睡眠・休息ウソ

予知夢は本当にある?「夢が当たった」と感じるのは、確率と記憶のトリックだった

予知夢は本当にある?「夢が当たった」と感じるのは、確率と記憶のトリックだった

読む前に予想してみよう!

予知夢を見る人は、まわりの小さな手がかりに無意識に気づく力が強いことが実験で確かめられている

研究カード(どんな研究?)
対象
成人
規模
数十〜百数十人規模の複数研究
研究の種類
実験研究・追試・統計学的分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

予知夢が未来を当てる科学的証拠はない。大勢が毎晩夢を見れば「当たる夢」は必ず出るうえ、人は当たった夢だけを覚えている。予知能力の実験も再現されなかった。

ひとことで言うと夢が当たるのは、たくさんの夢の中の「たまたま」を覚えているから!

もくじ
  1. 「1万分の1」は毎日起きている
  2. 外れた夢は、覚えてすらいない
  3. 「無意識の気づき」説も確かめられなかった
  4. まとめ

予知夢が本当に未来を当てている、という科学的な証拠はありません。「夢が当たった」と感じるのは、①毎晩たくさんの人がたくさんの夢を見るので、偶然一致する夢は必ず出てくること、②人は当たった夢だけを覚えていて、外れた夢は忘れること――この2つでかなり説明できます。

とはいえ、「あの夢は本当に当たったんだ!」という体験はリアルです。科学者たちは、この不思議な体験にどう向き合ってきたのでしょうか。

01「1万分の1」は毎日起きている

アメリカの統計学者ダイアコニスさんとモステラーさんは、1989年の論文で「本当に大きな数の法則」という考え方を紹介しました。ものすごく大きな集団で見れば、どんなにめずらしいことでも、どこかで誰かに起きるというものです。

02外れた夢は、覚えてすらいない

もう一つのトリックが記憶です。私たちは一晩に何度も夢を見ていますが、ほとんどは起きた瞬間に忘れてしまいます。

さらに、夢の中身はたいていふだん気にしていることでできています。「大事な試験で失敗する夢」「家族が病気になる夢」は、もともと心配していることなので、現実でも起こりやすいテーマです。当たりやすい内容の夢を見ている、という面もあるのです。

そして、あとで何か出来事が起きたときに「そういえば、こんな夢を見た気がする」とさかのぼって結びつけます。夢の内容はもともとあいまいなので、出来事に合わせて記憶が少しずつ書きかわることもあります。外れた夢は数えられず、当たった夢だけが「予知夢」として残るのです。

人は「当たった夢」だけを重く覚えている
人は「当たった夢」だけを重く覚えている

03「無意識の気づき」説も確かめられなかった

もう少しまじめな仮説もあります。「予知夢を見る人は、まわりの小さな手がかりに無意識に気づく力が強く、それが夢に表れているのでは?」というものです。

2014年、イギリス・エディンバラ大学のチームがこの仮説を2つの実験で確かめました。ところが、無意識の学習能力や、画像の小さな変化に気づく力と、予知夢の体験との間に、予想された関係は見つかりませんでした。ただし、意識と無意識の境目があいまいになりやすい性格の傾向(トランスリミナリティ)とは関係が見られました。

04まとめ

予知夢は、未来からのメッセージではなく、確率と記憶が作り出す「偶然の名作」だと考えるのが、今の科学の答えです。

でも、「なぜ当たったと感じるのか」を考えることは、私たちの脳のクセを知る最高の教材です。今夜の夢は、ぜひメモしてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerStories of dreams that came true are common, but there is no reliable scientific evidence that dreams… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Stories of dreams that came true are common, but there is no reliable scientific evidence that dreams predict the future. Two simple ideas explain most cases. First, there are huge numbers of dreamers. If 10 million people remember a dream each night, and each dream has only a 1-in-10,000 chance of matching the next day's events, about 1,000 people a night would still feel that their dream came true.

Second, we forget most dreams but remember the ones that seem to match. Our dreams are also often about things we already worry about, such as exams or family health, so they are more likely to match. In 2011, a famous study claimed that people could sense the future, but later attempts failed to repeat the result.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

夢が現実になったという話はよくありますが、夢が未来を予言することを示す信頼できる科学的証拠はありません。ほとんどの場合は、2つの単純な考えで説明できます。1つ目は、夢を見る人の数がとても多いことです。毎晩1,000万人が夢を覚えていて、それぞれの夢が翌日の出来事と一致する確率が1万分の1しかなくても、毎晩約1,000人は「夢が本当になった」と感じることになります。

2つ目は、私たちはほとんどの夢を忘れ、一致したように思える夢だけを覚えていることです。また、夢は試験や家族の健康など、もともと心配していることについてのものが多いので、一致しやすいのです。2011年、ある有名な研究が人は未来を感じとれると主張しましたが、その後の試みではその結果を再現できませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. In the example, about how many people a night would feel that their dream came true?

Q3. Why are dreams about exams more likely to "come true"?

重要単語

  • coincidenceB2
    名詞偶然の一致It was just a coincidence. 動詞 coincide「同時に起こる・一致する」の名詞形。What a coincidence!「なんて偶然!」は会話の定番。
  • precognitionC1
    名詞予知There is no good evidence for precognition. pre-(前に)+cognition(認知)=「前もって知ること」。形容詞は precognitive。
  • probabilityB2
    名詞確率The probability is small, but not zero. 形容詞 probable「ありそうな」、副詞 probably。in all probability「十中八九」も覚えておくと便利。
  • selective memoryC1
    名詞(句)選択的記憶(都合のいいことだけ覚えていること)Selective memory makes us forget the misses. selective は select(選ぶ)の形容詞形で「選り好みする」。have a selective memory は皮肉っぽく使われることも。
  • replicateC1
    動詞再現するOther scientists could not replicate the result. 名詞 replication「追試」、replica「複製品」。fail to replicate「再現できない」は研究紹介の頻出表現。
  • foreseeC1
    動詞予見するNo one can foresee every problem. fore-(前に)+see。過去形 foresaw, 過去分詞 foreseen。unforeseen「予期せぬ」も長文でよく出る。
「夢で見たことが本当に起きた!」という予知夢。でも計算すると、毎晩たくさんの人が見る夢の中には、偶然“当たる夢”が必ず出てくるらしい。しかも人は外れた夢をすぐ忘れる。予知能力の有名な実験も追試で再現されなかった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Diaconis & Mosteller (1989) Methods for Studying Coincidences, Journal of the American Statistical Associationdoi.org
  2. Valášek et al. (2014) Testing the implicit processing hypothesis of precognitive dream experience, Consciousness and Cognitiondoi.org
  3. Bem (2011) Feeling the future: Experimental evidence for anomalous retroactive influences on cognition and affect, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  4. Ritchie, Wiseman & French (2012) Failing the Future: Three Unsuccessful Attempts to Replicate Bem's 'Retroactive Facilitation of Recall' Effect, PLoS ONEdoi.org