宇宙・NASAホント

太陽系最強の風は海王星。時速2000kmの嵐が、日差しの900分の1で吹く謎

太陽系最強の風は海王星。時速2000kmの嵐が、日差しの900分の1で吹く謎

読む前に予想してみよう!

太陽系でいちばん強い風が吹くのは、太陽に近くて暑い金星である

研究カード(どんな研究?)
対象
海王星の大気
規模
ボイジャー2号の接近観測+宇宙望遠鏡
研究の種類
観測研究+理論モデル
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

海王星では時速2000kmを超える風が吹く。日差しは地球の約900分の1なのになぜ速いのか。内部の熱と「ブレーキの少なさ」がカギらしい。

ひとことで言うと海王星には、ジェット機より速い風がふいているよ。

もくじ
  1. ボイジャー2号が見た「暴風の星」
  2. 日差しがないのに、なぜ速い?
  3. 嵐の深さは「皮1枚」
  4. 消えた「大暗斑」
  5. まとめ

太陽系で、いちばん風が強い惑星はどこでしょう?

熱い金星? 巨大な嵐をもつ木星?正解は、太陽からいちばん遠い惑星・海王星です。

NASAによると、海王星では時速2000km以上の風が雲を吹き飛ばしています。旅客機の巡航速度の2倍以上。地球の風の最大で約9倍にもなる、とNASAは紹介しています。

しかも海王星に届く太陽の光は、地球の約900分の1。ほとんど日が当たらない「寒くて暗い星」で、なぜこんな暴風が吹くのでしょうか。

01ボイジャー2号が見た「暴風の星」

海王星を間近で見た探査機は、1989年に通り過ぎたNASAのボイジャー2号だけです。

ボイジャー2号は、海王星の雲がどれだけ動いたかを、何枚もの写真で追いかけました。

この「時速◯◯km」という数字は、どの高さの雲を、どの基準(惑星の自転の速さ)で測るかで変わります。NASAは、雲が時速2000kmを超える速さで流れることがある、と紹介しています。

02日差しがないのに、なぜ速い?

地球の風は、太陽の熱で空気が温められて生まれます。では、日差しの弱い海王星の風のエネルギーはどこから?

ひとつのカギは、内部の熱です。

もうひとつのカギは、ブレーキの少なさです。地球の風は、山や森、海面とこすれて弱まります。ところが海王星にはかたい地面がありません。しかも大気は冷たく、風を乱す乱れが少ないと考えられています。いったん吹きはじめた風が、止まりにくいのです。

海王星の風を支えるのは、内部からわき出す熱と、ブレーキの少なさ
海王星の風を支えるのは、内部からわき出す熱と、ブレーキの少なさ

03嵐の深さは「皮1枚」

これほどの暴風なら、星の奥深くまで吹いているのでしょうか?

イスラエル・ワイツマン科学研究所のカスピらは2013年、海王星の重力のデータから、この強い風が吹いているのは表面近くのうすい層(深さ約1000km程度まで)だけだと見積もりました。海王星の半径は約2万5000km。暴風は、星全体から見れば皮1枚の出来事なのです。

04消えた「大暗斑」

ボイジャー2号は、海王星の南半球に地球がすっぽり入るほど巨大な黒い渦を見つけ、「大暗斑」と名づけました。

ところが1994年、ハッブル宇宙望遠鏡が海王星を見ると、大暗斑は消えていました。代わりに、別の場所に新しい暗い渦が現れていたのです。木星の大赤斑が100年以上続くのとは対照的に、海王星の嵐は数年で生まれては消えることが多いとわかってきました。

05まとめ

  • 太陽系最強の風は、いちばん遠い海王星。時速2000kmを超える
  • 日差しは地球の約900分の1。エネルギー源は内部の熱、加えてブレーキが少ない
  • 暴風は表面のうすい層だけ。巨大な渦も数年で消えることがある

寒くて暗い星ほど、静かだとは限らない。いちばん遠い惑星は、太陽系でいちばん騒がしい空をもっていました。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerNeptune is the planet farthest from the Sun and receives only about one nine-hundredth of the sunlight that… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Neptune is the planet farthest from the Sun and receives only about one nine-hundredth of the sunlight that reaches Earth. Even so, it has the fastest winds in the solar system, sometimes blowing at more than 2,000 kilometers per hour. Much of what we know comes from Voyager 2, the only spacecraft to visit Neptune, in 1989.

By tracking clouds in its images, scientists measured the wind speeds. Data from the same mission showed that Neptune gives off about 2.6 times as much energy as it receives from the Sun, so heat from inside the planet helps power the winds. In addition, Neptune has no solid surface, so there are no mountains or forests to slow the winds down.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

海王星は太陽から最も遠い惑星で、地球に届く日光のわずか約900分の1しか受けていません。それでも、太陽系で最も速い風が吹いており、ときには時速2000キロメートルを超えます。私たちが知っていることの多くは、1989年に海王星を訪れた唯一の探査機ボイジャー2号によるものです。その画像で雲の動きを追跡することで、科学者は風速を測りました。

同じミッションのデータから、海王星は太陽から受け取る約2.6倍ものエネルギーを放出していることが分かりました。つまり惑星内部からの熱が風を動かす助けになっているのです。さらに、海王星にはかたい地表がないため、風を弱める山や森がありません。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. How did scientists measure Neptune's wind speeds?

Q3. What can we infer about winds on Earth?

重要単語

  • wind speedB1
    名詞(句)風速Neptune's wind speed is incredibly high. high / low で表す(fast ではなく high wind speed)。天気予報では wind speeds of up to ~ の形が多い。
  • frictionB2
    名詞摩擦There is little friction to slow the winds. 物理の「摩擦」のほか、人間関係の「あつれき」も friction。friction between A and B。
  • internal heatB2
    名詞(句)内部の熱Neptune gives off more internal heat than expected. internal(内部の)⇔ external(外部の)。internal organs「内臓」。
  • vortexC1
    名詞渦A dark vortex appeared in the atmosphere. 複数形は vortices または vortexes。polar vortex「極渦(寒波のもと)」はニュース頻出。
  • supersonicC1
    形容詞超音速のSome say the winds are almost supersonic. super-(超える)+sonic(音の)。supersonic jet「超音速ジェット機」。
  • methaneB2
    名詞メタンMethane makes Neptune look blue. 発音は米 /ˈmɛθeɪn/(メセイン)、英 /ˈmiːθeɪn/(ミーセイン)。温室効果ガスとしても入試頻出。
  • turbulenceC1
    名詞乱流、(気流の)乱れThe plane shook because of turbulence. 飛行機の「揺れ」のアナウンスでおなじみ。比喩的に「(社会の)混乱」の意味もある。

4コマでわかる

太陽系最強の風は海王星。時速2000kmの嵐が、日差しの900分の1で吹く謎の4コマ漫画
太陽系でいちばん風が強いのは、いちばん遠い惑星・海王星。風速は時速2000km超で、NASAによれば地球の風の最大約9倍。太陽の光は地球の約900分の1しか届かないのに、なぜこんな暴風が吹くのかはいまも研究中らしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Limaye & Sromovsky (1991) Winds of Neptune: Voyager observations of cloud motions, Journal of Geophysical Researchdoi.org
  2. Pearl & Conrath (1991) The albedo, effective temperature, and energy balance of Neptune, as determined from Voyager data, Journal of Geophysical Researchdoi.org
  3. Kaspi et al. (2013) Atmospheric confinement of jet streams on Uranus and Neptune, Naturedoi.org
  4. Hammel et al. (1995) Hubble Space Telescope Imaging of Neptune's Cloud Structure in 1994, Sciencedoi.org
  5. NASA Science, Neptune: Factsscience.nasa.gov