発音指導は「全部」より「優先順位」
英語の音をすべて完璧にしようとすると、授業時間がいくらあっても足りません。大切なのは、通じやすさに大きく関わる部分から優先して指導することです。
中学生のうちに押さえておきたいポイントは、次の4つに整理できます。
- 日本語にない子音:th, f / v, r / l
- 母音を足さない:desk を「デスク」と語尾に母音をつけない
- 単語の強勢(アクセント):どこを強く長く言うか
- 文のリズム:内容語を強く、機能語を弱く
特に3と4は見落とされがちですが、個々の音が多少ずれていても、強勢とリズムが合っていると意外なほど通じやすくなります。
ポイント:「正しい音」を目指すより「通じる音」を目指す。優先順位を生徒と共有すると、練習に迷いがなくなります。
① 日本語にない子音の教え方
子音は、口の形を目で見せるのが一番の近道です。
th(think, this)
舌先を上の歯に軽く当て、そのすき間から息を出します。
- "Put your tongue between your teeth. Like this. Now blow air. th, th, th."
- 対比練習:sink / think, sick / thick
f / v(five, very)
上の歯を下唇に軽く当てます。f は息だけ、v は声を出します。
- "Bite your bottom lip gently. Now, fff... Now add your voice. vvv..."
- 対比練習:base / vase, best / vest
r / l(right, light)
l は舌先を上の歯の裏に当てる。r は舌先をどこにもつけず、少し奥に引く。
- "For 'l,' touch here with your tongue. For 'r,' don't touch anything."
- 対比練習:rice / lice, road / load, right / light
対比練習は、教師がどちらかを言い、生徒が「1か2か」を指で示すゲームにすると、聞き分けと発音の両方を練習できます。
"Listen. Number one is 'rice,' number two is 'lice.' Which one did I say? Show me with your fingers."
② 母音を足さない・③ 単語の強勢
母音を足さない
日本語は基本的に子音の後に母音がつくため、英語の子音で終わる語にも母音を足してしまいがちです。
- desk →「デスク」ではなく、最後の k は息だけ
- milk →「ミルク」ではなく、l で舌を止めて k は小さく
練習のコツは、手拍子の数で意識させることです。"How many claps? desk. One clap!" と、音節の数だけ手をたたかせると、「デ・ス・ク」の3拍ではなく1拍だと体で理解できます。
単語の強勢
強勢の位置が違うと、単語自体が聞き取ってもらえないことがあります。新出語を扱うときに、強勢の位置を必ず確認する習慣をつけましょう。
- baNAna, comPUter, JaPAN, JapaNESE
- "Which part is strong? Clap on the strong part."
板書やフラッシュカードで、強勢のある音節に●、それ以外に・を振ると、視覚的にも分かりやすくなります。
例:computer → ・●・
④ 文のリズムを体で覚える
英語の文は、意味を担う語(名詞・動詞・形容詞・副詞など)が強く、文法的な語(冠詞・前置詞・代名詞など)が弱く短く発音される傾向があります。
リズム練習の例(自作)
- CATS EAT FISH.
- The CATS EAT FISH.
- The CATS will EAT the FISH.
- The CATS will have EATen the FISH.
語数が増えても、手拍子の数(強い語の数)は同じ3回です。弱い語を速く軽く言わないと、リズムに乗れません。
"Clap three times. Keep the same speed. Say the sentence with the claps."
このような練習は、音楽の授業のように楽しめるので、授業の区切りで気分を変えたいときにも役立ちます。教科書の本文から「強く言う語」に下線を引かせるだけでも、リズムへの意識は大きく変わります。
つながる音・消える音にも触れておく
中学3年ごろになると、教科書の音声も自然な速さに近づき、「単語は知っているのに聞き取れない」という声が増えてきます。その原因の多くは、単語と単語がつながったり、音が弱くなったりすることにあります。
よく出るパターン(自作例)
- つながる音:Check it out.(チェッキダウ のように聞こえる)/ an apple / pick it up
- 弱くなる音:I want to go.(to が短く弱い)/ a cup of tea(of がほとんど聞こえない)
- 似た音が重なる:good day / big game(前の音が飲み込まれる)
これらは「正しく発音させる」ことより、聞いて気づかせることを主な目的にすると扱いやすいです。
"Listen to the CD. How many words do you hear? Count them with your fingers."
語数を数えさせると、弱く短く発音された語に気づけます。そのあと、生徒自身にも同じように言わせてみると、リスニングと発音の両方に効果があります。
ただし、つながる音を中学1年から細かく教える必要はありません。まずは子音・母音・強勢・リズムの土台をつくり、その上に少しずつ積み上げるイメージで取り入れましょう。
授業に組み込む5分間メニュー
発音指導は、毎時間少しずつ繰り返すのが効果的です。授業の中の5分を、次のようなメニューで回してみてください。
5分メニュー例(曜日ごとにテーマを変える)
- 0:00〜1:00:今日の音の口の形を教師が見せる
- 1:00〜2:30:対比ペアで「1か2か」ゲーム
- 2:30〜4:00:その音を含む短文をリピート(例:"I think three thin thieves are there.")
- 4:00〜5:00:ペアで1人ずつ言い、相手が「OK / One more」で判定
1週間のテーマ例
- 月:th
- 火:f / v
- 水:r / l
- 木:母音を足さない(手拍子)
- 金:文のリズム(本文の強く言う語に下線)
"Tell your partner 'OK' or 'One more.' Be kind!"
ペアでの判定は、完璧さより「気をつけているか」を見るように伝えると、からかいや萎縮を防げます。
40人クラスでの工夫とよくある失敗
40人クラスでの工夫
- 鏡の代わりにペアの目:口の形を隣の人に見てもらう。"Watch your partner's mouth. Is the tongue out for 'th'?"
- 列ごとのリレー:列の前から順に単語を1つずつ言い、最後の人まで回す。教師は歩きながら気になる生徒に一言だけアドバイス。
- 全員で言う→少人数で言う→1人で言う:いきなり1人で言わせず、段階を踏むと恥ずかしさが減ります。
よくある失敗
- 1人を全員の前で何度も直す:本人は恥ずかしく、周りも気まずくなります。→全体に向けて「みんなで確認しよう」と言い、クラス全体で練習する。
- カタカナのふりがなを許してしまう:カタカナは日本語の音に引っ張られます。→強勢記号や口の形のイラストで代用する。
- 発音練習を単元の最初だけで終える:継続しないと定着しません。→5分メニューで毎時間少しずつ。
ポイント:発音は「恥ずかしさ」との戦いでもあります。教師が大げさに口を動かして見せると、生徒も安心してまねできます。



