピタリティ(全国通訳案内士としての適切な受け答え等)
ここから見えてくるのは、英語の正確さだけで評価される試験ではないということです。わからない質問をされても会話を続けようとする姿勢や、案内する人としての受け答えも評価の対象になります。
練習で意識したいこと
- 沈黙しない:Let me think for a moment. / That's a good question. でつなぐ
- 聞き返してよい:Could you say that again, please?
- 相手を見て話す:原稿を読み上げる口調にならない
- 聞き取りやすい声で:少しゆっくり、はっきりと
ポイント:「ガイドとして目の前の旅行者に話している」つもりで練習すると、5つの評価項目がまとめて鍛えられます。
プレゼンは「3文の型」+肉付け
3つのテーマから1つを選んで説明するプレゼンは、型を決めておくことが最大の対策です。
基本の3文
- 定義:それが何かを1文で言う
- 具体:いつ・どこで・誰が・何をするかを1つ足す
- 意味づけ:なぜ大切か、旅行者にとってどんな魅力があるかで締める
例:花見(hanami)
- Hanami is the custom of enjoying cherry blossoms, usually in spring.
- Many people have picnics under the trees in parks with their family, friends, or coworkers.
- Because the blossoms last only a short time, hanami reminds many Japanese people to enjoy the present moment. If you visit Japan in spring, I recommend visiting a famous park early in the morning to avoid the crowds.
この3文を土台に、歴史や場所、旅行者へのアドバイスを足して長さを調整します。最後に旅行者向けのひと言を入れると、ガイドらしいプレゼンになります。
テーマの選び方
3つのテーマが示されたら、「自分が具体例を話せるもの」を選ぶのが基本です。知識が多いテーマより、具体的な場面を1つ話せるテーマのほうが、質疑応答にも対応しやすくなります。
通訳問題は「要点+言い換え」
通訳問題では、試験委員が読み上げる日本語を英語に訳します。ガイドラインではメモを取ることが認められています。
メモのコツ
- 全部書こうとしない。数字・固有名詞・否定・順序を優先
- 記号を決めておく(例:↑増える、↓減る、×禁止、→理由)
- 主語と動詞だけを英語で書く練習も効果的
訳すときのコツ
- 一字一句ではなく、意味を正確に伝える
- むずかしい単語が出てこなければ、やさしい言葉に言い換える
- 「参拝客」→ people who visit the shrine to pray
- 「混雑が予想されます」→ It will probably be very crowded.
- 訳し終えたら、関連する質問にガイドとしての立場で答える
練習方法
日本語の観光案内文やニュースを家族に読み上げてもらい、メモを取って英語に訳します。1人で練習するときは、日本語の文章を自分で録音して、それを聞きながら訳すと本番に近い練習ができます。
1週間の練習メニュー
筆記試験のあと、口述試験までの期間は限られています。毎日少しずつ、プレゼンと通訳の両方を回しましょう。
1週間メニュー(1日45分の例)
- 月:プレゼン3テーマ(寺社・食・行事から1つずつ)を3文の型で準備し、録音
- 火:通訳練習5問+昨日の録音を聞き直して改善
- 水:プレゼン3テーマ(自然・歴史・現代文化から1つずつ)
- 木:通訳練習5問+想定質問への回答練習
- 金:プレゼンと通訳を本番と同じ流れで通す(10分)
- 土:家族や友人に試験委員役をしてもらい、質疑応答を練習
- 日:1週間の録音を聞き比べ、次の週の重点を決める
テーマの集め方
寺社、祭り、食べもの、伝統芸能、自然、歴史上の人物、現代の生活など、ジャンルを決めてテーマのリストを作りましょう。原田英語の「日本文化ナビ」のように、テーマ別の英語説明と音声がまとまったサイトを使うと、準備の材料を集めやすくなります(公式教材ではないので、内容は自分でも確認しながら使いましょう)。
よくある失敗
失敗1:原稿を丸暗記して読み上げ口調になる
覚えた文章をそのまま再現しようとすると、途中で1語忘れただけで止まってしまいます。覚えるのは型とキーワード。文は毎回少し変わってかまいません。
失敗2:質問に完璧に答えようとして黙る
質疑応答では、知らないことを聞かれることもあります。黙ってしまうより、I'm not completely sure, but I believe... のように、わかる範囲で誠実に答えるほうが、コミュニケーションやホスピタリティの面で好ましい対応です。
失敗3:自分の声を聞いていない
録音を聞き直さないと、発音や話すスピードの癖に気づけません。1日1回は録音して聞く習慣をつけましょう。
失敗4:日本語での知識があいまいなまま
英語がうまく出てこない原因が、実は日本語での理解不足ということもよくあります。説明に詰まったテーマは、まず日本語で説明できるか確認しましょう。
本番の当日に向けて
前日まで
- よく使うつなぎ表現(Let me think... / In other words... / For example...)を口に慣らしておく
- 得意なテーマのプレゼンを3つ、どんな順番でも話せるようにしておく
- 受験票に記載された会場と時間を確認する(JNTOの2026年度施行要領では、口述試験の会場と時間は受験票で案内され、変更できないとされていました)
当日の心構え
- 入室したら、あいさつとアイコンタクトから。最初の印象もホスピタリティの一部です
- プレゼンは、ゆっくり・はっきり。早口になりそうなら、1文ごとに小さく間をとる
- 質疑応答では、相手の質問を最後まで聞いてから答える
ポイント:口述試験は「10分間のミニツアー」。試験委員を旅行者だと思って、案内するつもりで臨みましょう。今日はまず、得意なテーマを1つ選んで3文の型で話してみてください。



