CALLの考え方:道具より「学習の設計」
CALL(Computer-Assisted Language Learning)は、コンピュータを使った言語学習全般を指す言葉です。歴史は長く、ドリル練習から始まり、今ではオンラインでの協働学習や生成AIの活用まで幅広い実践が含まれます。
CALLで大切なのは、「どのツールを使うか」より「どんな学習を起こしたいか」を先に決めることです。
- 語彙の定着を促したい → 間隔を空けた自動採点の小テスト
- 話す量を増やしたい → 音声の録音提出
- 書いたものを読み合わせたい → フォーラムでのピアフィードバック
- 授業外に英語に触れさせたい → 動画や記事へのリンクと短い課題
Moodle、Google Classroom、Microsoft Teams、各大学独自のシステムなど、LMSの種類によってできることは少しずつ違います。まずは自分の大学のLMSで何ができるかを、学内の支援窓口やマニュアルで確かめておきましょう。
LMSのコース画面を「週単位」で整理する
学生がLMSで迷わないことは、学習を続けるための前提条件です。資料や課題が一つのページに並んでいると、学生は何をすればよいか分からなくなります。
おすすめの構成
- 最上部:シラバス、評価方法、連絡の方法、よくある質問
- 週ごとのブロック:各週に次の4つを同じ順番で置く
- 今週の目標(1〜2文)
- 授業資料
- 授業前の課題(予習)
- 授業後の課題(復習)と締め切り
毎週同じ型にすると、学生は2〜3週目から迷わなくなります。
今週の目標の書き方の例
- This week, you will be able to describe a graph using trend verbs (rise, fall, remain stable).
目標を英語で書く場合も、学生のレベルに合わせたやさしい表現にし、必要なら日本語を添えましょう。
音声提出で「話す量」を増やす
大人数の授業では、一人ひとりが話す時間を確保するのが難しいものです。LMSの課題機能や録音できるツールを使えば、授業外に全員が話す機会を作れます。
課題の例:1分間の自己紹介から研究紹介へ
- 第2週:1分で自己紹介(趣味と専攻)
- 第5週:1分で専攻分野の面白さを説明
- 第10週:2分で自分が興味を持っている研究テーマを紹介
評価の工夫
すべての音声を細かく採点すると、教師の負担が大きくなります。次のように工夫しましょう。
- 提出したかどうかを基本の評価にする
- 学期に2回だけ、簡単なルーブリックで詳しくフィードバックする
- 全体に共通する課題(例:語尾の子音が落ちる、文の区切りが分かりにくい)を授業でまとめて扱う
学生は自分の録音を聞き直すことで、話し方の癖に気づくことができます。提出前に一度聞き直してから出すことをルールにするのもおすすめです。
自動採点の小テストを「間隔反復」に使う
LMSの小テスト機能は、語彙や文法の定着に役立ちます。ポイントは、一度解いたら終わりにしないことです。
作り方の手順
- 毎週の新出語から10問を作る(意味の選択、つづり、コロケーションの選択など)
- 問題を「問題バンク」に登録し、週ごとにカテゴリーを分ける
- 小テストは「今週の問題7問+過去の問題3問」をランダムに出題する設定にする
- 何度でも受験できるようにし、最高点を記録する
こうすると、学生は毎週、前の週の内容にも自然と触れることになります。
問題の例
- 次の空所に入る動詞を選びなさい。 The study ___ a significant difference between the two groups.(found / made / did)
- conduct の意味として最も適切なものを選びなさい。
自動採点に任せられる部分は任せ、教師の時間は発話や作文へのフィードバックに回すのがLMS活用の基本的な考え方です。
1週間の運用サイクルの例
LMSを使った英語授業の、1週間の運用例です(週1回、90分の授業を想定)。
- 授業の3日前:翌週の資料と予習課題を公開する(公開日時を予約設定しておくと楽です)
- 授業の前日:予習課題の締め切り。提出状況をLMSで確認し、未提出者の傾向を把握する
- 授業当日:予習課題で多かった誤りを冒頭5分で共有。授業後に復習課題を公開
- 授業の2日後:フォーラムで学生同士のコメントを促すリマインダーを送る
- 授業の5日後:復習課題の締め切り。自動採点の結果を確認し、翌週に扱う点をメモする
時短のコツ
- よく使うお知らせ文や課題の説明文はテンプレートにしておく
- 前年度のコースをコピーして、日付だけ直す
- 締め切り時刻は毎週同じにする(例:毎週金曜23:59)
運用の型が決まると、授業準備の時間が毎週少しずつ減っていくのを実感できるはずです。
アクセシビリティと公平性への配慮
LMSを使った授業では、すべての学生が同じ条件で学べるかにも気を配る必要があります。
確認しておきたいポイント
- 端末と通信環境:スマホだけで課題に取り組む学生もいます。長い文章の入力や大きなファイルのアップロードが必要な課題は、スマホでも可能か確かめましょう
- 資料の形式:画像だけのPDFは、読み上げソフトで読めないことがあります。可能な範囲でテキストを含む形式にします
- 動画と音声:字幕や文字資料を併せて用意できると、聴覚に困難のある学生や、静かな場所で視聴できない学生にも役立ちます
- 締め切りの柔軟性:通信トラブルや体調不良に備え、提出の猶予や代替手段の方針を決めておきます
配慮が必要な学生への対応は、所属大学の障害学生支援の窓口と連携することが基本です。教員が一人で判断せず、学内の仕組みを使うことを意識しましょう。
こうした配慮は、特定の学生のためだけでなく、すべての学生にとって使いやすい授業につながります。
よくある失敗と、その立て直し方
1. 課題を増やしすぎる
LMSでは課題を簡単に追加できるため、気づくと学生の負担が大きくなっていることがあります。1週間の課題は合計で何分かかるかを計算し、単位に見合った量か確認しましょう。
2. ピアフィードバックが「Good!」だけになる
学生同士のコメントが形だけになるのはよくあることです。次のようなコメントの型を示しましょう。
- One thing I liked: ...
- One question I have: ...
- One suggestion: ...
3. 締め切りの管理が教師任せ
リマインダーや未提出者への連絡を毎回手作業で行うと続きません。LMSの自動通知機能を確認し、使えるものは使いましょう。
4. システムの不具合で課題が出せない
提出方法が一つしかないと、トラブルのときに困ります。代わりの提出方法(メール添付など)をあらかじめシラバスに書いておくと安心です。
まずは次の授業のコースページを、週ごとに同じ型で整理し直すところから始めてみてください。



