和訳問題で問われていること
国公立大学の二次試験や、記述式の私大入試では、英文の一部に下線を引いて「日本語に訳しなさい」という問題がよく出されます。
和訳問題で採点者が見ているのは、主に次の2点だと考えられます。
- 英文の構造を正しくとらえているか(主語・動詞・修飾関係を取り違えていないか)
- その理解を、日本語として正確に表現できているか
つまり、和訳は「英語の理解」と「日本語の表現」の両方が問われる問題です。下線部には、関係詞や分詞、倒置、省略など、構造を読み違えやすい文が選ばれやすい傾向があります。
採点基準は大学ごとに異なり公開されていないことが多いですが、一般的には構造上の重要なポイントごとに点が配分されていると考えて答案を作るのが安全です。1か所の取り違えで、その部分の点がまるごと失われることもあります。
ポイント:和訳は「きれいな日本語」より先に「正確な構造把握」。そのうえで自然な日本語に整えます。
手順① 訳す前に構造を確認する
下線部を見たら、すぐに訳し始めるのではなく、まず構造を確認します。
チェックすること
- 述語動詞はどれか(動詞の数はいくつか)
- 主語はどこからどこまでか
- 関係詞節・分詞・不定詞は何を修飾しているか
- 代名詞(it, this, they など)は何を指しているか
- 省略されている語句はないか
自作例文
「What matters is not how much time you spend studying but how you use it.」
- 動詞:matters, is, spend, use
- What matters が主語(重要なこと)
- not A but B の形(AではなくB)
- it は time を指す
- 訳:重要なのは、勉強にどれだけの時間を費やすかではなく、その時間をどう使うかである
このように、構造を確認してから訳すと、not A but B のような重要な構文を訳し漏らすことがなくなります。
特に、代名詞が何を指すかは答案に明示することが求められる場合もあります。設問の指示をよく読み、「itの内容を明らかにして」などの指示があれば、必ず具体的に書きましょう。
手順② 訳語を文脈に合わせて選ぶ
構造がわかったら、次は単語の訳語を選びます。ここで大切なのは、単語帳の1つ目の訳をそのまま当てはめないことです。
例:多義語の訳し分け
- 「The company decided to cut costs.」→ cost は「費用」
- 「He saved the child at the cost of his own life.」→ at the cost of で「~を犠牲にして」
- 「She has a good command of English.」→ command は「(言語を)使いこなす力」
- 「The officer gave a command.」→ command は「命令」
抽象的な名詞の処理
英語では抽象的な名詞がよく主語になりますが、日本語にそのまま置き換えると不自然になることがあります。
「The rapid development of technology has changed our lives.」
- 直訳:技術の急速な発展が私たちの生活を変えた
- 工夫した訳:技術が急速に発展したことで、私たちの生活は変わった
どちらも間違いではありませんが、日本語として自然な後者のほうが読みやすくなります。ただし、自然さを求めすぎて元の英文の意味からずれないことが大前提です。
手順③ 日本語として読み直して整える
訳を書いたら、必ず日本語だけを読んで意味が通るかを確認します。英語を見ながら読むと、日本語がおかしくても気づきにくいからです。
確認ポイント
- 主語と述語が対応しているか(「~は」に対して「~である」「~する」があるか)
- 修飾関係があいまいになっていないか
- 一文が長すぎて読みにくくなっていないか
- 「それ」「これ」が何を指すか、日本語だけでわかるか
修飾関係のあいまいさの例
「私は駅で待っている友達に手を振った」という日本語は、「駅で待っている」のが友達なのか、「駅で手を振った」のか、あいまいに読めます。英文が「I waved to my friend waiting at the station.」なら、待っているのは友達です。「駅で待っている友達に、私は手を振った」と語順を工夫すると、誤解されにくくなります。
ポイント:答案は、英文を知らない人が読んでも同じ意味に受け取れる日本語になっているかを確認しましょう。
よくある減点ポイント
和訳問題で起こりやすいミスを、具体的に確認しておきましょう。
1. 時制・完了形の訳し漏れ
「He had already left when I arrived.」を「私が着いたとき、彼は出発した」と訳すと、had already left の「すでに~していた」が抜けてしまいます。正しくは「私が着いたとき、彼はすでに出発していた」です。
2. 助動詞のニュアンスの無視
may(~かもしれない)、must(~に違いない/~しなければならない)、should(~すべきだ)などを訳し落とすと、意味が変わってしまいます。
3. 否定の範囲の誤り
「Not all students like English.」は「全ての生徒が英語を好きなわけではない」(部分否定)です。「全ての生徒が英語を好きではない」と書くと、全体否定と区別がつかなくなります。
4. 比較の対象の取り違え
何と何を比べているのかを、日本語でも明確に示しましょう。
5. 訳し飛ばし
長い下線部では、短い副詞(even, only, still など)を訳し忘れがちです。even(~でさえ)、only(~だけ)、still(まだ)は、意味を大きく左右します。
和訳力を上げる毎日の練習
和訳の力は、実際に答案を書く練習でしか伸びません。1日20分でできる練習メニューを紹介します。
1日のメニュー
- 英文解釈の問題集や長文から、2〜3文を選ぶ(2分)
- 構造を分析し、答案として訳を書く(10分)
- 解答例と比べて、構造の取り違え・訳し漏れ・日本語の不自然さに印をつける(5分)
- 直した訳をもう一度書き直す(3分)
1週間の流れ
- 月〜金:上のメニューを毎日
- 土:1週間分の答案を見直し、同じミスをまとめる
- 日:過去問や模試の和訳問題を1題、時間を計って解く
できれば、書いた答案を学校や塾の先生に添削してもらいましょう。自分では気づきにくい「日本語としてのわかりにくさ」を指摘してもらえます。
ポイント:頭の中で訳すだけでは練習になりません。必ず紙に書いて、答案として完成させる練習をしましょう。
答案チェックリストと、今日やること
最後に、和訳の答案を提出する前のチェックリストをまとめます。
- 述語動詞と主語を正しくとらえているか
- 修飾関係(関係詞・分詞など)を正しく反映しているか
- 時制・助動詞・否定の範囲を訳し漏らしていないか
- 代名詞の内容を、必要に応じて明らかにしたか
- 日本語だけを読んで、意味が通るか
- 小さな副詞(even, only, still など)を訳し忘れていないか
和訳は、練習した分だけ確実に点数が安定していく分野です。今日は、最近読んだ英文から1文を選んで、紙に答案を書いてみましょう。そして、書いた日本語を英語を見ずに読み直してみてください。それが、減点されない和訳への第一歩です。



