和文英訳で問われる力
和文英訳(和訳の反対で、日本語を英語に直す問題)は、国公立大学の二次試験などでよく見られる形式です。自由英作文と違い、書く内容が決まっているのが特徴です。
採点では、一般的に次のような点が見られると考えられます。
- 日本語の内容が過不足なく英語で表現されているか
- 文法・語法の誤りがないか
- 自然な英語表現になっているか
ここで大切なのは、難しい表現を使って高得点を狙うより、確実に正しい英文を書いて減点を防ぐことです。知らない表現を無理に使ってミスをするより、知っている表現で正確に書いたほうが、多くの場合は安全です。
ポイント:和文英訳は「満点の英文」より「ミスのない英文」を目指す試験です。
手順① 日本語を「英語にしやすい日本語」に言い換える
入試の和文英訳では、日本語特有の言い回しがわざと含まれていることがよくあります。そのまま英語にしようとすると、手が止まってしまいます。そこで、まず日本語をシンプルな日本語に言い換えます。
自作例題1
「最近の若者は、スマートフォンなしでは一日も過ごせないようだ」
- 言い換え:最近、多くの若い人は、スマートフォンを使わずに一日を過ごすことができないようだ
- 英訳:It seems that many young people these days cannot spend a day without using their smartphones.
自作例題2
「言うは易く行うは難し」
- 言い換え:何かを言うことは簡単だが、それを実際にすることは難しい
- 英訳:It is easy to say something, but it is difficult to actually do it.
言い換えのコツ
- ことわざや慣用句は、意味をかみくだいて普通の文にする
- 「~というもの」「~ということ」などの飾りを取り除く
- 一文が長ければ、2つの文に分けることも考える
このように、日本語の「言いたいこと」を取り出してから英語にすると、知っている単語と文法だけで書けることが多くなります。
手順② 主語と動詞を決める
日本語は主語を省略することが多い言語ですが、英語では原則として主語が必要です。英訳する前に、誰が(何が)、どうするのかをはっきりさせましょう。
主語が省略されている例
「駅に着いたら、電話してください」
- 誰が着く?→ あなた
- 英訳:Please call me when you arrive at the station.
主語の選び方で書きやすさが変わる例
「この町では、冬になると雪がたくさん降る」
- 案1:It snows a lot in this town in winter.
- 案2:We have a lot of snow in this town in winter.
- 案3:This town gets a lot of snow in winter.
どれも正しい英文です。自分が確実に書ける形を選べばOKです。
「~は」が主語とは限らない
「象は鼻が長い」の「象は」は話題を示しているだけで、そのまま主語にすると書きにくくなります。「Elephants have long trunks.」のように、動詞 have を使うとすっきり書けます。
ポイント:日本語の「~は」を機械的に主語にせず、「英語の文として主語は何が自然か」を考えましょう。
手順③ 時制と文法をチェックする
英文を書いたら、必ず見直しの時間をとりましょう。和文英訳で起こりやすいミスは、ある程度パターンが決まっています。
チェックリスト
- 主語と動詞の一致:三人称単数の -s を忘れていないか
- 時制:日本語の「~した」「~している」を正しい時制にしているか
- 冠詞:a / the / 無冠詞の使い分け
- 名詞の単数・複数:数えられる名詞に a や -s をつけているか
- 前置詞:時間・場所の前置詞(in, on, at)は正しいか
時制のミスの例
「私は3年間英語を勉強している」
- 誤:I study English for three years.
- 正:I have studied English for three years. または I have been studying English for three years.
日本語の「~している」は、英語では現在進行形とは限りません。期間を表す語句があれば、現在完了を考えましょう。
冠詞・複数形のミスの例
「本を読むことは大切だ」
- 誤:Reading book is important.
- 正:Reading books is important.
book は数えられる名詞なので、一般論として言うときは複数形にするのが自然です。
表現ストックの作り方
和文英訳を速く正確に書くには、よく使う表現を例文ごとストックしておくのが効果的です。
ストックしておきたい表現の例
- ~するのは…だ:It is ... (for 人) to do
例:It is important for us to protect the environment.
- ~すればするほど…:The 比較級 ~, the 比較級 ...
例:The more books you read, the more words you learn.
- ~のおかげで:thanks to ~
例:Thanks to the Internet, we can get information easily.
- ~とは限らない:not always
例:Expensive things are not always good.
- ~するようになる:come to do / learn to do
例:I came to like English after I started watching movies.
ストックの方法
ノートやアプリに「日本語の型」「英語の型」「自作例文」の3点セットで記録します。そして、1週間に1回、日本語だけを見て英語を書く練習をします。
自分で作った例文は、他人の例文よりずっと覚えやすく、本番でも思い出しやすくなります。
1週間の練習メニュー
和文英訳は、毎日少しずつ書く練習が一番効果的です。1日20〜30分のメニュー例を紹介します。
平日
- 月:和文英訳の問題集から2題。言い換えた日本語もメモする
- 火:前日の答案を、チェックリストで見直して書き直す
- 水:表現ストックを5つ追加し、自作例文を作る
- 木:和文英訳を2題。時間を計って本番形式で
- 金:1週間分のミスを分類(時制・冠詞・語法など)
週末
- 土:過去問の和文英訳を1題解き、できれば先生に添削してもらう
- 日:表現ストックを日本語から英語に直すテスト
和文英訳は自己採点が難しい分野です。解答例と自分の答案を比べるときは、「表現が違うから×」ではなく、「文法的に正しく、意味が同じか」を基準に考えましょう。判断に迷うものは、先生に質問するのが一番確実です。
よくある失敗と、今日やること
よくある失敗
- 日本語を一語ずつ英語に置き換える:語順も発想も違うので、不自然な英文になりやすくなります。まず言い換えましょう。
- 難しい単語を無理に使う:自信のない単語や表現は、確実に使える別の表現に置き換えましょう。
- 見直しをしない:三単現の -s や冠詞のミスは、見直せば防げることが多いです。
- 解答例を丸暗記する:解答例は1つの例にすぎません。大切なのは、言い換えの手順を身につけることです。
和文英訳は、正しい手順で練習すれば、安定して得点できるようになる分野です。今日は、「昨日の夜、何をしたか」を日本語で1文書き、それを英語にしてみましょう。その1文に、時制・主語・冠詞のチェックをかけるだけでも、立派な和文英訳の練習になります。



