燃え尽きは「頑張る人」に起こりやすい
燃え尽き(バーンアウト)は、仕事に熱心に取り組む人ほど起こりやすいと言われています。先生の仕事は、生徒のために頑張ろうと思えば、いくらでもやることが見つかるからです。
- 授業をもっとよくしたい
- 一人ひとりの英作文に丁寧なコメントを書きたい
- 生徒の悩みにしっかり向き合いたい
どれも大切な気持ちです。でも、それを続けるためには、先生自身が元気でいることが前提です。
ポイント:自分をケアすることは、わがままではなく「よい授業を続けるための準備」です。
なお、この記事は一般的なセルフケアの考え方を紹介するものです。つらい状態が続くときは、一人で抱え込まず、医療機関や専門の相談窓口に相談してください。
疲れのサインに気づく
疲れがたまっているときには、心や体、行動にサインが出ることがあります。次のような様子が続いていないか、ときどき振り返ってみましょう。
心のサイン
- 以前は楽しかった授業が、楽しく感じられない
- 生徒や同僚の言葉に、いつもよりイライラする
- 何をしても達成感がない
体のサイン
- 寝つけない、夜中に目が覚める
- 休日も疲れが取れない
- 頭痛や肩こり、胃の不調が続く
行動のサイン
- 趣味や好きなことをしなくなった
- 人と話すのがおっくうになった
- 仕事のことが頭から離れない
こうしたサインが2週間以上続くようなら、無理をせず、休むことや誰かに相談することを考えましょう。
簡単なセルフチェック
週末に、次の3つの質問に0〜10の数字で答えてみましょう。
- 今週、よく眠れたか
- 今週、仕事以外で楽しいと感じた時間があったか
- 来週の仕事を考えたとき、気持ちは落ち着いているか
数字を手帳に記録しておくと、自分の調子の波が見えてきます。数字が下がり続けているときは、休み方を見直すサインです。
毎日の小さなセルフケア習慣
特別なことをしなくても、毎日の小さな習慣が心の余裕を作ります。
1. 1日の終わりに「できたこと」を3つ書く
うまくいかなかったことばかり思い出しがちな先生こそ、できたことに目を向けましょう。
- 例:「Aさんが初めて英語で質問してくれた」「授業が時間どおりに終わった」「ALTと雑談できた」
2. 仕事を終える「区切り」を作る
- 退勤時刻を決め、机の上を片付けてから帰る
- 帰り道に好きな音楽やポッドキャストを聞く
- 家に着いたら、仕事のメールやチャットを見ない時間を作る
3. 体を整える
- 睡眠時間をできるだけ確保する
- 短い時間でも歩く、ストレッチする
- 食事を抜かない
どれも当たり前のことですが、忙しいときほど後回しにしがちです。1つだけでも意識してみましょう。
1週間のセルフケアメニュー例
- 月:退勤時刻を決め、机を片付けてから帰る
- 火:昼休みに5分だけ、校内を歩くか窓の外を見る
- 水:「できたこと」を3つ書く
- 木:同僚と仕事以外の話を少しする
- 金:1週間の頑張りをねぎらい、好きなものを食べる
- 土・日:少なくとも半日は仕事のことを考えない時間にする
全部できなくても大丈夫です。1つできたら十分と考えましょう。
仕事との距離の取り方
真面目な先生ほど、「全部自分がやらなければ」と考えがちです。次のような考え方を取り入れてみましょう。
「完璧」ではなく「十分」を目指す
すべての英作文に長いコメントを書く必要はありません。重点を絞ったフィードバックでも、生徒には十分伝わります。
断る・頼ることを練習する
- 「今週は手がいっぱいなので、来週でもよいですか」
- 「この部分だけ手伝ってもらえますか」
こうした言葉を使えることは、仕事を続けるための大切な技術です。
「コントロールできること」に集中する
生徒の家庭の事情や、学校全体の方針など、自分では変えられないこともあります。自分にできること(授業の工夫、声かけなど)に意識を向けると、無力感が減ります。
英語科の仲間と話す
同じ悩みを持つ先生と話すだけで、気持ちが軽くなることがあります。教科会の後の雑談や、研究会での出会いも大切にしましょう。
英語科ならではの負担を減らす
英語の先生は、スピーキングテストの実施、英作文の添削、ALTとの調整、検定の案内など、他教科にはない業務も抱えがちです。英語科の中で分担したり、評価の方法を見直したりして、1人に負担が集中しない仕組みを作ることも、燃え尽き予防につながります。
例えば、添削の重点を学期ごとに1つに絞る、スピーキングテストをペアで実施する、といった工夫で、放課後の作業時間を減らすことができます。
英語を楽しむ気持ちを取り戻す
英語の先生になった理由を思い出してみてください。英語が好きだった、英語で世界が広がった、という経験がある先生も多いのではないでしょうか。
忙しさの中で、英語が「仕事の道具」だけになってしまうと、授業の楽しさも薄れてしまいます。ときどき、自分のために英語を楽しむ時間を作りましょう。
- 好きな洋楽を聞く
- 仕事と関係のない英語の小説やエッセイを読む
- 英語の映画やドラマを字幕つきで気軽に見る
- 旅行や趣味について英語で書いてみる
先生が英語を楽しんでいる姿は、生徒にも伝わります。「先生が最近読んでいる本」を授業の雑談で紹介するだけでも、生徒の英語への興味を引き出すきっかけになります。
英語を楽しむ時間は、「勉強」にしないことがポイントです。単語を調べたり、授業で使えるかを考えたりせず、ただ楽しむ。それだけで、英語との関係が少しずつよみがえってきます。
相談できる先を知っておく
つらいときに相談できる先を、元気なうちに確認しておきましょう。
- 同僚や学年の先生、教科主任
- 管理職
- 学校の産業医や保健の担当
- 所属する自治体や教育委員会の相談窓口
- 医療機関(心療内科・精神科など)
「こんなことで相談していいのかな」と思うようなことでも、早めに話すほうが回復も早いと言われています。周りの先生の様子がいつもと違うと感じたら、「最近どう?」と声をかけることも大切です。
よくある失敗
- 「まだ大丈夫」と限界まで我慢する
- 休日を仕事で埋めてしまう
- 疲れを自分の能力不足だと考えて責める
- 相談先を調べるのを、つらくなってからにする
声をかけるときは、「何かあった?」と問い詰めるより、「最近忙しそうだけど、無理してない?」と気づかう言葉のほうが、相手も話しやすくなります。話を聞くときは、すぐにアドバイスをせず、まず最後まで聞くことを心がけましょう。
今日からできること
長く教師を続けるためには、授業の技術と同じくらい、自分をケアする技術が大切です。
今日の夜、寝る前に「今日できたこと」を3つだけ書いてみましょう。そして、今週のどこかで30分、自分のためだけに英語を楽しむ時間を作ってみてください。好きな曲を1曲、歌詞を見ながら聞くだけでも構いません。
先生が元気でいることが、生徒にとって一番の学習環境です。
完璧なセルフケアを目指す必要はありません。今日できることを1つだけ、が合言葉です。



