天王星は「寝ころんだまま」回っている。98度も傾いた惑星の謎

読む前に予想してみよう!
天王星には、42年間ずっと太陽が沈まない場所がある
自転軸が約98度傾いているため、極では約42年の昼と約42年の夜が交互に来る。
- 対象
- 天王星
- 規模
- 探査機1機の接近観測+数値シミュレーション
- 研究の種類
- 観測と理論モデル
- 確かさ
- ★★☆☆☆
天王星の自転軸は約98度も傾き、横倒しで太陽を回る。極では42年昼が続き42年夜が続く。原因は巨大衝突説が有力だが、衛星が少しずつ倒した説もある。
ひとことで言うと天王星はねころんだまま回っているよ。だから42年間ずっと夜の場所もあるんだ。
地球の自転軸は、約23.4度かたむいています。このかたむきのおかげで、日本には春夏秋冬があります。
では、天王星はどうでしょう。NASAによると、そのかたむきは約98度。ほぼ真横です。
天王星は、まるでボウリングの球が転がるように、寝ころんだまま太陽のまわりを回っているのです。
01「42年ずっと昼」の世界
天王星が太陽を1周するのには、約84年かかります。
横倒しで回っているので、北極が太陽のほうを向いている時期には、北極では太陽が沈みません。そして半周たって南極が太陽を向くと、今度は北極に太陽が昇らなくなります。
その結果、極では約42年間ずっと昼、続く約42年間ずっと夜。人の一生でいえば、「生まれてから大人になるまで、一度も日の出を見ない」場所があるわけです。

02なぜ倒れた? 有力なのは「巨大衝突説」
いちばんよく知られている説明は、巨大な天体がぶつかって倒されたというものです。NASAも、遠い昔に地球くらいの大きさの天体と衝突した結果かもしれない、と紹介しています。
ただし、衝突説には弱点もあります。ドカンと一発で倒されたなら、天王星のまわりを回る衛星たちの軌道もバラバラになりそうです。ところが実際の主な衛星は、横倒しになった天王星の赤道にそろって回っています。衝突でできたちりから衛星が作り直された、といった説明が必要になるのです。
03もうひとつの説:「衛星がじわじわ倒した」
2022年、フランス・パリ天文台のサイヤンフェストらは、別のシナリオを発表しました。
むかし天王星には大きな衛星があり、その衛星が少しずつ遠ざかっていく途中で、天王星の自転と共鳴(タイミングがそろうこと)を起こした。その力で、天王星は長い時間をかけてじわじわ倒れていった——という考えです。最後に衛星は軌道が不安定になり、天王星にぶつかって消えた、とされています。
一発の衝突か、長い時間をかけた傾きか。いまのところ、決着はついていません。
04「たった1回の訪問」で決めつけていた?
天王星を間近で調べた探査機は、1986年のボイジャー2号だけです。
ところが2024年、NASAジェット推進研究所のジャシンスキーらは、ボイジャー2号が通ったのは太陽風が強く吹きつけた直後という特別なタイミングだった、と報告しました。天王星の磁気圏の「変わった姿」の一部は、たまたまの悪天候を見ていただけかもしれないのです。
2025年には、ハッブル宇宙望遠鏡でオーロラを追いかけた研究から、天王星の1日は17時間14分52秒と測り直されました。ボイジャー時代の値より28秒ほど長い結果です。私たちは天王星のことを、まだほとんど知らないのです。
05まとめ
- 天王星の自転軸は約98度。ほぼ横倒しで太陽を回る
- 極では約42年の昼と約42年の夜が交互にやってくる
- 原因は巨大衝突説が有力だが、衛星がじわじわ倒した説もあり、まだ謎
惑星はみんな「まっすぐ立って回るもの」だと思っていませんでしたか? 天王星は、太陽系のルールがじつは自由だったことを教えてくれます。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerEarth's axis is tilted by about 23.4 degrees, which gives us seasons.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Earth's axis is tilted a little, about 23 degrees. But Uranus is tilted about 98 degrees, so it goes around the Sun on its side. It takes about 84 years to go around the Sun once.
Because of this, each pole has about 42 years of daytime and then about 42 years of night. Why is Uranus lying on its side? Scientists are still not sure.
66 words ・ CEFR A2
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地球の自転軸は少し、約23度傾いています。しかし天王星は約98度も傾いているので、横倒しのまま太陽のまわりを回っています。天王星が太陽のまわりを1周するには約84年かかります。
そのため、それぞれの極では約42年間昼が続き、そのあと約42年間夜が続きます。天王星はなぜ横に寝ころんでいるのでしょうか。科学者にもまだはっきりとは分かっていません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
天王星が横倒しで回っていること、その結果の長い昼と夜、そして理由の謎が述べられているので B。
Q2. How long does daytime last at each pole of Uranus?
each pole has about 42 years of daytime とあるので A。84年は太陽を1周する時間。
Q3. In this passage, "tilted" means ...
98度傾いて on its side(横倒し)になっている、という文脈から tilted は「傾いた」。D が正解。
Earth's axis is tilted by about 23.4 degrees, which gives us seasons. Uranus, however, is tilted by about 98 degrees, so it rolls around the Sun almost on its side, like a bowling ball. One orbit takes about 84 years.
When the north pole faces the Sun, the Sun never sets there, and half an orbit later it never rises. As a result, each pole gets about 42 years of daylight followed by about 42 years of darkness. The most popular explanation is that a huge object crashed into the young planet.
However, this idea has a problem. Uranus's main moons orbit neatly around its tilted equator. Another model suggests that an ancient moon slowly pulled the planet over.
119 words ・ CEFR B1
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地球の自転軸は約23.4度傾いていて、そのおかげで季節があります。ところが天王星は約98度も傾いているため、ボウリングの球のように、ほぼ横倒しで太陽のまわりを転がるように回っています。1周には約84年かかります。
北極が太陽のほうを向いているとき、そこでは太陽が沈まず、半周後には太陽が昇りません。その結果、それぞれの極では約42年の昼のあとに約42年の暗闇が続きます。最も有力な説明は、巨大な天体が若い天王星に衝突したというものです。
しかし、この考えには問題があります。天王星の主な衛星は、傾いた赤道のまわりをきちんとそろって回っているのです。別のモデルでは、昔の衛星が天王星をゆっくり引き倒したと考えられています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
天王星の約98度の傾き、その結果、そして原因の2つの説を紹介しているので D。
Q2. What happens at Uranus's north pole when it faces the Sun?
When the north pole faces the Sun, the Sun never sets there とあるので B。
Q3. Why might the neat orbits of Uranus's moons be a problem for the collision idea?
激しい衝突があったなら衛星の軌道も乱れそうなのに、実際はきちんとそろっている、という矛盾を推測できるので C。
Most planets spin roughly upright. Uranus is tilted by about 98 degrees, so it orbits the Sun nearly on its side. One orbit takes about 84 years, which means each pole gets roughly 42 years of continuous daylight followed by 42 years of darkness. The leading explanation is a giant impact.
In 2018, researchers at Durham University ran dozens of supercomputer simulations and found that a glancing collision with an object at least twice Earth's mass could account for the planet's fast spin. The idea has a problem, though. A single violent blow should have scrambled the orbits of any existing moons. Uranus's major moons, by contrast, circle neatly in its equatorial plane, so they would have had to re-form from the debris.
In 2022, a team at the Paris Observatory proposed an alternative. An ancient, migrating moon could have fallen into a resonance with Uranus's spin and tipped the planet over little by little, before finally crashing into it. Both scenarios rest on assumptions, and there is very little data to test them against. Only one spacecraft, Voyager 2, has ever visited Uranus, and it flew past briefly in 1986.
191 words ・ CEFR B2
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ほとんどの惑星は、だいたいまっすぐ立って自転しています。天王星は約98度傾いているため、ほぼ横倒しで太陽を回っています。1周に約84年かかるので、それぞれの極ではおよそ42年間昼が途切れず続き、そのあと42年間暗闇が続きます。有力な説明は巨大衝突です。
2018年、ダラム大学の研究者たちはスーパーコンピューターで何十通りものシミュレーションを行い、地球の2倍以上の質量をもつ天体がかすめるように衝突すれば、天王星の速い自転を説明できることを見いだしました。ただし、この考えには問題があります。激しい一撃があれば、もともとあった衛星の軌道はかき乱されるはずです。ところが天王星の主な衛星は赤道面できちんとそろって回っているので、衛星は破片から作り直されたことになります。
2022年、パリ天文台のチームは別の説を提案しました。移動していく昔の衛星が天王星の自転と共鳴を起こして惑星を少しずつ傾けていき、最後には天王星に衝突したのかもしれない、というものです。どちらのシナリオも仮定に頼っており、それを確かめるためのデータはほとんどありません。天王星を訪れた探査機はボイジャー2号ただ1機で、それも1986年に短時間そばを通り過ぎただけなのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main focus of the passage?
巨大衝突説とパリ天文台の衛星共鳴説という2つの対立する説明が中心なので A。
Q2. According to the 2022 proposal, what tilted Uranus?
An ancient, migrating moon could have fallen into a resonance with Uranus's spin and tipped the planet over little by little とあるので C。A は2018年の衝突説。
Q3. Why does the author mention that only Voyager 2 has visited Uranus?
Both scenarios rest on assumptions, and there is very little data to test them against に続く文で、観測データの少なさ=決着がつかない理由を示しているので B。
重要単語
- axial tiltC1名詞(句)自転軸の傾きUranus has an axial tilt of about 98 degrees.
axis(軸)→ axial(軸の)。tilt は「傾き・傾ける」。tilt one's head「首をかしげる」。 - collisionB2名詞衝突A huge collision may have knocked Uranus over.
動詞は collide(衝突する)。collide with ~ の形で使う。crash より硬い語。 - flybyC1名詞(探査機の)接近通過Voyager 2 made the only flyby of Uranus.
fly by(そばを飛んで通り過ぎる)が名詞化。周回する orbiter、着陸する lander と区別する。 - magnetosphereC1名詞磁気圏Uranus has a strange magnetosphere.
magneto-(磁気の)+sphere(圏)。惑星の磁場が太陽風から守っている領域。 - resonanceC1名詞共鳴Resonance can slowly change a planet's tilt.
re-(再び)+sonare(鳴る)。物理では周期がそろって効果が強まること。resonate with ~「~の心に響く」。 - seasonA2名詞季節Each season on Uranus lasts about 21 years.
四季は the four seasons。in season で「旬の」。 - hypothesisB2名詞仮説The giant impact hypothesis is popular, but not proven.
複数形は hypotheses。theory より「まだ検証中」の意味合いが強い。入試の科学長文で頻出。
公式・一次情報をチェック
- Uranus: Facts(NASA Science)science.nasa.gov
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天王星は自転軸が約98度も傾いていて、ほぼ横倒しのまま太陽を回っている。そのせいで極では「42年間ずっと昼、次の42年間ずっと夜」。なぜ倒れたのかは、巨大衝突説と“衛星がじわじわ倒した”説で議論中らしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Kegerreis et al. (2018) Consequences of Giant Impacts on Early Uranus for Rotation, Internal Structure, Debris, and Atmospheric Erosion, The Astrophysical Journaldoi.org
- Saillenfest et al. (2022) Tilting Uranus via the migration of an ancient satellite, Astronomy & Astrophysicsdoi.org
- Jasinski et al. (2024) The anomalous state of Uranus's magnetosphere during the Voyager 2 flyby, Nature Astronomydoi.org
- Lamy et al. (2025) A new rotation period and longitude system for Uranus, Nature Astronomydoi.org
- NASA Science, Uranus: Factsscience.nasa.gov
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












