過去問が大切な理由
大学受験の英語は、大学によって出題形式が大きく違います。共通テストはマーク式で大量の英文を読む試験ですが、国公立の二次試験では和訳や英作文などの記述問題が多く、私大では文法・語彙問題や長文の内容一致問題が中心の大学もあります。
つまり、「英語の力」が同じでも、形式に慣れているかどうかで点数は変わります。過去問は、志望校がどんな力を、どんな形で、どのくらいの時間で問うのかを教えてくれる、唯一の公式な資料です。
さらに、過去問を解くと「自分に何が足りないか」が具体的にわかります。和訳の記述で点が取れないのか、英作文で何を書けばいいかわからないのか、長文を時間内に読み切れないのか。これがわかると、日々の勉強の優先順位がはっきりします。
ポイント:過去問は「最後の力試し」ではなく、「勉強の方向を決めるコンパス」です。早い段階で一度見ておくことに大きな意味があります。
第1段階:高3の夏まで「偵察」として1年分
最初の過去問は、点数を取るためではなく、敵を知るために解きます。時期の目安は、高3の夏休み、遅くとも9月までです。
偵察で確認すること
- 大問の数と、それぞれの形式(長文、文法、和訳、英作文、要約など)
- 試験時間と、英文の総量
- 記述問題の量と、求められる答えの長さ
- 自分が「今のままでは解けない」と感じる問題はどれか
この段階では、時間を計って解いても、ほとんど解けなくて当然です。落ち込む必要はありません。大切なのは、解いたあとに「秋までにこれができるようにならないといけない」というリストを作ることです。
たとえば「英作文が毎年出ている→週1回は英作文の練習を入れる」「長文が3題で時間が厳しい→速読の練習を増やす」のように、日々の勉強に反映させます。
高2のうちに第一志望の過去問をぱらぱら眺めておくだけでも、勉強のモチベーションになりますよ。
第2段階:秋から「本格演習」で実力を伸ばす
基礎固めがひと段落した秋から、過去問を本格的な演習教材として使います。
何年分やるか
一般的には、第一志望校で5〜10年分程度を目安にする人が多いです。ただし、出題形式が大きく変わった年がある場合は、変更後の年を優先しましょう。年数を増やすことよりも、1年分を徹底的に復習することのほうが大切です。
解き方
- 本番と同じ時間を計って解く
- 時間が来たら、別の色のペンで時間無制限で解き続ける
- 答え合わせと採点(記述は解答例と比べて自己採点)
- 大問ごとに、得点と使った時間を記録する
時間内の答えと時間無制限の答えを色分けしておくと、「時間があれば取れた問題」と「そもそも力が足りない問題」を区別できます。
ペース
秋は週1〜2年分が目安です。解くことと同じくらい、復習に時間をかけましょう。
過去問が手に入らないときは
大学の公式サイトで過去問の一部が公開されている場合もあります。また、学校の進路指導室や図書室に過去の入試問題集がそろっていることも多いので、一度のぞいてみましょう。古い年度の問題も、出題形式が大きく変わっていなければ、練習の材料として十分使えます。
1年分を使い切る復習の手順
過去問1年分は、復習次第で何倍もの価値を生みます。次の手順で使い切りましょう。
- 失点の原因分析:単語・文法・構文・設問の読み違い・時間不足に分ける
- 記述の添削:和訳や英作文は、学校や塾の先生に見てもらうのが理想。難しければ、解答例と比べて「意味の取り違え」「文法ミス」「抜け」をチェック
- 長文の精読:読みにくかった文の構造を分析する
- 単語の回収:知らなかった単語・表現を単語帳やアプリに登録する
- 音読:長文の本文を3〜5回音読する
- 記録:「時間配分」「次回気をつけること」を1〜3行でメモする
記録の例
- 長文2題で45分使い、英作文に10分しか残らなかった→次は英作文を先に解く
- 和訳で主語をとり違えた→下線部はSとVを確認してから訳す
この記録を見返してから次の年を解くと、同じミスが減っていくのを実感できます。
ポイント:過去問は「解いた年数」より「復習で直したミスの数」が大事です。
解く時間帯も意識しよう
秋以降は、できれば本番の英語の試験と同じ時間帯に過去問を解く日を作りましょう。午前に英語がある大学なら、休日の午前に解くことで、本番と同じ頭の状態で力を出す練習になります。
第3段階:直前期は「本番シミュレーション」
入試直前の1か月は、過去問を本番の予行演習として使います。
- 本番と同じ時間帯に、同じ試験時間で解く
- 解く順番と時間配分を、本番と同じにする
- 取っておいた最新年度(または直近の年)を解いて、最後の確認をする
この時期は、新しい弱点を探すより、これまでの復習ノートを見返して同じミスをしないことに集中します。
併願校の過去問は?
併願校も最低1〜2年分は解いておきましょう。出題形式に一度も触れずに本番を迎えると、形式の違いに戸惑って実力を出し切れないことがあります。大学ごとの過去問の量は、第一志望を中心に、受験日が近い順に計画すると無理がありません。
過去問から傾向を読み取るチェックリスト
過去問を数年分解いたら、傾向を整理しておきましょう。次のチェックリストに沿ってメモすると、勉強の優先順位がはっきりします。
形式のチェック
- 毎年必ず出ている形式は何か(長文、和訳、英作文、要約、文法など)
- 年によって変わる形式はあるか
- マーク式と記述式の割合はどれくらいか
分量と時間のチェック
- 長文は何題で、1題あたりどのくらいの長さか
- 試験時間に対して、英文の量は多いか少ないか
- 自分が解いたとき、どの大問に時間がかかったか
テーマのチェック
- 長文のテーマはどんな分野が多いか(科学、社会、教育、文化など)
- 英作文は、意見を書くタイプか、日本語を英語にするタイプか
自分の得点のチェック
- 大問ごとの得点率はどれくらいか
- 毎回安定して取れている大問、毎回落としている大問はどれか
たとえば「長文のテーマは科学系が多い→科学系の英文を読む量を増やす」「英作文は毎年80語程度の意見文→意見文の型を練習する」のように、チェック結果を日々の勉強に直結させましょう。
ポイント:傾向の整理は一度で終わりではありません。3年分、5年分と解き進めるたびに、メモを更新していきましょう。
このメモは、直前期に「本番で何をどの順番で解くか」を決めるときにも役立ちます。
よくある失敗と、今日やること
よくある失敗
- もったいなくて解かない:「本番直前まで取っておこう」として、結局形式を知らないまま秋を迎えるのは一番もったいないパターンです。
- 解きっぱなし:点数を記録して終わりでは、同じミスを繰り返します。
- 年数をこなすことが目的になる:10年分を急いで解くより、5年分を徹底的に復習したほうが力がつきます。
- 記述を自己採点で甘くつける:和訳・英作文は、できるだけ先生に添削してもらいましょう。
過去問は、志望校からのメッセージのようなものです。「こういう力を持った人に来てほしい」という意図が、問題に表れています。まだ一度も見ていない人は、今日志望校の過去問を1年分だけ開いて、大問の構成を眺めてみましょう。それだけで、明日からの勉強の見え方が変わるはずです。



