時間がかかる原因は「迷い」にある
教材研究に時間がかかる先生の多くは、作業そのものより何から手をつけるか迷う時間が長くなっています。
- 本文を何度も読み返すが、何を教えるかが決まらない
- ワークシートを毎回ゼロから作る
- ネットで指導例を探し始めて、気づくと1時間たっている
- 使うかどうか分からない資料まで作り込んでしまう
これらはすべて、手順と型を決めておくことで減らせます。料理でいえば、毎回レシピを考えるのではなく、定番の手順に材料を当てはめるイメージです。
ポイント:時短の本質は「速く作業する」ことではなく「決める回数を減らす」こと。型があれば、考えるべきところに集中できます。
本文分析を30分で終える5ステップ
1課分の本文を、次の5ステップで分析します。タイマーを使うと集中できます。
- 通読(5分):音声を聞きながら1回読み、内容の要点を日本語で1文にまとめる
- ゴール決め(5分):この課の最後に生徒ができるようになってほしいことを1つ決める(例:「本文の内容を踏まえ、自分の考えを3文で書ける」)
- 言語材料の確認(5分):新出文法と、ゴールに必要な表現に印をつける。全部を扱おうとしない
- 発問作り(10分):事実を問う質問、推測する質問、自分の考えを問う質問を各2つ作る
- 活動の選択(5分):定番の活動リストから、ゴールにつながるものを2つ選ぶ
発問の例を挙げます。
- 事実:What did the girl find in the box?
- 推測:Why do you think she didn't tell her mother?
- 意見:If you were her, what would you do?
この3種類をそろえると、読むこと・話すこと・書くことの活動に自然につなげられます。
分析メモは1枚にまとめる
分析した結果は、A4用紙1枚(またはデジタルのメモ1ページ)にまとめます。項目は「要点1文」「ゴール」「重点表現」「発問6つ」「活動2つ」の5つだけ。これ以上書き込まないと決めておくと、作業が膨らみません。このメモは来年同じ課を教えるときにもそのまま使えるので、課名をつけて保存しておきましょう。
ワークシートはテンプレートで作る
毎回ワークシートを一から作るのは、時間がかかる最大の原因です。次のような定番の型をいくつか用意しておきましょう。
- 内容理解シート:T/F問題、本文の要点を埋める表、発問への答え欄
- 音読チェックシート:音読方法(リピート・オーバーラッピング・リードアンドルックアップなど)と回数を記録する欄
- リテリングシート:キーワードや絵だけを並べ、本文を自分の言葉で言い直す
- 意見文シート:主張・理由・具体例・まとめの4つの枠
テンプレートがあれば、1課あたりの作業は「中身を入れ替えるだけ」になります。フォントや欄の配置を固定しておくと、生徒も毎回説明を聞かなくても取り組めるようになり、授業中の時間も節約できます。
デジタル教材と生成AIの使いどころ
教科書会社のデジタル教材や指導書には、音声・本文の分析・活動例などがそろっています。まずはそれを素材として活用し、自分のクラスに合わせて調整するのが近道です。
生成AIは、次のような「たたき台」づくりに向いています。
- 本文の内容に関するT/F問題の候補を出してもらう
- 本文を易しい英語に書き換えた版を作る(習熟度の低い生徒向け)
- スモールトークの話題を10個挙げてもらう
ただし、次の点には必ず注意してください。
- 出力された英文や問題は自分で確認する(誤りや不自然な表現が混ざることがある)
- 教科書本文を入力して使ってよいかは、教科書会社や学校・自治体のルールを確認する
- 生徒の個人情報は入力しない
ポイント:AIは「ゼロから作る時間」を減らす道具。最終判断は、目の前の生徒を知っている先生がします。
生成AIに頼むときは、指示を具体的にすると修正の手間が減ります。例えば「中学2年生向けに、過去進行形を使ったT/F問題を5つ。語彙は教科書レベルで」のように、学年・文法・数・難しさを伝えるのがコツです。
同僚と分担・共有する
同じ学年を複数の先生で担当しているなら、分担が最大の時短になります。
- 課ごとに担当を決め、ワークシートと発問を共有する
- 共有フォルダに「課名_種類_日付」のようにファイル名のルールを決めて保存する
- 使ってみた感想を一言添える(「発問3は難しすぎた」など)
1人で全部作るより質も上がります。他の先生の発問を見ることで、自分では思いつかなかった視点に出会えるからです。
1週間の準備サイクル例
- 月:次週の課の本文分析(30分)
- 火:テンプレートでワークシート作成(20分)
- 水:同僚と共有・調整(10分)
- 木〜金:授業後に一言メモを残す(各5分)
定番の活動リストを作っておく
ステップ5の「活動の選択」を素早く行うために、自分の定番活動リストを作っておきましょう。技能ごとに3〜5個あれば十分です。
読むこと
- T/F問題で概要をつかむ
- 段落ごとに見出しをつける
- 本文の順番に並べ替える
話すこと
- ペアで本文の内容を質問し合う
- キーワードだけを見てリテリングする
- 登場人物になりきってインタビューに答える
書くこと
- 本文の要約を3文で書く
- 本文のテーマについて自分の意見を書く
- 登場人物に手紙を書く
聞くこと
- 音声だけを聞いて、分かったことを日本語でメモする
- 先生のオーラル・イントロダクションを聞いて質問に答える
活動リストは、授業で試して「うまくいった」ものだけを残していくと、自分の授業スタイルに合ったものになっていきます。うまくいかなかった活動にも、「指示が長すぎた」「難易度が高すぎた」など理由をメモしておくと、次の改善に使えます。
このリストがあると、教材研究のときに「何をしようか」と迷う時間がほぼなくなります。本文を読んだら、ゴールに合う活動をリストから2つ選ぶだけ。これが、準備時間を短くしながら授業の質を保つ一番の近道です。
ポイント:教材研究の時短は「自分専用の引き出し」を増やすこと。1年かけて少しずつ育てていきましょう。
よくある失敗と今日からの一歩
- 完璧なワークシートを目指す:使うのは生徒です。見た目より、ゴールにつながっているかを優先しましょう。
- 本文のすべての文法を説明しようとする:ゴールに関係する表現に絞ると、授業もすっきりします。
- ネットの指導例を探し続ける:探す時間は10分までと決めておくのがおすすめです。
- 作った教材を保存しない:来年の自分が一番助かるのは、今年のデータです。
まずは、次に教える課で「30分タイマー」を使って本文分析をしてみましょう。終わらなかったところが、あなたにとっての時短のヒントになります。
時短で生まれた時間は、生徒のワークシートを読む時間や、次の単元の見通しを立てる時間に回しましょう。教材研究の目的は「立派な資料を作ること」ではなく「生徒が学べる授業を作ること」です。



