多義語でつまずく理由
多義語でつまずく人の多くは、単語帳の最初に書かれた意味だけを覚えています。run=走る、book=本、fine=元気な。この「1語1訳」の覚え方は最初の一歩としては便利ですが、長文や入試問題ではすぐに限界が来ます。
- She booked a table for four.(4人分の席を予約した)
- You have to pay a fine.(罰金を払わなければならない)
- Please write your address here.(ここに住所を書いてください)
- He addressed the problem quickly.(彼はその問題にすばやく対処した)
どれも中学で習う単語なのに、1語1訳では意味が取れません。しかも入試や資格試験は、こうした「知っているつもりの単語の別の意味」をよく問います。
かといって、辞書に並ぶ意味を上から全部暗記するのは大変です。そこで役に立つのが、意味の中心にあるコアイメージをつかみ、そこから意味を広げていく方法です。
ポイント:多義語は「別々の意味の寄せ集め」ではなく、「1本の木から伸びた枝」と考えると整理しやすくなります。
コアイメージで考えるとは
コアイメージとは、その単語のいろいろな意味に共通する「絵」のようなものです。run で考えてみましょう。
run のコアイメージ:止まらずに、ある方向へ連続して動く
この絵から意味を広げると、次のようにつながります。
- 人が止まらず動く → 走る(run in the park)
- 液体が止まらず流れる → 流れる(The river runs through the town.)
- 機械が止まらず動く → 作動する(The engine is running.)
- 組織を止まらず動かす → 経営する(She runs a small cafe.)
- バスが決まったルートを動く → 運行する(The bus runs every ten minutes.)
- 状態が続く → 続く(The show ran for three years.)
ばらばらに見えた意味が、「止まらずに流れるように動く」という1枚の絵でつながりました。こうして整理すると、初めて見る使い方でも「流れるように動いている感じかな」と推測できるようになります。
注意点
コアイメージは辞書に正式に書かれている定義ではなく、理解を助けるための考え方です。人や本によって表現が少し違うこともあります。自分が納得できる言葉で1枚の絵を作ることが大切です。
take と get を絵で整理する
基本動詞の中でも特に意味が多い take と get を整理してみましょう。
take:自分のところへ取り込む
- take a pen(ペンを取る)
- take a bus(バスに乗る=交通手段を取り込む)
- take medicine(薬を飲む=体に取り込む)
- take a photo(写真を撮る=景色を取り込む)
- take time(時間がかかる=時間を取り込んで使う)
- take responsibility(責任を取る)
get:ある状態に「移る」、何かを「手に入れる」
- get a letter(手紙を受け取る)
- get angry(怒った状態になる)
- get to the station(駅に着く=その場所の状態になる)
- get it(わかる=意味を手に入れる)
- get him to help(彼に手伝ってもらう=その状態に持っていく)
take は「自分から取りに行く」感じが強く、get は「結果としてその状態になる」感じが強い、と比べると違いが見えてきます。
ポイント:似た基本動詞は、2つ並べて比べると両方のイメージがはっきりします。
入試・試験で狙われる多義語の例
動詞以外にも、「中学レベルなのに別の意味で出る」単語はたくさんあります。代表例を自作例文で確認しましょう。
- fine:元気な/細かい/罰金
- The sand on this beach is very fine.(この浜の砂はとても細かい)
- present:現在の/出席している/贈り物/提示する
- All the members were present.(メンバー全員が出席していた)
- matter:問題/重要である
- It doesn't matter to me.(私にとってはどうでもいい)
- company:会社/仲間・一緒にいること
- I enjoyed your company.(ご一緒できて楽しかったです)
- subject:教科/話題/(〜の)影響を受けやすい
- Prices are subject to change.(価格は変更されることがあります)
- cover:覆う/扱う・報道する/(費用を)まかなう
- The report covers three topics.(その報告書は3つのテーマを扱っている)
- figure:数字/人物/姿/考える(figure out)
こうした単語は、「知らない単語」ではなく「知っているつもりの単語」なので、読んでいても引っかかりにくいのが怖いところです。訳してみて文がおかしいと感じたら、多義語を疑う習慣をつけましょう。
多義語の覚え方:4ステップ
多義語を1語ずつ攻略するときの手順です。
- 辞書で意味を一覧する――英和辞典で見出し語の意味をざっと眺める。全部覚えなくてOK。
- 中心の絵を1文で書く――「run=止まらず流れるように動く」のように、共通点を自分の言葉でまとめる。
- 意味ごとに例文を1つ――よく使う3〜5個の意味について、短い例文を集めるか自作する。
- 絵とつなぐ――それぞれの例文が中心の絵とどうつながるか、矢印で図にする。
ノートの書き方例
ノートの中央に「run:止まらず動く」と書き、周りに「走る」「流れる」「経営する」「運行する」を枝のように配置します。枝の先に例文を1つずつ書き添えます。見開き1ページに1語の多義語マップを作るイメージです。
よくある失敗
- 意味を10個以上一気に覚えようとする:まずは頻度の高い3〜5個で十分です。
- 絵を作ったのに例文を見ない:イメージだけでは試験で使えません。必ず実際の文とセットにします。
- 無理やりこじつける:どうしてもつながらない意味は、「これは別物」として単独で覚えてかまいません。
1週間の多義語トレーニング
1日1語、10〜15分で取り組めるメニューです。
- 月曜:run――4ステップでマップを作る。
- 火曜:take――マップを作り、run のマップと見比べる。
- 水曜:get――take との違いを1文でまとめる。
- 木曜:fine / present――名詞・形容詞の多義語を2語。意味ごとに例文を1つずつ。
- 金曜:matter / company――長文や問題集で実際に使われている文を探す。
- 土曜:シャッフル確認――今週の例文を順番を混ぜて並べ、どの意味かを答える。
- 日曜:白紙マップ――何も見ずに run・take・get のマップを再現する。
ポイント:土曜の「シャッフル確認」は、意味を混ぜて思い出すことで、実際の長文に近い判断練習になります。
まとめ:「知っているつもり」を疑おう
多義語の攻略で大切なのは、次の3つです。
- 1語1訳で満足しない
- 中心の絵(コアイメージ)を自分の言葉で作る
- 意味ごとに例文をセットで覚える
長文で「知っている単語ばかりなのに意味が通らない」と感じたら、それは多義語が隠れているサインです。
今日は run か take のどちらか1語を選んで、ノート1ページの多義語マップを作ってみましょう。枝が3本伸びれば、もう立派なスタートです。



