スマホの地図アプリはアインシュタインのおかげ。相対性理論なしだとGPSは1日約10kmズレる

読む前に予想してみよう!
GPS衛星の時計は、地上の時計より少しずつ速く進む
速く動く効果(遅れる)より、重力が弱い効果(進む)の方が大きく、差し引きで1日約38マイクロ秒進む。
- 対象
- GPS衛星の原子時計
- 規模
- 約30機の衛星群の運用データと理論
- 研究の種類
- 理論・実測に基づく解説論文
- 確かさ
- ★★★★★
GPS衛星の時計は、速く動くことで遅れ、重力が弱いことで進み、差し引き1日に約38マイクロ秒進む。補正しないと距離に換算して1日約10kmの誤差がたまる計算。
ひとことで言うと宇宙の時計は地上より少し速く進む。だからGPSは時計を補正している!
スマホの地図アプリを開くと、自分のいる場所がピタッと表示されます。当たり前のようですが、実はこの便利さ、アインシュタインの相対性理論がなかったら成り立たないのです。
もしGPSが相対性理論を無視していたら――計算上は、1日に約10kmも位置がズレていくことになります。
いったいなぜ、100年以上前の物理学の理論が、ポケットの中のスマホと関係しているのでしょう?
01GPSは「時間」で場所を測っている
GPSは、地上から約2万キロ上空を回る30機ほどの衛星を使っています。それぞれの衛星には、とても正確な原子時計が積まれていて、「この信号は○時○分○秒に出しました」という情報を送り続けています。
スマホは、その信号が届くまでにかかった時間から、衛星までの距離を計算します。電波は光と同じ速さ(1秒に約30万km)で進むので、「届くのに何秒かかったか」がわかれば距離がわかるわけです。複数の衛星までの距離がわかれば、自分の位置が決まります。
ここで大事なのは、電波はとても速いので、時計がほんの少しズレるだけで、距離が大きくズレるということ。100万分の1秒(1マイクロ秒)の誤差でも、電波は約300メートル進んでしまうのです。
02宇宙の時計に起きる2つの“時間のズレ”
アインシュタインによれば、時間の進み方は誰にとっても同じではありません。GPS衛星の時計には、反対向きの2つの効果が働いています。
- 特殊相対性理論:速く動くものの時間は、ゆっくり進む。衛星は秒速約4kmで飛んでいるので、時計は1日に約7マイクロ秒遅れる
- 一般相対性理論:重力が強い場所ほど、時間はゆっくり進む。衛星は地上より重力が弱い場所にいるので、時計は1日に約45マイクロ秒進む
差し引きすると、衛星の時計は地上の時計より1日に約38マイクロ秒進むことになります。

0338マイクロ秒で、なぜ10km?
38マイクロ秒は、0.000038秒。ほんの一瞬です。でも、この間に電波は
約30万km/秒 × 0.000038秒 ≒ 約11km
も進みます。つまり補正しないと、1日に約10km分もの誤差がどんどん積み重なっていく計算になるのです。
04GPSはどうやって補正している?
実際のGPSでは、衛星の時計を打ち上げる前から、地上でほんのわずかに遅く刻むように設定しておきます。宇宙に上がって相対性理論の効果で速く進むと、ちょうど地上の時計と合う、という仕組みです。そのうえ、衛星の軌道のわずかなゆがみによる効果なども、計算で補正されています。
05まとめ
GPS衛星の時計は、速く動くことで遅れ、重力が弱いことで進み、差し引き1日に約38マイクロ秒速く進みます。この差を補正しているからこそ、私たちの地図アプリは正確なのです。
「相対性理論なんて生活に関係ない」と思っていた人も、明日スマホの地図を開くとき、ちょっとだけアインシュタインに感謝してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA smartphone finds its location using about 30 GPS satellites flying around 20,000 kilometers above Earth.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Your phone uses GPS to find where you are. GPS satellites have very exact clocks. But clocks in space run a little faster than clocks on Earth. This is because of Einstein's theory of relativity.
Each day, the satellite clocks gain about 38 millionths of a second. That sounds very small, but without a fix, the position could be wrong by about 10 kilometers a day.
66 words ・ CEFR A2
和訳を見る
あなたの携帯電話は、自分がどこにいるかを知るためにGPSを使います。GPS衛星にはとても正確な時計があります。しかし、宇宙の時計は地球の時計より少し速く進みます。これはアインシュタインの相対性理論のためです。
毎日、衛星の時計は約100万分の38秒進みます。とても小さく聞こえますが、直さなければ、位置は1日に約10キロメートルずれる可能性があります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
GPSが正確であるためには相対性理論が必要だ、という話が主題なので B。
Q2. How much could the position be wrong each day without a fix?
the position could be wrong by about 10 kilometers a day とあるので D。38は時計が進む量(100万分の38秒)。
Q3. In this passage, "gain" means ...
時計が gain するのは「進む」。faster と同じ方向の意味なので A。反対は lose(遅れる)。
A smartphone finds its location using about 30 GPS satellites flying around 20,000 kilometers above Earth. Each satellite carries an atomic clock and sends signals showing the time they were sent. The phone calculates its distance to each satellite from how long the signals take to arrive. Because radio waves travel at the speed of light, even a tiny clock error causes a big distance error. According to Einstein, the satellites' high speed makes their clocks run about 7 microseconds slower each day.
However, weaker gravity in space makes them run about 45 microseconds faster. Together, the two effects make them gain about 38 microseconds per day. If this were not corrected, errors of about 10 kilometers would build up every day.
122 words ・ CEFR B1
和訳を見る
スマートフォンは、地球の約2万キロメートル上空を飛ぶ約30機のGPS衛星を使って自分の位置を見つけます。各衛星は原子時計を積んでおり、信号を送った時刻を示す信号を送ります。携帯電話は、信号が届くまでにかかる時間から各衛星までの距離を計算します。電波は光の速さで進むため、時計のごくわずかな誤差でも大きな距離の誤差になります。アインシュタインによれば、衛星の速いスピードのために、その時計は1日に約7マイクロ秒遅くなります。
しかし、宇宙の弱い重力のために、時計は約45マイクロ秒速く進みます。差し引きで、時計は1日に約38マイクロ秒進みます。もしこれを補正しなければ、毎日約10キロメートルの誤差がたまっていくでしょう。
4択リーディングクイズ
Q1. How does a phone calculate its distance to a satellite?
from how long the signals take to arrive とあるので B。
Q2. What effect does weaker gravity have on the satellites' clocks?
weaker gravity in space makes them run about 45 microseconds faster とあるので C。7マイクロ秒遅れるのは速さの効果。
Q3. Why does a tiny clock error cause a big distance error?
Because radio waves travel at the speed of light, even a tiny clock error causes a big distance error とあるので A。
The map on your smartphone depends on Einstein's theories, though most users never think about it. GPS uses about 30 satellites orbiting roughly 20,000 kilometers up, each carrying an atomic clock. A receiver determines its distance to each satellite from the travel time of the signals, and because radio waves move at about 300,000 kilometers per second, an error of just one microsecond corresponds to about 300 meters.
Two relativistic effects act on the satellite clocks in opposite directions. Special relativity predicts that the satellites' speed of about 4 kilometers per second slows their clocks by around 7 microseconds per day, while general relativity predicts that the weaker gravity at their altitude speeds them up by about 45 microseconds. The net result is a gain of about 38 microseconds daily.
As physicist Neil Ashby explained in a 2002 article, ignoring these effects would cause navigation errors of more than 10 kilometers in a single day. Engineers therefore set the clocks to tick slightly slower before launch. Note, however, that the 10-kilometer figure expresses the size of the effect rather than a real risk, since ground stations continuously monitor the clocks and send corrections up to the satellites.
197 words ・ CEFR B2
和訳を見る
スマートフォンの地図はアインシュタインの理論に頼っていますが、ほとんどの利用者はそれを考えもしません。GPSは、およそ2万キロメートル上空を周回する約30機の衛星を使い、各衛星は原子時計を積んでいます。受信機は信号の伝わる時間から各衛星までの距離を求めます。
電波は毎秒約30万キロメートルで進むため、わずか1マイクロ秒の誤差が約300メートルに相当します。衛星の時計には、2つの相対論的効果が反対向きに働きます。特殊相対性理論によれば、秒速約4キロメートルという衛星の速さは時計を1日に約7マイクロ秒遅らせ、一般相対性理論によれば、その高度での弱い重力は時計を約45マイクロ秒速めます。差し引きの結果、時計は毎日約38マイクロ秒進みます。
物理学者ニール・アシュビーが2002年の解説記事で説明したように、これらの効果を無視すると、航法の誤差は1日で10キロメートルを超えます。そのため技術者は、打ち上げ前に時計をわずかに遅く刻むよう設定しています。ただし、地上局が時計を常に監視し、補正の情報を衛星に送っているため、10キロメートルという数字は実際の危険というより、効果の大きさを表したものであることに注意してください。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, an error of one microsecond corresponds to about ...
an error of just one microsecond corresponds to about 300 meters とあるので D。
Q2. How do engineers deal with the relativistic effects?
Engineers therefore set the clocks to tick slightly slower before launch. とあるので B。
Q3. What does the author suggest about the "10 kilometers per day" figure?
最終文で、地上局が時計を監視して補正を送っているので10kmは実際の危険ではなく効果の大きさを表すと述べているので A。
重要単語
- relativityC1名詞相対性(理論)GPS would not work well without relativity.
relative(相対的な)の名詞形。special relativity(特殊相対性理論)/ general relativity(一般相対性理論)。 - atomic clockC1名詞(句)原子時計Each satellite carries an atomic clock.
atomic は atom(原子)の形容詞。atomic bomb(原子爆弾)の atomic と同じ。 - time dilationC1名詞(句)時間の遅れTime dilation makes moving clocks tick more slowly.
dilation は「拡張」。dilate(瞳孔などが開く)の名詞形。時間が「引き伸ばされる」イメージ。 - gravityB1名詞重力Time runs faster where gravity is weaker.
grave(重大な)と同語源で「重さ」。the law of gravity「重力の法則」。 - correctionB1名詞補正、修正Engineers apply a correction before launch.
動詞 correct(正す)。make a correction「訂正する」。 - satelliteB1名詞(人工)衛星GPS uses about 30 satellites.
the Moon is Earth's natural satellite. 発音は /ˈsætəlaɪt/(サテライト)。 - accumulateC1動詞たまる、蓄積するSmall errors accumulate over time.
ac-(~へ)+cumulate(積み重ねる)。cumulative(累積的な)も入試頻出。
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スマホの地図アプリが正確なのは、アインシュタインの相対性理論のおかげらしい。GPS衛星の時計は地上より1日に約38マイクロ秒速く進むので、補正しないと位置が1日で約10kmもズレていく計算になる。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。














