緊張は「敵」ではない
まず知っておいてほしいのは、緊張そのものは悪いものではない、ということです。
大事な場面で心臓がドキドキしたり、手に汗をかいたりするのは、体が「これから頑張るぞ」と準備をしているサインです。適度な緊張は、集中力を高め、頭の回転を速めてくれることもあります。まったく緊張しないほうが、かえって気がゆるんでミスをすることもあるでしょう。
問題になるのは、緊張が強すぎて、頭の働きがじゃまされるときです。心理学では、不安や心配ごとが頭の中を占めると、問題を解くために使う「作業スペース(ワーキングメモリ)」が圧迫される、と考えられています。英文を読みながら「間に合わなかったらどうしよう」と考えていると、英文の内容を処理するための余裕が減ってしまうのです。
ポイント:目標は「緊張ゼロ」ではなく「緊張しても頭が働く状態」。この考え方に変えるだけで、少し気持ちが楽になります。
試験前に不安を「書き出す」
不安で頭がいっぱいのときに試してほしいのが、試験の直前に、不安な気持ちを紙に書き出す方法です。
心理学者のラミレスとベイロック(Ramirez & Beilock)が2011年に科学誌『Science』で報告した研究では、試験の前に、試験について感じている不安を数分間自由に書き出した学生は、そうしなかった学生に比べて、プレッシャーのかかる試験での成績の落ち込みが小さかったと報告されています。
頭の中でぐるぐる回っている心配ごとを紙に出すことで、そのぶん頭の作業スペースが空く、と考えられています。
やり方
- 試験の10分ほど前、小さな紙やノートを用意する
- 「今感じている不安」を、思いつくままに書く
- 文章は整えなくてOK。「リスニングで焦りそう」「長文が時間内に終わらなかったらどうしよう」など
- 5分ほど書いたら、紙を閉じてしまう
試験会場で書くのが難しければ、前日の夜や、会場に向かう電車の中でスマホのメモに書くのでもかまいません。
ポイント:不安を「消そう」とするより、「外に出す」。書いたあとは、もう考えなくていいと自分に言い聞かせましょう。
緊張を「やる気の合図」と読みかえる
緊張したとき、「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせても、なかなか落ち着けないものです。そこで試してほしいのが、ドキドキを「ワクワク」や「準備ができたサイン」として受けとめる考え方です。
心理学では、ストレスを感じたときの体の反応(心拍が上がるなど)を、「自分がやる気になっている証拠」ととらえ直すと、パフォーマンスが落ちにくくなる、という研究がいくつか報告されています。こうした方法は「再評価(リアプレイザル)」と呼ばれます。
使える言葉の例
- 「ドキドキしているのは、体がエンジンをかけているからだ」
- 「緊張するのは、ちゃんと準備してきたからだ」
- 「よし、集中モードに入った」
心の中で言うだけで十分です。緊張していることを否定せず、「この緊張を味方につけよう」と考えるのがポイントです。
呼吸と体で緊張をゆるめる
頭で考えるだけでなく、体から緊張をゆるめる方法も持っておきましょう。
ゆっくり吐く呼吸
緊張すると、呼吸は浅く速くなります。そんなときは、吸う時間より吐く時間を長くする呼吸を試してみましょう。
- 鼻から4秒くらいかけて、ゆっくり吸う
- 口から6〜8秒くらいかけて、細く長く吐く
- これを5回ほどくり返す
吐く息を長くすると、体がリラックスしやすくなるといわれています。試験開始の合図を待つ間にもできるので、ぜひ覚えておきましょう。
肩の力を抜く
- 両肩をぐっと耳に近づけるように上げて、5秒キープ
- ストンと一気に力を抜く
- これを2〜3回
力を入れてから抜くと、「力が抜けた感覚」がわかりやすくなります。
ポイント:呼吸法は、本番で初めてやってもうまくいきません。模試や小テストの前に何度か練習しておきましょう。
本番リハーサルで「いつもどおり」を作る
本番で緊張する大きな理由のひとつは、「いつもと違う」ことです。知らない会場、初めての時間帯、時間を計って解くプレッシャー。そこで、できるだけ本番に近い練習をして、「いつもどおり」の範囲を広げておきましょう。
リハーサルのポイント
- 時間を計って過去問を解く:本番と同じ制限時間で、途中で止めずに解く
- 本番と同じ時間帯に解く:試験が朝9時からなら、休日の朝9時から解く
- 本番と同じ道具を使う:鉛筆、消しゴム、時計(試験によってはスマートウォッチ不可)
- 会場までの道を下見する:可能なら、事前に行ってみるか、地図で経路を確認
「崩れたとき」の練習もする
リハーサルでは、うまくいかなかったときの立て直し方も練習します。たとえば過去問を解くとき、わざと1問を飛ばして次に進む練習をしてみましょう。「わからない問題があっても次に進める」経験を積んでおくと、本番でも慌てにくくなります。
前日と当日の朝は「いつもの流れ」で
前日は、新しい問題集に手を出さず、使い慣れた教材と間違いノートの見直しにとどめましょう。持ち物は前日の夜にそろえ、いつもと同じ時刻に寝ます。当日の朝も、ふだんと同じ朝食、同じ準備の順番で。「いつもと同じ」が積み重なるほど、心は落ち着きやすくなります。
英語の試験でよくある場面と立て直し方
リスニングで1問聞き逃した
リスニングでいちばん危ないのは、聞き逃した問題を引きずって、次の問題まで聞き逃すことです。
- わからなければ、すぐに一番ありそうな選択肢を選ぶ
- 小さく息を吐いて、「次」と心の中で言う
- 次の問題の選択肢に目を移す
1問の失点で済ませるか、連続して失点するか。この差はとても大きいです。
長文で時間が足りなくなりそう
時計を見て焦ったら、残り時間と残りの問題数を確認し、「全部読んでから解く」から「設問を先に見て、該当部分を探す」に切り替えるなど、あらかじめ決めておいた作戦に移りましょう。
面接(英検二次試験など)で頭が真っ白になった
面接で質問が聞き取れなかったときは、聞き返してもかまいません。たとえば Could you say that again, please? や Pardon? のような表現を、あらかじめ口に慣らしておくと安心です(聞き返しの扱いは試験によって異なるので、公式情報で確認しておきましょう)。また、入室のあいさつや最初の受け答えを何度も練習しておくと、最初の数十秒で落ち着きを取り戻しやすくなります。
当日のチェックリスト
- 受験票・筆記用具・時計・身分証明書(必要な試験のみ)
- 会場への経路と、到着予定時刻
- 休み時間に見る「単語メモ」1枚
- 不安の書き出し用の紙
注意:試験への不安が強く、眠れない・食べられないなど日常生活にも影響が出ている場合は、ひとりで抱えこまず、学校の先生やカウンセラー、医療機関に相談してください。
まとめ:緊張しても実力を出せる自分へ
緊張は、あなたが真剣に取り組んできた証拠です。なくそうとするより、上手につきあう方法を持っておきましょう。
- 試験前に、不安を紙に書き出す
- ドキドキを「準備ができたサイン」と読みかえる
- 吐く息を長くする呼吸で体をゆるめる
- 本番に近いリハーサルで「いつもどおり」を広げる
- 崩れたときの立て直し方を決めておく
次の模試や小テストで、まずは「試験前の書き出し」と「ゆっくり吐く呼吸」の2つを試してみてください。本番は、練習してきたことを出す場所です。



