CLILの基本:4つのC
CLILを説明するときによく使われるのが「4つのC」です。
- Content(内容):その授業で学ぶ教科的な内容。例:水の循環、プラスチックごみ、世界の気候
- Communication(言語):内容を理解・表現するための英語。専門語彙や、説明・比較・原因と結果を表す表現
- Cognition(思考):分類する、比べる、理由を考える、評価するなどの思考活動
- Culture / Community(文化・協学):他者や異文化との関わり、クラスメイトとの協働
ポイントは、英語を「学ぶ対象」だけでなく「学ぶための道具」として使うことです。生徒は内容に興味を持つことで、英語を使う必然性を感じやすくなります。
CLILには、授業の多くを英語で教科内容に使う「ハードCLIL」と、英語の授業の中で教科的な題材を扱う「ソフトCLIL」があるとよく説明されます。日本の英語の授業で取り入れやすいのは、後者のソフトCLILです。
教科書から始めるソフトCLIL
最近の中学・高校の英語教科書には、環境、科学、歴史、国際協力などの題材がたくさん入っています。それを「読んで訳す」だけで終わらせず、内容について考える活動を1つ足せば、それがソフトCLILの入口になります。
例:プラスチックごみの題材の場合
教科書本文を読んだあと、次の活動を加えます。
- 自分の1日で使ったプラスチック製品を英語でリストにする(a plastic bottle, a lunch box, a bag...)
- グループで「減らせるもの」「減らしにくいもの」に分類する(Cognition:分類)
- 減らすアイデアを1つ選び、理由を添えて発表する
使う英語の例です。
- We can bring our own bottles because it's easy.
- It is difficult to stop using plastic bags because shops give them to us.
ポイント:新しい教材を一から作らなくても、「分類する」「比べる」「理由を考える」活動を足すだけでCLILらしい授業になります。
授業例:中学3年「世界の気候とくらし」
社会科の地理と連携しやすいテーマの例です。
ゴール:3つの都市の気温・降水量グラフを読み取り、そこに住む人の家や服装を予想して英語で説明する。
流れ(50分)
- ウォームアップ(5分):先生が写真を見せて質問。Is it hot or cold here? What are the people wearing?
- インプット(10分):簡単な英文で、グラフの読み方を示す。It is hot all year. / It rains a lot in July.
- グループ活動(20分):3都市のグラフを配り、各都市について「気候」「家」「服」を予想して表にまとめる
- 共有(10分):各グループが1都市を担当して発表。Our city is hot and dry. So people wear long clothes to protect themselves from the sun.
- 振り返り(5分):新しく知った英単語と、内容で驚いたことを1つずつ書く
グラフや写真といった視覚的な手がかりがあると、英語が苦手な生徒も内容に参加できます。社会科の先生に、事前にどの単元を学んだか聞いておくと、生徒の既有知識を活かせます。
足場かけ(スキャフォールディング)の工夫
CLILで一番大事なのは、内容も英語も少し難しい課題に対して、足場かけ(スキャフォールディング)を用意することです。
- 語彙リスト:その日のキーワード8〜10語を、写真付きで示す
- 文の型(センテンス・スターター):I think... because... / It is similar to... / The main reason is...
- グラフィック・オーガナイザー:ベン図、表、原因→結果の矢印図などのワークシート
- 日本語の使用を段階的に:考えを整理する段階では日本語も認め、発表は英語で、と場面で分ける
- 視覚資料:写真、図、実物、短い動画(動画を使う場合は著作権のルールを確認)
生徒への指示の例です。
- Look at the graph. Which month is the hottest?
- Use this chart to compare the two cities.
- Talk with your group. You can use Japanese to think, but please present in English.
足場は、生徒が慣れてきたら少しずつ外していきます。
40人クラスでの進め方とよくある失敗
40人での工夫
- 4人×10グループにして、グループごとに担当テーマ(都市、国、生き物など)を変えると、発表のときに情報の差が生まれます
- 発表は全体でなく、グループ同士の交換発表にすると時間が節約できます
- 内容のまとめはワークシート1枚に統一し、提出させて評価の材料にします
よくある失敗
- 内容が難しすぎて英語どころではない:教科の先生と相談し、すでに学んだ内容を扱うと英語に集中できます
- 英語が簡単すぎて内容の学びがない:Why? How? の質問を入れて思考を深めます
- 先生の準備が大変すぎる:学期に1回、教科書の題材から1時間だけCLILにする、くらいの頻度から始めましょう
評価は「内容を理解したか」と「英語で説明できたか」を分けて見ると、どちらが課題かが分かりやすくなります。
CLILで使える英語の「思考の型」一覧
CLILでは、内容について考えるための英語表現(学習言語)を意識して教えることが大切です。思考の種類ごとに、よく使う表現を整理しておくと便利です。
分類する
- These animals are mammals. Those are reptiles.
- We can divide them into two groups.
比べる
- City A is hotter than City B.
- Both cities have a lot of rain in summer.
- Unlike Tokyo, this city has no winter.
原因と結果を説明する
- Because the ice is melting, the sea level is rising.
- As a result, some islands may disappear.
意見と根拠を述べる
- I think we should reduce plastic because it hurts sea animals.
- According to the graph, ...
これらを1枚の「Thinking Phrases」シートにして、ノートの見返しに貼らせておくと、単元が変わっても繰り返し使えます。
指示の英語例です。
- Use at least one "comparing" phrase in your presentation.
- Check your Thinking Phrases sheet before you write.
内容が変わっても思考の型は共通なので、生徒は回数を重ねるごとに説明が上手になっていきます。
始めるための1か月プラン
- 1週目:次の学期の教科書で、理科・社会・環境などにつながる題材を1つ選ぶ
- 2週目:関連する教科の先生に、生徒がどこまで学んでいるかを聞く
- 3週目:キーワード10語、文の型3つ、ワークシート1枚を用意する
- 4週目:1時間だけ実施し、生徒の振り返りを読んで次に活かす
CLILは「英語の授業なのに内容が面白い」という体験を生徒に届けられる方法です。完璧を目指さず、1時間から試してみてください。



