入試対策と授業は対立しない
入試対策というと、問題集を解いて解説する授業をイメージしがちです。しかし、入試の英語で求められる力を分解してみると、日々の授業で育てている力と重なる部分が多いことに気づきます。
- 速く正確に読む力:本文の概要把握、段落構成の理解
- 聞いて要点をつかむ力:リスニングの前・中・後活動
- 自分の考えを書く力:条件つき英作文、意見文
- 語彙・文法の知識:本文の中で出会い、使う経験
違いがあるとすれば、入試には時間制限と独特の形式があることです。つまり、授業で育てた力を、入試の形式と時間の中で発揮できるようにする「橋渡し」が必要なのです。
ポイント:入試対策を「別の授業」にするのではなく、「いつもの授業に入試の視点を少し足す」と考えると、両立しやすくなります。
教科書を入試につなげる3つの工夫
1. 本文を入試形式で問う
教科書本文を読んだあと、入試でよく見られる形式の問いを1〜2問加えます。
- 内容一致問題:"Choose the sentence that matches the story."
- 段落の要旨:"Which is the best title for paragraph 2?"
- 指示語の内容:"What does 'it' in line 5 refer to?"
2. 本文のテーマで英作文を書く
本文のテーマに関連した自由英作文を、入試と同じ条件(語数・時間)で書かせます。
"Write your opinion about this topic in about 50 words. You have 10 minutes."
3. 時間を意識した読み
本文の2回目の読みで、時間を計らせます。
"Read Part 2 again. Time yourself. Write down how many minutes it took."
1分あたりに読めた語数を記録させると、生徒は読む速さの伸びを実感できます。
これらの工夫は、授業の数分を使うだけで取り入れられます。教科書の内容理解と入試の形式を行き来することで、生徒は「授業で学んでいることが入試にもつながる」と実感できます。
授業例:本文+入試形式の50分
高校2年を想定した、教科書本文を扱う授業に入試の視点を加えた例です。
- 0〜5分 導入:本時のゴール提示("Today, you will read Part 3 and write your opinion in 50 words.")
- 5〜15分 1回目の読み:時間を計って黙読し、各段落の要点を一言でメモ
- 15〜25分 内容理解:発問と、入試形式の問い(内容一致・指示語)をペアで解く
- 25〜32分 解き方の共有:答えの根拠を本文のどこから見つけたか、ペアで説明し合う
- 32〜45分 英作文:本文のテーマで50語程度の意見文を10分で書く→ペアで読み合う
- 45〜50分 振り返り
"Show your partner where you found the answer. Explain why the other choices are wrong."
選択肢の「なぜ違うか」を説明させると、入試の読解問題への対応力が大きく伸びます。これは内容理解を深める活動としても効果的です。
英作文と語彙を入試につなげる具体例
本文の表現を「入試で使える表現」として整理する
教科書本文には、意見文や説明文でそのまま使える表現が多く含まれています。単元ごとに生徒と一緒に「使える表現リスト」を作ると、英作文の引き出しが増えていきます。
- It is important for us to …
- One reason is that …
- For example, …
- On the other hand, …
- In conclusion, …
"Find two expressions in today's text that you can use in your own essay. Add them to your list."
自由英作文の型を授業で固める
入試の自由英作文では、限られた時間で構成を考える必要があります。授業の中で、次のような型を繰り返し使わせておくと、本番でも迷いにくくなります。
- 主張(I think … / I agree that …)
- 理由1+具体例
- 理由2+具体例
- 結論(For these reasons, …)
自作の課題例
"Some people say that students should study in the morning, not at night. Do you agree? Write about 60 words."
書いたあとは、ペアで「主張・理由・例・結論がそろっているか」をチェックし合います。構成の確認は生徒同士でもできるので、教師は語法や内容の深さに集中して見ることができます。
語彙は本文の中で増やす
単語帳での学習に加えて、本文で出会った語を英作文で使うことで、語彙は「知っている」から「使える」に変わります。
年間の配分をどう考えるか
入試対策の比重は、学年や時期によって変えていきます。
中学の例
- 1・2年:教科書中心。入試形式の問いは、定期テストや単元末に時々入れる程度
- 3年1学期:教科書中心+単元末に入試形式の読解を1題
- 3年2学期以降:教科書の進度を調整しながら、入試形式の演習の時間を少しずつ増やす
高校の例
- 1年:教科書で読む・聞く・書くの基礎。時間を計る読みを習慣化
- 2年:本文と入試形式の問いを組み合わせる。英作文を定期的に
- 3年:演習中心の時期でも、教科書や演習の英文を使った要約・意見の活動を残す
演習の授業でも「活動」を残す
演習の時期でも、解いて答え合わせをするだけでなく、根拠を説明し合う、要約を話す、テーマについて意見を書くなどの活動を残すと、生徒の力は伸び続けます。
40人クラスでの演習の回し方
大人数での演習は、解説が一方的になりがちです。
- 答え合わせはペアから:解き終わったら、まずペアで答えを比べ、違う問題だけ根拠を話し合います。全体での解説は、多くのペアで意見が分かれた問題に絞ります。
- 答えを一斉に示す:選択問題の答えを指で示させると、40人の理解度が一目で分かります。
- 解説は生徒に担当させる:問題ごとに担当グループを決め、根拠と解き方を説明させます。
- 進度の差に対応する:早く終わった生徒には、発展問題や英作文の追加課題を用意しておきます。
"If you finish early, try the challenge question on the back."
よくある失敗
- 演習だけの授業が続く:生徒が受け身になり、集中が続きません。→根拠を説明させる活動を入れる。
- 教科書を急いで終わらせる:本文の理解が浅くなり、読む力の土台が弱くなります。→教科書で深く読む経験を大切にする。
- 入試の話ばかりする:英語を学ぶ楽しさが伝わりにくくなります。→英語を使う活動の楽しさも残す。
明日からの一歩
まずは次の教科書本文の授業で、入試形式の問いを1問だけ加えてみてください。内容一致問題でも、指示語の問題でもかまいません。
そして、答え合わせのときに「なぜその答えなのか」「なぜ他の選択肢は違うのか」をペアで説明させましょう。この小さな活動を積み重ねることが、入試にも、その先の英語の力にもつながります。
入試は一つの通過点です。教科書で育てた「読む・聞く・書く・話す」力が、入試の場面でも発揮できるように、日々の授業に少しずつ橋を架けていきましょう。



