なぜTOEICは言い換えが多いのか
TOEICのPart 3・4では、音声で聞こえた言葉がそのまま選択肢に入っていることは、それほど多くありません。むしろ、音声と同じ単語が入った選択肢は不正解ということもよくあります。
これは、テストが「単語を聞き取れたか」ではなく「内容を理解できたか」を確かめようとしているためだと考えられます。音をなぞるだけでは正解できないように、正解の選択肢は別の表現で書かれているのです。
たとえば、自作の会話でこんな場面を考えてみましょう。
- M: My laptop suddenly stopped working this morning.
- 設問:What problem does the man mention?
- 正解の選択肢:A device is malfunctioning.
laptop(ノートパソコン)が device(機器)に、stopped working(動かなくなった)が malfunctioning(故障している)に言い換えられています。音声の単語を探して選択肢を見ていると、この正解を見落としてしまいます。
ポイント:「音声の単語を選択肢から探す」のではなく、「音声の内容を短くまとめるとどうなるか」を考えてから選択肢を見る習慣をつけましょう。
言い換えの型1:具体から抽象へ
TOEICの言い換えで最も多いのが、具体的な言葉を、それを含むより広いグループの言葉で表す型です。
よく出る「具体→抽象」の例(自作)
- laptop / printer / phone → device, equipment(機器、設備)
- chairs / desks → furniture(家具)
- sandwiches / drinks → refreshments, food(軽食、食べ物)
- train / bus / taxi → transportation(交通機関)
- invoice / receipt / contract → document, paperwork(書類)
- flight / hotel → travel arrangements(旅行の手配)
この型に慣れるには、単語を覚えるときに「この単語はどのグループに入るか」を一緒に考えるのが効果的です。printer を覚えたら「equipment の一種」、brochure(パンフレット)を覚えたら「printed material の一種」とセットにします。
練習のしかた
身の回りのものを3つ選び、それぞれ「どんな抽象語でまとめられるか」を英語で言ってみましょう。コーヒーなら beverage(飲み物)、スーツケースなら luggage(荷物)です。この遊びのような練習が、本番の選択肢を見る目を育ててくれます。
言い換えの型2:動詞と状況の言い換え
2つ目の型は、動作や状況を、別の動詞や名詞で表す型です。
自作の例
- I'll call you back later. → The speaker will return a phone call.
- Can you send me the file by noon? → The speaker requests a document.
- The shipment hasn't arrived yet. → A delivery has been delayed.
- We're going to hire three new staff members. → The company plans to expand its workforce.
- Let's meet at the café across the street. → The speakers will get together near the office.
気づきやすくするコツ
音声を聞きながら、話し手が「何をしようとしているか」を一言でまとめる練習をしましょう。たとえば「電話をかけ直す」「書類を頼む」「配達が遅れている」というように、日本語でも短くまとめられれば十分です。
そのまとめが頭にあれば、選択肢が別の単語で書かれていても「あ、このことだ」と気づけます。反対に、音声を一字一句覚えようとすると、言い換えには気づきにくくなります。
場面別に覚えたい言い換えセット
TOEICの会話や説明文には、繰り返し登場する場面があります。場面ごとに言い換えをまとめておくと効率的です。
オフィス・会議
- postpone the meeting → reschedule an event
- The room is booked. → A space is unavailable.
- Let's go over the budget. → review some figures
お店・買い物
- It's sold out. → An item is out of stock.
- I'd like to return this jacket. → request a refund / exchange
- We're open until nine tonight. → extended business hours
旅行・出張
- My flight was canceled. → A trip has been disrupted.
- I need a place to stay near the conference center. → accommodation
これらはすべて編集部が作った例ですが、TOEICでよく見られる言い換えの考え方を反映しています。実際の問題で見つけた言い換えは、場面ごとにノートに足していきましょう。
1週間の言い換えトレーニング
月曜:言い換えノートを作る
公式問題集のPart 3を1セット解き、正解の選択肢と、音声中の対応する表現を左右に並べて書きます。
火曜:Part 4で同じ作業
説明文は会話より情報が多いので、言い換えも多く見つかります。
水曜:抽象語の書き出し
device, equipment, document, merchandise など、TOEICでよく見る抽象語を10個書き、それぞれに具体例を3つずつ挙げます。
木曜:逆方向の練習
ノートの右側(選択肢の表現)だけを見て、元の具体的な表現を思い出します。
金曜:シャドーイング
言い換えノートに載せた会話を、スクリプトを見ながら音読し、その後シャドーイングします。
土曜:新しい1セットで確認
新しい問題を解き、言い換えに気づけたかをチェックします。
日曜:休み、または見直しだけ
ノートをぱらぱら眺めるだけでも効果があります。
ポイント:1週間で30組ほど集まれば上出来です。数か月続けると、それが自分だけの「言い換え辞典」になります。
よくある失敗
失敗1:音声と同じ単語がある選択肢に飛びつく
同じ単語があると安心しますが、それが引っかけになっていることもあります。選ぶ前に「内容が合っているか」を必ず確認しましょう。
失敗2:難しい単語ばかり覚えようとする
言い換えで使われる単語は、equipment や arrange のような、比較的よく見る単語であることが多いです。珍しい単語より、よく見る単語の使い方の幅を広げる方が効果的です。
失敗3:言い換えをリスニングだけの問題と考える
リーディングのPart 7でも、本文と選択肢の言い換えは頻繁に出てきます。言い換えノートは、リスニングとリーディングの両方に効く学習です。
言い換えに強くなると、TOEICが「単語探しのゲーム」から「内容を理解するテスト」に見えてきます。今日の1セットから、ノートを始めてみましょう。



