まず公式の出題基準を確認しよう
観光庁のガイドラインでは、外国語の筆記試験について次のように定められています(2026年9月時点で確認)。
- 目的:全国通訳案内士の業務を適切に行うために必要な読解力、日本文化等についての説明力、語彙力等の総合的な外国語の能力を問う
- 方式:多肢選択式(マークシート方式)
- 試験時間:90分
- 満点:100点、原則70点が合格基準点
さらに、出題はおおむね次の4題を基準とするとされています。
- 英語の文章の読解問題(配点40点程度)
- 英文和訳問題(20点程度)
- 和文英訳問題(20点程度)
- あるテーマや用語について英語で説明する問題(20点程度)
マークシート方式なので、自分で英文を一から書くわけではありません。けれども、選択肢の中から「最も自然で正確な英訳・説明」を選ぶには、実際に自分で訳せるくらいの力があると有利です。
ポイント:出題の半分以上が「日本のことを英語で・英語を日本語で」扱う問題。一般的な英語試験の対策だけでは足りない理由がここにあります。
読解問題:日本がテーマの英文に慣れる
読解問題は配点が最も大きいパートです。ガイドラインが「日本文化等についての説明力」を重視していることから、日本の文化・歴史・観光に関する英文に慣れておくことが大切です。
おすすめの練習
- 日本を紹介する英文を毎日1本読む:観光地の英語案内、日本文化を英語で説明した記事などを、1日1本、時間を計って読みます。
- 段落ごとに日本語で1行要約:読み終えたら、各段落の要点を日本語で1行にまとめます。これが和訳問題の練習にもなります。
- 固有名詞の英語表記をメモ:the Kamakura shogunate、Zen Buddhism、the Tokaido Road のような表記は、何度も目にするうちに覚えられます。
よくある失敗
単語の意味を一つひとつ辞書で調べて、1本読むのに1時間かかる――という読み方は、試験対策としては非効率です。まず時間を決めて最後まで読み、そのあとで知らない単語を確認する順番にしましょう。
英文和訳・和文英訳:日本語と英語の対応をストックする
英文和訳のコツ
選択肢の和訳を比べるときは、主語・時制・否定・数字が正しく訳されているかを最初にチェックします。自然な日本語かどうかより、まず意味のずれがないかを確認するのが確実です。
和文英訳のコツ
日本語をそのまま英語にしようとすると、選択肢の中の「直訳調の不自然な英文」にひっかかりやすくなります。
たとえば「神社では二礼二拍手一礼が基本です」なら、自分ならどう言うかを先に考えてみます。
- At a shrine, people usually bow twice, clap twice, and then bow once more.
このように、動作を順番に並べると自然な英語になります。自分の英訳を先に作ってから選択肢を見る練習を続けると、正解を見抜く力がつきます。
ストックの作り方
ノートの左に日本語、右に英語を書く「対訳ノート」を作りましょう。
- 参拝する → visit a shrine to pray
- 城下町 → a castle town
- 精進料理 → Buddhist vegetarian cuisine
- 世界文化遺産 → a UNESCO World Cultural Heritage site
1日5組ずつ増やして、週末に日本語だけ見て英語を言えるか想起練習をすると、定着しやすくなります。
英語で説明する問題:短く正確な定義を持っておく
4つ目の「あるテーマや用語について英語で説明する」問題は、通訳案内士ならではの出題です。マークシート方式なので、用語に対して最も適切な英語の説明を選ぶ形になりますが、自分でも1〜2文で定義できることが一番の対策です。
定義の型
「A is a ... that ...」の形で、まず大きな分類を言い、そのあと特徴を足します。
- Kaiseki is a traditional multi-course meal that reflects the seasons.
- Ukiyo-e is a style of woodblock print that was popular in the Edo period.
- Omamori is a small charm sold at shrines and temples for good luck or protection.
選択肢を見抜くコツ
間違いの選択肢は、「時代がずれている」「神社と寺が入れ替わっている」「一部の特徴だけを大げさに書いている」といったパターンが多くなりがちです。英語力だけでなく、日本の知識の正確さが問われていると考えましょう。
日本文化の定義を集めるには、原田英語の「日本文化ナビ」のように、1項目ずつ英語の説明と音声がまとまったサイトが便利です。定義文を音読して覚えておくと、口述試験の準備にもつながります。
語彙力の伸ばし方と1週間メニュー
語彙は2本立てで
- 一般的な上級語彙:英検準1級〜1級レベルの単語帳を1冊決めて、間隔反復で回す
- 日本紹介の専門語彙:寺社、祭り、食、芸能、自然、歴史の用語を対訳ノートで増やす
どちらか一方だけでは、読解と説明問題の両方に対応できません。
1週間メニュー(1日60分の例)
- 月:単語帳20分+日本紹介の英文読解40分
- 火:単語帳20分+英文和訳の練習40分
- 水:単語帳20分+和文英訳(自分で訳してから答え合わせ)40分
- 木:単語帳20分+用語の定義文を10個作る40分
- 金:単語帳20分+過去問の1大問を時間を計って解く40分
- 土:過去問1回分を90分で通して解く
- 日:1週間の対訳ノートと単語の総復習
JNTOのホームページでは筆記試験の過去問題(一部)が公開されています。形式に慣れるために、早い段階で一度解いてみましょう。
90分の時間配分を決めておく
外国語の試験は90分。4つの大問にどう時間を使うかを、あらかじめ決めておくと本番で焦りません。ここでは配点の目安をもとにした一例を紹介します。
時間配分の例
- 読解問題(40点程度):40分
- 英文和訳(20点程度):15分
- 和文英訳(20点程度):15分
- 英語での説明問題(20点程度):10分
- 見直し:10分
大切なのは、配点の大きい読解に時間を確保しつつ、1問に固執しないことです。迷った問題には印をつけて先に進み、最後に戻る習慣をつけましょう。
マークシートならではの注意
- 解答欄のずれを防ぐため、大問ごとに番号を確認する
- 見直しの時間に、マークの濃さや塗り残しもチェックする
練習で「自分の型」を作る
過去問を解くときは、毎回かかった時間を大問ごとにメモしておきましょう。3回ほど記録すると、自分がどこで時間を使いすぎているかが見えてきます。そのうえで配分を調整し、本番までに「自分の型」を固めておくと安心です。
実際の出題形式や問題数は年度によって変わる可能性があるので、直近の過去問で確認することを忘れずに。
よくある失敗と、今日からの一歩
失敗1:英語の勉強だけに時間を使いすぎる
筆記は科目ごとに合格基準点があります。英語だけ満点近くても、他の科目が基準に届かなければ不合格です。
失敗2:免除の可能性を調べていない
英検1級やTOEIC公開テストの高得点(L&R 900点以上など)で英語の免除を申請できます。TOEICは得点を得た年度か翌年度の試験にしか使えないなど条件があるので、年度の施行要領で確認しましょう。
失敗3:過去問を最後までとっておく
過去問は「実力を測る最後のテスト」ではなく、「何を勉強すべきかを知る地図」です。最初に解いて、出題の方向性をつかみましょう。
ポイント:英語の科目は「日本を英語で扱う力」を測る試験。普段の英語学習に、日本の話題を少しずつ混ぜることから始めましょう。



