まずは業務の「棚卸し」から
働き方を見直す第一歩は、自分が何に時間を使っているかを知ることです。1週間だけ、次のようにざっくり記録してみましょう。
- 授業準備
- 採点・提出物チェック
- 英作文やワークの添削
- スピーキングテストなどの実施・評価
- ALT・同僚との打ち合わせ
- 校務分掌・部活動
- その他(問い合わせ対応、会議など)
記録は15分単位の大まかなもので十分です。1週間分を見ると、「思ったより添削に時間を使っている」「打ち合わせが細切れで多い」といった傾向が見えてきます。
ポイント:感覚ではなく記録で見ると、減らせる業務が具体的に見えてきます。
記録をつけたら、それぞれの業務を次の3つに分けてみます。
- 続けるべきもの:生徒の学びに直結していて、自分にしかできない
- やり方を変えられるもの:必要だが、もっと短い方法がありそう
- 減らせるもの:目的があいまい、または他の業務と重なっている
この分類をするだけで、「全部大事で減らせない」という思い込みから抜け出しやすくなります。
採点・提出物チェックを軽くする
英語科で特に時間がかかりやすいのが、提出物と添削です。次のような工夫が考えられます。
ノート・ワークのチェック
- 全ページを見るのではなく、確認するページをあらかじめ指定する
- 自己採点をさせ、先生は「取り組んだか」と「誤りの傾向」だけを見る
- 評価の根拠にするものと、提出だけでよいものを分ける
英作文の添削
- すべての誤りを直さず、今回の重点項目(例:時制、理由の書き方)に絞ってフィードバックする
- よくある誤りは個別に書かず、全体に共有して一斉に解説する
- ルーブリック(評価基準表)を配っておき、該当する欄に丸をつける形にする
例えば、よくある誤りを次のようにまとめて配るだけでも、1人ずつ同じコメントを書く時間を大幅に減らせます。
- I very like soccer. → I like soccer very much.
- I went to shopping. → I went shopping.
こうした共有プリントは、翌年以降も同じ学年で使い回せるので、作れば作るほど後が楽になります。
スピーキングテストを回す仕組み
パフォーマンステストは大切ですが、1人ずつ実施すると授業時間も評価の手間も大きくなります。運営を工夫しましょう。
- ペアやグループで実施し、同時に複数人を評価する
- 評価基準を2〜3項目に絞った簡潔なルーブリックを使う
- テストの間、他の生徒が取り組む課題をあらかじめ用意しておく
- 録音・録画を活用する場合は、学校の機器や個人情報のルールに沿って運用する
評価項目を増やしすぎると、先生の負担だけでなく、生徒も何を頑張ればよいか分からなくなります。「内容」「伝わりやすさ」の2項目程度から始めるのも一つの方法です。
実施日の流れの例
- 冒頭5分:全体で練習し、評価の観点を確認する
- 30分:ペアごとに順番に実施。待っている生徒はワークシートで次の単元の予習や読み物に取り組む
- 最後10分:全体によかった例を共有し、次の目標を書かせる
評価はその場で記入し終えるのが理想です。「後で録画を見て評価しよう」とすると、放課後の仕事が一気に増えてしまいます。
英語科の中で分担・共通化する
英語科の先生同士で協力すると、1人あたりの負担は大きく減ります。
- 定期テストの作成を大問ごとに分担する
- ワークシート・ルーブリックを共通化して共有フォルダに置く
- 検定や外部行事の案内文をテンプレート化する
- ALTとの打ち合わせを、週1回の決まった時間にまとめる
ここで大切なのは、共通化を目的にしすぎないことです。クラスの実態に合わせて調整する余地を残しつつ、ゼロから作る部分を減らす、というバランスを意識しましょう。
ポイント:「みんなで同じものを使う」より「みんなで同じ土台を使い、少しずつ変える」ほうが長続きします。
打ち合わせも、時間の使い方を見直しやすい業務です。議題をあらかじめ共有フォルダやチャットで示し、「決めること」と「共有だけのこと」を分けておくと、短い時間で終わります。共有だけの内容は文書で済ませ、集まる時間は相談や意思決定に使いましょう。
「やめる仕事」を決める
新しい工夫を足すより効果が大きいのは、やめる・減らす仕事を決めることです。英語科で検討しやすい例を挙げます。
- 目的があいまいなまま続いている課題や提出物
- 誰も読み返していない記録や集計
- 授業の目標につながっていない掲示物づくり
- 毎回ゼロから作っている連絡文書
見直すときは、「この仕事は生徒の学びにどうつながっているか」を問いかけます。答えに詰まるものは、減らす候補です。ただし、学校全体で決まっている業務は1人で判断せず、教科会や管理職と相談して進めましょう。
授業の中で終わらせる工夫
放課後の仕事を減らすには、授業の中で終わらせられることを増やすのも効果的です。
- 小テストはその場で交換採点し、先生は結果の記録だけを行う
- 英作文は授業の最後5分でペアに読んでもらい、よかった点を1つ書いてもらう
- 振り返りカードは、授業中に数人分だけ読み、次の授業の冒頭で紹介する
- 音読テストは、机間指導しながらペアの音読を聞いてその場でチェックする
こうした工夫は、先生の負担を減らすだけでなく、生徒同士が学び合う時間にもなります。例えば英作文の相互チェックでは、次のような観点カードを配っておくと、生徒も具体的にコメントできます。
- 主張がはっきり書かれているか
- 理由が2つ以上あるか
- 時制がそろっているか
ICTを使える環境なら、フォームでの小テストの自動採点や、共有フォルダへの提出なども選択肢になります。ただし、すべてをデジタル化する必要はありません。紙のほうが早い作業もあるので、「どちらが早いか」で選ぶのが基本です。
また、評価の記録は学期末にまとめて行うと大変です。毎週金曜日の10分など、決まった時間に少しずつ入力しておくと、学期末の負担がぐっと軽くなります。
ポイント:授業時間は「教える時間」であると同時に「確認と記録を終わらせる時間」でもあります。放課後に回している作業を、1つだけ授業内に移してみましょう。
よくある失敗と今日からできること
- 自分だけで抱え込む:同僚も同じ悩みを持っていることが多いものです。教科会で話題にするだけで、改善が進むことがあります。
- 効率化ツールを増やしすぎる:新しいアプリを覚える時間が、かえって負担になることもあります。
- 一度に全部変える:1学期に1つずつ見直すくらいが、周囲の理解も得やすいペースです。
- 休むことに罪悪感を持つ:先生が疲れきっていると、授業の質も下がります。休むことも仕事の一部です。
まずは今週、自分の仕事を15分単位で記録してみましょう。そして、来週の教科会で「一緒にやめられそうな仕事」を1つ提案してみてください。
働き方の見直しは、先生が楽をするためだけのものではありません。生まれた時間を教材研究や生徒と話す時間、そして自分の休息に回すことで、結果として授業の質も上がります。



