小学校で目指す「読む・書く」とは
文部科学省の小学校学習指導要領解説では、外国語科の「読むこと」「書くこと」について、主に次のようなことが示されています。
読むこと
- 活字体で書かれた文字を識別し、その読み方(文字の名称)を発音できる
- 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味がわかる
書くこと
- 大文字・小文字を活字体で書くことができる
- 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写す
- 自分のことや身近で簡単な事柄について、例文を参考に書く
大切なのは、「音声で十分に慣れ親しんだ」という言葉です。小学校の読む・書くは、聞いたり話したりした経験のある英語を、文字でも扱うという段階です。
ポイント:「聞いたことがない単語を読ませる」「見本なしで自由に書かせる」は、小学校の到達点を超えています。
文字指導の5つの段階
小学校での文字指導は、次の順番で進めると無理がありません。
- 文字の名前を聞いて指さす:先生が「エム」と言ったら、子どもがMのカードを指さします。
- 文字の名前を言う:カードを見て、文字の名前を言います。
- 文字を書く:四線の上に大文字・小文字を書きます。
- 単語を書き写す:音声で慣れた単語(dog, apple など)を書き写します。
- 文を書き写す・例文を参考に書く:I like dogs. を書き写し、dogs の部分を自分の好きなものに変えて書きます。
一度にすべてをやるのではなく、2年間をかけて少しずつ段階を上がっていきます。
「読む」の入り口:音声で慣れた語を見て、わかる
小学校の「読む」は、文章を読み解くことではありません。音声で十分に慣れた語句や表現を見て、「あ、これはあの単語だ」とわかる経験を積むことです。
活動例1:絵と単語のマッチング
単元で何度も聞いた単語(apple, banana, grapes など)の絵カードと文字カードを用意し、組み合わせます。最初の文字をヒントにすると、子どもは推測しながら読むことができます。
活動例2:メニュー読み
レストランのメニューのような紙を作り、単元で学んだ食べ物の名前を英語で書いておきます。
- T: What would you like?
- S: (メニューを見て) I'd like pizza.
文字を「読まなければならない」状況ではなく、「読むと便利」な状況をつくるのがコツです。
活動例3:掲示物を読む
教室に、曜日や天気、月の名前などを英語で掲示しておき、毎日の授業のあいさつで使います。毎日目にしている語は、自然と「見ればわかる」語になっていきます。
ポイント:読む活動では「読めた」かどうかより、「推測しようとした」ことをほめましょう。
四線の使い方と書き方のポイント
英語の文字は、四本の線(四線)の上に書きます。四線の使い方をていねいに教えることが、きれいな文字への第一歩です。
四線の3つのゾーン
- 上のゾーン:大文字の上半分、b, d, h などの縦線が入る
- 真ん中のゾーン:a, c, e など小文字の多くが入る
- 下のゾーン:g, j, p, q, y の下の部分が入る
指導のポイント
- 最初に、四線を「2階建ての家と地下室」などにたとえて説明する
- 大文字は上の線から3本目の線(基線)までに書く
- 小文字は、どのゾーンを使うかでグループ分けして練習する
- 真ん中だけ:a, c, e, m, n, o, r, s, u, v, w, x, z
- 上にのびる:b, d, f, h, k, l, t
- 下にのびる:g, j, p, q, y
- i と j は点がつく
ポイント:「形が似ている文字」ごとに練習すると、子どもは違いに気づきやすくなります。
書き写しから「例文を参考に書く」へ
単語や文の書き写しは、ただ写すだけにならないように工夫しましょう。
ステップ1:意味のある書き写し
自分の好きなものを選んで書き写します。
- 見本:I like 〔 〕.
- 絵カードから自分の好きなものを選び、その単語を書き写して文を完成させる
ステップ2:語順を意識する
文の単語カードを並べかえてから書き写します。
- カード:like / I / soccer / .
- 並べかえ:I like soccer.
ステップ3:例文を参考に自分のことを書く
- 例文:My name is Hana. I like cats. I can swim.
- 自分の文:My name is Taro. I like dogs. I can play the piano.
書いた文は、ペアで読み合ったり、掲示したりして、「伝える」目的をもたせると、子どもの意欲が高まります。
1週間の帯活動メニュー(6年生・週2回)
毎回の授業の最後に5〜8分、読む・書く活動を入れる例です。
- 1回目:単元の単語を絵カードで確認→音声を聞いて、単語を指さす→2語を書き写す
- 2回目:単元の表現(I want to go to Italy.)を音声で聞く→文の単語カードを並べかえる→書き写す
学期の後半には、例文を参考に自分のことを書く活動(3文程度)につなげます。
活動のコツ
- 書く前に必ず「聞く・言う」をする
- 1回に書く量は少なく(単語2〜3語、または1文)
- 書いた後は、必ず声に出して読む
家庭でできる「読む・書く」のサポート(保護者向け)
5・6年生になると、英語の宿題やノートを家に持ち帰ることもあります。家庭では、次のようなサポートがおすすめです。
- 書いた英語を読んでもらう:「何て書いたの?読んでみて」と声をかけ、子どもが自分で読む機会をつくります。
- 身の回りの英語を探す:お菓子のパッケージや看板の英語で、知っている単語を探すゲームをします。
- 名前をアルファベットで書く:家族の名前をアルファベットで書いてみるのも、楽しい練習になります。
注意したいのは、「つづりを全部覚えなさい」と求めすぎないことです。小学校では、見本を見てていねいに書き写せることが大切にされています。字の形がきれいに書けたら、そこをしっかりほめてあげましょう。
また、家で英語を書く練習をするなら、学校で使っているものと同じような四線のノートを使うと、授業とのつながりが保てます。1日1文、学校で習った文を書き写して、書き終わったら声に出して読む。これを週に数回続けるだけでも、文字への抵抗感は大きく減っていきます。
よくあるつまずきと今日からの一歩
- b と d、p と q を混同する:形が似ているので、混同するのは自然です。体を使った覚え方や、書き順の違いを強調しましょう。
- 単語の間をあけない:単語と単語の間に「指1本分」あける、と具体的に教えます。
- 大文字と小文字が混ざる:文の最初と I は大文字、ほかは小文字、とルールを1つずつ確認します。
- 読めない単語を書き写している:意味と音がわからない単語は、書き写しても定着しません。必ず音声で慣れた単語を使いましょう。
まずは次の授業で、書く活動の前に「聞く→言う」の時間を1分とり、そのあとで1文だけ書き写す、という流れを試してみてください。



