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【朗報?】「地上の太陽」はついに“点火”した。それでも核融合発電がまだ先のワケ

【朗報?】「地上の太陽」はついに“点火”した。それでも核融合発電がまだ先のワケ

読む前に予想してみよう!

核融合の実験で、燃料に当てたレーザーより多いエネルギーが出たことがある

研究カード(どんな研究?)
対象
米国立点火施設(NIF)の慣性核融合実験
規模
1回の実験(その後も複数回再現)
研究の種類
実験研究・公的機関の発表
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

2022年、米国の実験で核融合の出力が投入したレーザーのエネルギーを初めて上回った。ただ装置全体では大赤字で、発電所の実現にはまだ長い道のりがある。

ひとことで言うと太陽と同じ仕組みで電気を作る研究。大きな一歩、でもゴールはまだ先!

もくじ
  1. 太陽は「合体」でエネルギーを生む
  2. 2022年12月、ついに「点火」
  3. でも装置全体では「大赤字」
  4. まとめ

太陽が何十億年も燃え続けられるのはなぜか知っていますか?

答えは核融合。太陽の中心では、軽い原子どうしがぶつかって合体し、そのとき莫大なエネルギーが生まれています。この仕組みを地球の上で再現して電気を作ろう――それが「地上の太陽」こと核融合発電です。

2022年、この夢に向けて歴史的なニュースが飛び込んできました。でも同時に、「発電所はまだずっと先」とも言われています。いったいどういうことなのでしょう?

01太陽は「合体」でエネルギーを生む

原子力発電所は、重いウランの原子を割る(核分裂)ことでエネルギーを取り出します。核融合はその逆で、軽い水素の仲間をくっつけるのです。

地上でよく狙われているのは、重水素と三重水素(どちらも水素の仲間)の組み合わせ。うまく合体させるには、燃料を1億度以上の超高温にして、原子どうしを猛スピードでぶつける必要があります。

問題は、そんな超高温の燃料を入れておける容器がこの世に存在しないこと。そこで研究者は、主に2つの作戦を考えました。

  • 磁場で浮かせて閉じ込める:ドーナツ型の装置(トカマク型など)で、燃料を磁石の力で宙に浮かせる
  • 一瞬で押しつぶす:燃料の小さな粒に、四方から強力なレーザーを当てて一瞬で圧縮・加熱する

022022年12月、ついに「点火」

これは「核融合の火がちゃんと燃えることを証明した」という意味で、本当に大きな一歩です。NIFはその後も点火をくり返し、2025年4月には、約2.08メガジュールのレーザーで約8.6メガジュール(燃料に当てたエネルギーの約4倍)という記録を出しています。

小さな燃料の粒を、四方からのレーザーで一瞬にして押しつぶす。
小さな燃料の粒を、四方からのレーザーで一瞬にして押しつぶす。

03でも装置全体では「大赤字」

ただし、ここに落とし穴があります。

発電所として成り立つには、さらにこんな課題を越える必要があります。

  • 実験は1回ごと。発電には1秒に何回も連続で点火し続ける必要がある
  • 核融合で飛び出す強い中性子に耐える丈夫な壁の材料
  • 燃料の三重水素を、装置の中で自分で作り出す仕組み
  • 熱を電気に変えて、全体として本当に黒字にすること

磁場で閉じ込める方式でも、フランスで日本・EU・米国など7つの国と地域が協力する巨大実験炉 ITER(イーター) の建設が進んでいます。ただ計画はたびたび見直され、2024年に発表された新しい計画では、研究運転の開始が2034年、本番の燃料(重水素と三重水素)を使う運転が2039年とされています(執筆時点)。日本の茨城県那珂市では、2023年に実験装置 JT-60SA が初めてプラズマを作ることに成功しました。最近は、ベンチャー企業による挑戦も世界中で増えています。

04まとめ

核融合は2022年、「燃料に入れたより多いエネルギーを出す」という点火の壁を越えました。でも、発電所として電気を送り出すには、まだいくつもの山があります。

「いつ実現?」の答えは、専門家の間でも意見が分かれます。ニュースを見るときは、「何と比べて黒字なのか」に注目すると、成果の大きさが正しく見えてきます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Sun shines because light atoms join together in a process called nuclear fusion. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The Sun shines because light atoms join together in a process called nuclear fusion. Scientists hope to copy this process on Earth to make clean electricity. To do this, fuel must be heated to over 100 million degrees, and no ordinary container can hold it. One method uses magnets to keep the fuel floating, while another squeezes a tiny fuel pellet with powerful lasers.

On December 5, 2022, the National Ignition Facility in the US fired about 2.05 megajoules of laser energy at fuel and produced about 3.15 megajoules of fusion energy. This achievement is called "ignition." However, running the lasers required about 300 megajoules of electricity, so the whole system was still far from producing more energy than it used.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

太陽が輝くのは、核融合と呼ばれる過程で軽い原子がくっつくからです。科学者たちは、この過程を地球上で再現してクリーンな電気を作りたいと考えています。そのためには燃料を1億度以上に加熱しなければならず、普通の容器ではそれを入れておけません。ある方法は磁石を使って燃料を浮かせておき、別の方法は強力なレーザーで小さな燃料の粒を押しつぶします。

2022年12月5日、米国の国立点火施設は燃料に約2.05メガジュールのレーザーエネルギーを当て、約3.15メガジュールの核融合エネルギーを生み出しました。この成果は「点火」と呼ばれます。しかし、レーザーを動かすには約300メガジュールの電気が必要だったので、システム全体としては、使ったより多くのエネルギーを生み出すにはほど遠い状態でした。

4択リーディングクイズ

Q1. Why can't fusion fuel be kept in an ordinary container?

Q2. How much fusion energy was produced on December 5, 2022?

Q3. What does the last sentence suggest?

重要単語

  • nuclear fusionB2
    名詞(句)核融合Nuclear fusion powers the Sun. fuse(溶けて一つになる)の名詞 fusion。反対の nuclear fission(核分裂)とセットで覚える。
  • ignitionC1
    名詞点火NIF achieved ignition in December 2022. 動詞 ignite(火をつける)。ign- は「火」(ラテン語 ignis)。車の ignition key「イグニッションキー」も同じ。
  • plasmaC1
    名詞プラズマ(超高温の電離ガス)The plasma is hotter than the center of the Sun. 固体・液体・気体に次ぐ「物質の第4の状態」。医学では「血漿」の意味もある。
  • neutronC1
    名詞中性子Fast neutrons damage the reactor walls. neutral(中立の)+-on。proton(陽子)・electron(電子)と三点セット。
  • net energy gainC1
    名詞(句)正味のエネルギー利得A power plant needs a real net energy gain. net は「正味の」(net income「純利益」)。何と比べた gain なのかを確認するのが記事のポイント。
  • deficitC1
    名詞赤字、不足The facility as a whole was still in deficit. 反対は surplus(黒字・余剰)。trade deficit「貿易赤字」は時事英語の頻出語。
  • confineC1
    動詞閉じ込める、限定するMagnets confine the hot plasma. be confined to ~「~に限られる」も頻出。名詞 confinement。

動画でもっと知る

核融合の実験で、燃料に当てたレーザーより多いエネルギーが出る「点火」に2022年ついに成功。…ただしレーザーを動かすのに使った電気は桁違いに多く、装置全体ではまだ大赤字らしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Abu-Shawareb et al. (Indirect Drive ICF Collaboration) (2024) Achievement of Target Gain Larger than Unity in an Inertial Fusion Experiment, Physical Review Lettersdoi.org
  2. Lawrence Livermore National Laboratory: Achieving Fusion Ignitionlmf.llnl.gov
  3. Knaster, Moeslang & Muroga (2016) Materials research for fusion, Nature Physicsdoi.org
  4. ITER Organization(公式)iter.org
  5. 量子科学技術研究開発機構(QST): 先進プラズマ研究開発(JT-60SA)qst.go.jp