小学校と中学校の英語、何が変わるのか
文部科学省の学習指導要領では、小学校高学年の外国語科と中学校の外国語科は、「聞くこと」「読むこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」「書くこと」という同じ5つの領域で目標が示されています。
つまり、目指す方向は同じです。ただし、中学校に入ると、次のような変化が起こることが多いと言われています。
- 文字を読む・書く量が増える:小学校では書き写しや例文を参考に書く段階ですが、中学校では自分で文を書く機会が増えます。
- 文法の説明を受ける:小学校では表現として慣れ親しんだものを、中学校では文のしくみとして整理します。
- 定期テストがある:筆記中心のテストを本格的に経験するのは、中学校からという子どもが多いと考えられます。
ポイント:小学校の役割は「中学校の先取り」ではなく、「中学校で整理される英語の経験を、音声でたっぷり積んでおくこと」です。
6年生の後半にできる5つの工夫
① 慣れ親しんだ表現を「見える化」する
3年生からの4年間で触れた表現を、単元ごとに一覧にして掲示します。子どもは「こんなにたくさんの英語を使ってきた」と自信をもてます。
② 語順に気づかせる
日本語と英語の語順の違いに、気づかせる活動を入れます。
- 日本語:わたしは サッカーが 好きです。
- 英語:I like soccer.
「英語は『だれが』『どうする』が先に来るね」と気づかせるだけで、中学校の文法学習の土台になります。
③ 書き写しの質を上げる
単語と単語の間をあける、文の最初は大文字、文の終わりにピリオド、といった基本を、6年生のうちにていねいに確認します。
④ 自分のことを書く経験を増やす
例文を参考に、自分のことを3〜4文で書く活動を、単元の終わりに入れます。
- My name is Sora. I like music. I can play the guitar. I want to join the brass band in junior high school.
⑤ 中学校の生活を話題にする
Small Talk で What club do you want to join? などの話題を扱い、中学校への期待を高めます。
中学校の文法につながる「気づき」の例
小学校で慣れ親しんだ表現の多くは、中学校で文法として整理されます。小学校では文法用語を使わずに、「気づき」を大切にしましょう。
例1:I と you
- I like dogs. / Do you like dogs?
- 「質問するときは、最初に Do がつくね」
例2:過去のこと
- I went to the sea. I enjoyed swimming.
- 「昔のことを言うときは、go が went に変わっているね」
例3:できること
- I can swim. / Can you swim?
- 「can を前に出すと、質問になるね」
こうした気づきは、先生が説明するより、子どもが自分で「あれ?」と気づくほうが記憶に残ります。ただし、小学校では文法のルールを教え込む必要はありません。あくまで「気づいたらほめる」程度にとどめましょう。
ポイント:中学校で「あ、これ小学校でやった!」と思える経験をたくさん残すことが、小学校のいちばんの役割です。
中学校との情報共有のしかた
小中の接続をスムーズにするには、先生同士の情報共有が欠かせません。
小学校から中学校に伝えたいこと
- 使っている教科書と、6年生の最後の単元
- 子どもが慣れ親しんでいる歌やチャンツ、活動
- Small Talk やパフォーマンス評価の経験
- 英語に苦手意識をもっている子どもの様子(個人情報の扱いに注意)
中学校から聞いておきたいこと
- 中学1年生の最初の授業で扱う内容
- 入学後につまずきやすいポイント
交流の方法
- 小中の授業を相互に見学する
- 中学校の先生に、6年生の授業にゲストとして来てもらう
- 中学1年生から6年生へ、英語のビデオメッセージを送ってもらう
例えば、中学1年生が英語で自己紹介するビデオを6年生に見せると、「来年はこんなふうに話せるんだ」という目標になります。
保護者への伝え方
6年生の保護者は、中学校の英語に不安を感じていることが多いものです。学級通信や懇談会で、次のように伝えると安心してもらえます。
- 小学校では、聞くこと・話すことを中心に、たくさんの英語に触れてきたこと
- 中学校では、その英語を文字や文法として整理していくこと
- 春休みには、アルファベットの大文字・小文字を正しく書けるか確認しておくとよいこと
春休みにおすすめの家庭での活動
- アルファベットの大文字・小文字を、四線に書いてみる
- 小学校で使った英語の教科書を、音声を聞きながら読み返す
- 自分の名前や好きなものを、英語で書いてみる
「先取りの勉強」ではなく、「小学校の英語の復習」を中心にすると、子どもも無理なく取り組めます。
6年生3学期の授業メニュー例
6年生の3学期は、小学校の英語のまとめであり、中学校への橋渡しの時期です。単元の学習に加えて、次のような活動を帯で取り入れると、接続を意識した授業になります。
帯活動の例(毎回5〜10分)
- これまでの歌・チャンツのメドレー:3年生からの歌を振り返り、「こんなに歌えるようになった」と実感する
- Small Talk「中学校でやりたいこと」:What club do you want to join? / I want to join the tennis team.
- 書き写し+自分の文:I want to 〜 in junior high school. を書き写し、〜の部分を自分で書く
- 語順カード並べ:単語カードを並べて、英語の語順で文を作る
まとめの活動の例
- 「中学生になった自分へ」の英語メッセージカード:My name is 〜. I like 〜. I want to 〜. などを例文を参考に書き、卒業前に読み合う
このメッセージカードを中学校の先生に見てもらうと、入学してくる子どもたちの英語の様子を知る手がかりにもなります(扱いについては学校間でよく相談しましょう)。
ポイント:3学期は「新しいことを増やす」より「できるようになったことを確かめる」時期。自信をもって中学校に送り出しましょう。
よくある失敗と今日からの一歩
- 中学校の文法を先取りして教える:小学校の段階では、文法を説明するより、表現に慣れ親しむことを大切にしましょう。
- 「中学校は大変だよ」とおどかす:不安をあおるより、「小学校でこんなにできるようになったよ」と自信をもたせることが大切です。
- 文字の基本の確認が不十分:大文字と小文字、単語の間のスペースなど、基本的な書き方は6年生のうちに確認しておきましょう。
- 小中の先生が互いの授業を知らない:1回の授業見学でも、得られる情報は大きいものです。
まずは、6年生のこれまでの教科書を見返し、子どもが慣れ親しんだ表現を一覧にするところから始めてみましょう。その一覧は、子どもの自信にも、中学校への引き継ぎ資料にもなります。



