ひと目でわかる違い
現在の小学校の英語は、学年によって2つの名前に分かれています。
- 外国語活動(3・4年):2年間で計70単位時間(年間35単位時間、週1コマ程度)
- 外国語科(5・6年):2年間で計140単位時間(年間70単位時間、週2コマ程度)
文部科学省の学習指導要領解説では、中学年では「聞くこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」の3つの領域、高学年ではこれに「読むこと」「書くこと」を加えた5つの領域で目標が示されています。
もう1つの大きな違いは、外国語科が教科であることです。教科なので教科書を使い、成績(評定)もつきます。外国語活動は教科ではないため、数値の評定ではなく、文章で子どもの様子が記録されます。
ポイント:3・4年は「音声中心で英語に慣れ親しむ時期」、5・6年は「音声で慣れた英語を、文字でも少しずつ扱う時期」と考えるとわかりやすいです。
外国語活動(3・4年)の授業で子どもがしていること
外国語活動の中心は、聞くことと話すことです。歌やチャンツ、ゲーム、友だちとのやり取りを通して、英語の音やリズム、よく使う表現に繰り返し触れます。
例えば、こんな表現を場面の中で使います。
- Hello! How are you? — I'm happy.
- Do you like dogs? — Yes, I do.
- How many apples? — Five apples.
- What's this? — It's a cat.
この時期に大切なのは、覚えたかどうかより、楽しく何度も触れたかどうかです。単語テストで点数をつけるのではなく、「聞いてわかった」「言ってみたら通じた」という経験を積み重ねます。
また、外国の言葉や文化と日本語・日本の文化の違いに気づくことも大切にされています。例えば、日本語の「ミルク」は3つの音のかたまりですが、英語の milk は1つのかたまりで発音される、といった違いを、歌やチャンツを通して体で感じていきます。
外国語科(5・6年)で加わること
5年生からは、読むことと書くことが加わります。ただし、中学校のように文法を説明して長文を読むわけではありません。解説では、主に次のようなことが示されています。
- 活字体の大文字・小文字を識別し、その「名前」(エー、ビー、シー)を言える
- 四線上に大文字・小文字を書ける
- 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や表現を、語順を意識しながら書き写す
- 例文を参考に、自分のことを書く
また、小学校で扱う語は、外国語活動で扱った語を含めて600〜700語程度とされています。これは「全部書けるようになる」という意味ではなく、音声を中心に触れる語の量の目安です。
ポイント:5・6年の「書く」は、自由作文ではなく「見本をまねして書く」が出発点です。
担任の先生ができること:学年ごとのポイント
3・4年を担当するとき
- 英語を「教える」より「一緒に楽しむ」姿勢で
- 歌やチャンツを毎時間の最初に入れ、音に慣れる時間を確保する
- 間違いを直すより、言おうとしたことをほめる(Nice try!)
5・6年を担当するとき
- 書く活動の前に、必ず音声で十分に聞いて言う時間をとる
- 書き写しは「1文」から。I like soccer. のように短い文をていねいに
- 評価の観点(知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度)を単元の最初に意識しておく
学年が上がるときには、4年生の3学期に「5年生になったら、英語の文字も少しずつ書けるようになるよ」と予告しておくと、子どもは期待感をもって進級できます。
中学年から高学年へ:つなぎを意識した授業の工夫
外国語活動と外国語科は別々のものではなく、ひと続きの学びです。担任の先生ができる「つなぎ」の工夫を具体的に紹介します。
4年生の後半にできること
- 絵カードの下に小さく単語のつづりを添えておく(読ませる必要はありません)
- アルファベットの歌やカードを使って、文字の形に目を慣れさせる
- 自分の好きなものを、絵を見せながら友だちに紹介する活動をする
5年生の最初にできること
- 4年生で歌った歌やチャンツを最初の授業で扱い、「知ってる!」から始める
- Hello, I'm 〜. I like 〜. など、4年生までに慣れた表現で自己紹介をする
- 四線ノートの使い方を、1時間かけてていねいに教える
例えば、4年生で Do you like 〜? のやり取りを楽しんだ子どもは、5年生で What 〜 do you like? という表現に出会ったとき、「前にやったのと似てる」と感じられます。この「似てる」という感覚が、新しい学習への安心感になります。
ポイント:学年間で「どの歌・どの表現を扱ったか」を簡単に引き継いでおくと、次の担任がとても助かります。
保護者が知っておきたいこと・家庭での声かけ
保護者の方にとって気になるのは、「家で何かしたほうがいいの?」という点かもしれません。
3・4年のご家庭
- 「今日の英語で何した?」ではなく「どんな歌を歌った?」と聞くと答えやすい
- 子どもが家で英語の歌を口ずさんでいたら、一緒に歌ってみる
5・6年のご家庭
- 成績がつくようになるので不安になりがちですが、まずは授業の様子を聞くことから
- アルファベットの書き方で困っていたら、四線ノートで一緒に確認する
- 「単語を全部覚えなさい」と求めすぎない
ポイント:家庭の役割は「先取り学習」より「英語っておもしろいね」という気持ちを支えることです。
よくある誤解
- 「3・4年は遊んでいるだけ」→ 歌やゲームにも、音に慣れるというねらいがあります
- 「5年生から急に難しくなる」→ 音声で慣れた表現を文字でも扱う、というなだらかな移行です
保護者会でよく聞かれる質問への答え方(先生向け)
保護者会や個人面談で、英語について聞かれることは少なくありません。答え方の例を紹介します。
- 「家で何をさせればいいですか?」:「学校で歌っている歌を一緒に聞いたり、授業で言った英語を教えてもらったりするだけで十分です」と伝えると、保護者の負担感が減ります。
- 「英語の成績はどうやってつけるのですか?」:「テストだけでなく、友だちとのやり取りや発表、振り返りの様子も見ています」と、評価の方法を具体的に伝えましょう。
- 「塾や英会話教室に通わせたほうがいいですか?」:学校としてどちらがよいとは言えないため、「お子さんが楽しめるかどうかを大切にしてください」とお伝えするのが無難です。
英語について不安をもつ保護者は多いので、学級通信で「今月の英語の歌」や「授業で使った表現」を紹介すると、家庭との会話のきっかけになります。
学級通信に載せる英語コーナーの例
- 今月の表現:What sport do you like? — I like soccer.
- おうちでやってみよう:夕食のときに、お子さんに「What sport do you like?」と聞いてみてください。
- 今月の歌:授業で歌っている歌のタイトル
3行ほどの短いコーナーで十分です。保護者が英語を話せなくても、カタカナで読み方を添えておけば、家庭で1回やり取りしてみるきっかけになります。
今日からの一歩
外国語活動と外国語科の違いを一言でまとめると、「音声中心の3・4年」から「音声に文字が少しずつ加わる5・6年」への段階的なつながりです。
先生であれば、担当学年の教科書や教材の最後の単元を開いて、「この学年の終わりに子どもができるようになっていること」を確認してみてください。保護者の方は、今日の夕食時に「英語の時間にどんな英語を言ったの?」とたずね、1つ教えてもらうところから始めてみましょう。
より詳しい内容は、文部科学省のウェブサイトに掲載されている小学校学習指導要領解説(外国語活動・外国語編)で確認できます。



