ISSには洗濯機がない。宇宙飛行士の服は「着たら捨てる」が基本だった

読む前に予想してみよう!
国際宇宙ステーションには小型の洗濯機がある
洗濯機はなく、服は着回したあと廃棄するのが基本。宇宙用洗剤の試験は始まっている。
- 対象
- ISSの衣類運用
- 規模
- ISS長期滞在クルー
- 研究の種類
- 公式記録・宇宙実験(PGTIDE)
- 確かさ
- ★★★★☆
ISSには洗濯機がなく、服はしばらく着たら捨てるのが基本。シャツは約1週間、ズボンは約1か月着回す。月や火星を見すえ、宇宙用の洗剤の実験も始まっている。
ひとことで言うと宇宙には洗たく機がないので、服はしばらく着たらすてているよ。
宇宙ステーションには、トイレもジムも実験室もあります。でも、洗濯機はありません。
では、宇宙飛行士は半年もの滞在中、服をどうしているのか。答えは、ちょっとびっくりするほどシンプルです。しばらく着たら、捨てる。
01「着回し」の目安はシャツ1週間、ズボン1か月
NASAの公式ポッドキャスト(2020年)で、宇宙飛行士の訓練教官が、ISSでの服の交換ペースを紹介しています。目安はこんな感じです。
- ふだんのシャツ:約7日に1枚
- 下着:2〜3日に1枚
- 運動用の服:約5日に1枚
- ズボン:約30日に1本
「ズボン1か月!?」と驚くかもしれません。でもISSの中は温度や湿度が管理されていて、外で泥だらけになることもありません。
ただし、毎日2時間ほど運動する宇宙飛行士にとって、汗をかいた運動着は話が別。汗のにおいとの戦いは、宇宙生活のリアルな悩みです。
02捨てた服は「流れ星」になる
では、着終わった服はどこへ行くのでしょう?
ISSのゴミは、荷物を届け終わった無人の補給船に積み込まれます。補給船には、ゴミを満載したままISSを離れ、大気圏に突入して燃えつきるものがあります。つまり宇宙飛行士の古いTシャツの一部は、最後は空の上で燃える人工の流れ星になるのです。
ちょっともったいない気もしますが、狭いISSにゴミをためておくわけにはいきません。「届ける→使う→燃やす」が、いまの宇宙ステーションの服のライフサイクルです。
03なぜ宇宙で洗濯できないの?
理由は、宇宙ステーションならではの「3つの壁」です。
- 水が貴重:ISSでは尿や汗まで再生して飲み水にしているほど。洗濯にたっぷり水は使えない
- 洗った水を飲み水に戻す必要がある:洗剤の成分が、水の再生装置をじゃましてはいけない
- 空気を汚せない:洗剤から出る成分が、密閉された船内の空気に影響してはいけない
洗剤メーカーの研究者も、NASAの発表の中でこの3点を「宇宙で洗濯するときの大きな課題」として挙げています。

04月や火星では「捨てる」が通用しない
ISSは地上から約400km。数か月ごとに補給船が来るので、「着たら捨てる」でもなんとか回ります。
でも、火星への旅となると話は別です。往復で何年もかかり、途中で服を届けてもらうことはできません。何年分もの服を最初から積んでいくと、それだけで重い荷物になってしまいます。
そこでNASAは、アメリカの洗剤メーカーと組んで、宇宙で使える洗剤の開発に乗り出しました。2021年12月の補給船で、完全に分解されるよう設計された洗剤がISSへ。宇宙飛行士は、洗剤のしみ抜き成分の性能を調べる実験を行いました。
洗剤の成分が無重力や宇宙の環境で変質しないかも調べられています。
05まとめ
- ISSには洗濯機がなく、服は着回したら捨てるのが基本
- 目安はシャツ約1週間、ズボン約1か月
- 月・火星の長旅に向けて、宇宙用洗剤の実験がすでに始まっている
家の洗濯機が回る音は、じつは「水と重力がたっぷりある星に住んでいる」証拠。洗濯物を干すのがめんどうな日も、ちょっとだけありがたく思えてきませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe International Space Station has a toilet, a gym and laboratories, but no washing machine.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
There is no washing machine on the International Space Station. So astronauts wear their clothes many times and then throw them away. For example, they change their shirt about once a week and their pants about once a month. New clothes come from Earth on supply ships.
But a trip to Mars will take years, so this way will not work. NASA has started testing a special detergent in space.
70 words ・ CEFR A2
和訳を見る
国際宇宙ステーションには洗濯機がありません。そのため、宇宙飛行士は服を何度も着てから捨てます。たとえば、シャツは約1週間に1回、ズボンは約1か月に1回取りかえます。新しい服は補給船で地球から届きます。
しかし火星への旅は何年もかかるので、このやり方は通用しません。NASAは宇宙で特別な洗剤の試験を始めています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
洗濯機がないので服を着回して捨てる、という宇宙での服の扱いが全体のテーマなので C。
Q2. How often do astronauts change their pants?
their pants about once a month とあるので A。約1週間に1回はシャツ。
Q3. In this passage, "detergent" is something you use to ...
洗濯機がない問題を解決するために試しているものなので、detergent は「洗剤」。D が正解。
The International Space Station has a toilet, a gym and laboratories, but no washing machine. Instead, astronauts wear each item of clothing for several days and then discard it. According to a NASA training instructor, a shirt lasts about a week, while a pair of pants can be worn for about a month.
Workout clothes, however, need changing more often because astronauts exercise for around two hours a day. Used clothes are packed into uncrewed cargo ships, some of which burn up when they reenter the atmosphere. This system works only because the station is close to Earth and receives regular supplies. For a long trip to Mars, NASA and a detergent company have started testing a special detergent on the station.
122 words ・ CEFR B1
和訳を見る
国際宇宙ステーションにはトイレもジムも実験室もありますが、洗濯機はありません。そのかわり、宇宙飛行士は1つ1つの服を数日間着てから捨てます。NASAの訓練教官によると、シャツは約1週間もち、ズボンは約1か月はけるそうです。
ただし運動着は、宇宙飛行士が1日に約2時間運動するため、もっと頻繁に取りかえる必要があります。着終えた服は無人の補給船に詰め込まれ、その一部は大気圏に再突入するときに燃えつきます。このしくみが成り立つのは、ステーションが地球に近く、定期的に補給を受けられるからにすぎません。火星への長旅に備えて、NASAと洗剤メーカーはステーションで特別な洗剤の試験を始めました。
4択リーディングクイズ
Q1. What happens to astronauts' clothes after they are worn?
wear each item of clothing for several days and then discard it とあり、discard は「捨てる」なので B。
Q2. Why do workout clothes need changing more often?
because astronauts exercise for around two hours a day と理由が書かれているので D。
Q3. Why would the current system NOT work well for a Mars mission?
This system works only because the station is close to Earth and receives regular supplies とあり、遠い火星では定期補給ができないと推測できるので A。
Although the International Space Station has toilets, exercise machines and laboratories, it has no washing machine, and its approach to clothing is surprisingly simple: wear items until they are no longer hygienic, then throw them away. A NASA training instructor has given rough guidelines, such as about a week for a shirt and roughly a month for pants, though actual practice depends on each astronaut's preferences and workload. Discarded clothing is loaded into uncrewed cargo vehicles, some of which burn up on reentry. Laundry in orbit faces three obstacles.
Water is so precious that even urine and sweat are recycled into drinking water; any wash water would have to return to that system without damaging it; and detergent chemicals must not contaminate the sealed cabin air. The disposable model works only because the station orbits about 400 kilometers above Earth and is regularly resupplied. A Mars mission lasting years without deliveries would make it impractical. In December 2021, therefore, a fully degradable detergent was sent to the station, where astronauts tested how well it removed stains and whether it stayed stable in microgravity.
183 words ・ CEFR B2
和訳を見る
国際宇宙ステーションにはトイレや運動器具、実験室がありますが、洗濯機はなく、服についての考え方は驚くほど単純です。衛生的でなくなるまで着て、それから捨てるのです。NASAの訓練教官は、シャツなら約1週間、ズボンならおよそ1か月といった大まかな目安を示していますが、実際には宇宙飛行士それぞれの好みや作業量によって変わります。捨てられた服は無人の補給機に積まれ、その一部は再突入のときに燃えつきます。軌道上での洗濯には3つの壁があります。
水はとても貴重で尿や汗まで飲み水に再生されていること、洗濯に使った水はその再生システムを傷めずに戻さなければならないこと、そして洗剤の化学成分が密閉された船内の空気を汚してはならないことです。この使い捨て方式が成り立つのは、ステーションが地上約400キロメートルを周回し、定期的に補給を受けているからにすぎません。補給のないまま何年も続く火星ミッションでは、この方式は現実的ではなくなるでしょう。そこで2021年12月、完全に分解される洗剤がステーションへ送られ、宇宙飛行士はそれがしみをどれだけ落とせるか、また無重力でも安定して使えるかを試しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
服を捨てる現状、洗濯が難しい理由、火星に向けた洗剤試験と話が展開しており、全体をまとめているのは C。
Q2. Which is NOT given as a reason why laundry is difficult in orbit?
three obstacles として水の貴重さ・再生システム・船内の空気の3点が挙げられている。騒音には触れていないので D。
Q3. The author calls the guidelines "rough" most likely because ...
直後に actual practice depends on each astronaut's preferences and workload とあり、目安は人によって変わる「大まかな」ものだと分かるので A。
重要単語
- laundryB1名詞洗濯(物)Doing laundry is hard in space.
do the laundry「洗濯をする」が定番。不可算名詞なので a laundry とは言わない。 - detergentB2名詞洗剤The detergent was designed for use in space.
de-(離す)+terge(ふく)が語源で「汚れをふき取るもの」。soap より化学的な洗剤を指す。 - discardB2動詞捨てる、廃棄するAstronauts discard their worn clothes.
dis-(離す)+card(カード)。トランプで不要な札を捨てるのが語源。throw away の硬い言い方。 - resupplyC1名詞・動詞補給(する)New clothes arrive on resupply missions.
re-(再び)+supply(供給)。resupply mission「補給ミッション」は宇宙ニュースの頻出語。 - stainB2名詞しみ、汚れShe tried to remove the stain from her shirt.
remove a stain「しみを落とす」。stainless は「しみ・さびがつかない」→ステンレス。 - biodegradableC1形容詞生分解性の(自然に分解される)The new detergent is biodegradable.
bio(生物)+degrade(分解する)+-able。環境系の長文で頻出。 - closed-loopC1形容詞閉じた循環のThe station uses a closed-loop water system.
外に出さずに中で回し続けるしくみ。closed-loop recycling「閉ループ型リサイクル」。
公式・一次情報をチェック
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
宇宙ステーションには洗濯機がない。だから服は何日も着たら捨てるのが基本で、シャツは約1週間、ズボンは約1か月着回すらしい。月や火星に行くにはこれじゃ困るので、宇宙専用の洗剤の実験も始まっている。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(4件)タップで表示
- NASA Houston We Have a Podcast Ep.144, Space Hygiene (2020)nasa.gov
- NASA, Experiments Riding 24th SpaceX Cargo Mission Study Bioprinting, Crystallization, Laundry (2021)nasa.gov
- NASA, Detergent, Skin Bioprinter Launch on NASA's SpaceX Resupply Mission (2021)nasa.gov
- NASA, Space Station Science Highlights: Week of August 1, 2022nasa.gov
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









