作問の出発点:授業とテストをそろえる
定期テストは、授業で目指した力が身についたかを確かめるものです。そのため、作問の前に次の問いを自分に投げかけてみましょう。
- この範囲の授業で、生徒は何ができるようになることを目指したか?
- その力は、どんな問題なら確かめられるか?
たとえば、授業で「初めて読む英文の概要をつかむ力」を育てたなら、テストでも初見の英文を出す必要があります。授業で「自分の考えを書く練習」をしたなら、テストにも自由英作文を入れるべきです。
逆に、授業でほとんど扱わなかった形式をテストで出すと、生徒は戸惑い、授業の意味も伝わりにくくなります。
ポイント:「授業でやったことがテストに出る」は、「本文がそのまま出る」という意味ではありません。「授業で練習した力を使う問題が出る」という意味です。
テスト全体の設計図をつくる
作問を始める前に、全体の設計図(どの力を何点分測るか)をつくります。
中学2年・50分・100点の配分例
- リスニング:20点(概要把握・詳細把握)
- 語彙・文法:20点(場面の中で使う問題中心)
- 本文の理解:15点(教科書本文、ただし問い方を工夫)
- 初見の読解:20点(授業で扱っていない英文)
- ライティング:25点(条件つき英作文・自由英作文)
「話すこと」は筆記テストでは直接測りにくいため、授業中のやり取りや、別に実施する評価課題で見取ることが多いです。筆記テストの中では、会話の流れに合う応答を選ぶ・書く問題などで、やり取りに関わる力の一部を確かめる方法があります。
設計図を作っておくと、特定の技能に偏ることを防げ、同僚と作問を分担するときにも役立ちます。
読む力を測る問題の作り方
教科書本文は「問い方」を変える
本文をそのまま出して和訳させるのではなく、授業と違う角度から問いましょう。
- 本文の内容を別の人物の視点で書き直した英文を読ませ、内容の正誤を判断させる
- 本文の要約文の空所を補充させる
- "Why did Mika say 'I love the drums now'? Answer in English." のように理由を問う
初見の英文を用意する
授業で扱った文法・語彙を使った、自作の短い英文を出します。
自作例(中学2年・比較を扱った範囲)
Ken and Taro are brothers. Ken is older than Taro, but Taro is taller. Ken likes reading books, and Taro likes playing basketball. Last Sunday, they went to a bookstore together. Ken bought a thick book about history. Taro bought a magazine about sports. On the way home, Taro said, "Your book is heavier than my magazine. Let me carry it."
問いの例
- Who is taller, Ken or Taro?
- What did Ken buy at the bookstore?
- Why did Taro want to carry Ken's book?
初見の英文は、既習の語彙で書くか、未習語に注をつけるのが基本です。
聞く力と書く力を測る問題
リスニング問題
授業で扱った聞き方(概要・詳細)に合わせて問題を作ります。
- 概要:"What are they talking about?"(3択)
- 詳細:"What time will they meet?"(時刻を書く)
- 応答:会話の最後の発言に対する自然な応答を選ぶ
音声は、ALTや同僚に協力してもらって録音するか、教師が読み上げます。読み上げる場合は、速さや繰り返しの回数をクラス間でそろえることが大切です。
ライティング問題
条件つき英作文:条件を明確にすると、採点の基準もはっきりします。
"Write about your favorite season. Write 3 sentences or more. Use a comparative (for example, 'warmer than')."
自由英作文(高校向け):
"Do you think high school students should have part-time jobs? Write your opinion and two reasons in about 60 words."
採点基準の例(条件つき英作文・5点)
- 条件(文数・指定文法)を満たしている:2点
- 内容が伝わる:2点
- 大きな誤りがない:1点
採点基準は作問と同時に作り、可能なら事前に生徒にも示しておきます。
作問から実施までのスケジュール
定期テストの作問は、直前にまとめて行うと質が下がりやすく、ミスも増えます。余裕を持ったスケジュールを立てましょう。
3週間前
- 範囲と設計図(技能ごとの配点)を決める
- 同僚と作問の分担を決める
2週間前
- 各自が担当部分を作問する
- 初見の英文やリスニング原稿を作成し、既習語彙で書けているか確認する
1週間前
- 同僚と問題を交換して実際に解き、時間・難易度・誤植を確認する
- 採点基準と模範解答を完成させる
- リスニング音声を録音する(または読み上げ条件を決める)
実施後
- 問題ごとの正答率を出し、正答率が極端に低い問題の原因を分析する
- 次の授業で扱う内容を決める
特に大切なのは「同僚に解いてもらう」段階です。作った本人は答えが分かっているため、問いの曖昧さや選択肢の不備に気づきにくいものです。"Is this question clear?" と一言添えて、別の目で見てもらいましょう。ALTに英文の自然さを確認してもらうのも効果的です。
40人×複数クラスの採点を楽にする工夫
解答用紙を工夫する
- 選択問題の解答欄を1か所にまとめる
- 記述問題の解答欄に、採点基準の観点ごとのチェック欄を印刷しておく
採点は「問題ごと」に行う
1人ずつ全問を採点するより、全員分の第1問、次に全員分の第2問、と問題ごとに採点すると、基準がぶれにくく速くなります。
英作文の採点は基準を先に試す
最初に5〜6枚を採点して基準を確認し、迷った答案は付箋を貼って後でまとめて判断します。同僚と分担する場合は、同じ答案を数枚採点して基準をすり合わせておきましょう。
返却時に振り返りの時間を取る
返却の授業では、間違えた問題を自分で直し、間違いの理由を書かせます。テストは返して終わりではなく、次の学習につなげる機会です。
よくある失敗
- 本文の丸暗記で解ける問題ばかり:読む力を測れません。→初見の英文や問い方の工夫を入れる。
- 授業で扱っていない形式を出す:生徒が形式に戸惑い、実力が測れません。→授業中に同じ形式の練習を必ず入れておく。
- 問題量が多すぎる:時間内に終わらず、最後の問題が測れなくなります。→作問後に自分で解いて、時間の目安を確認する(教師が解く時間の2〜3倍が生徒の目安)。
- 採点基準を後から決める:クラス間で基準がぶれます。→作問と同時に基準を作る。
ポイント:定期テストは、生徒への「この力を大事にしてほしい」というメッセージでもあります。何を出すかで、生徒の勉強の仕方が変わります。
次の定期テストでは、まず初見の英文を1題入れることから始めてみてください。



