睡眠・休息

夜勤は体にどれくらい負担? 看護師19万人の追跡とWHO専門機関の「発がん分類」を読み解く

夜勤は体にどれくらい負担? 看護師19万人の追跡とWHO専門機関の「発がん分類」を読み解く

読む前に予想してみよう!

WHOの専門機関は、夜勤を「発がん性がおそらくある」グループに分類している

研究カード(どんな研究?)
対象
女性看護師
規模
約19万人・24年追跡
研究の種類
前向きコホート研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

米国の看護師約19万人を24年追うと、夜勤を含む交替勤務の年数が長いほど心臓病リスクがやや高い傾向。夜勤をやめて年数がたつとリスクは下がる方向だった。

ひとことで言うと夜勤は体内時計とのケンカ。仮眠と光の工夫でダメージを減らせるかも!

もくじ
  1. 看護師約19万人を24年間追いかけた
  2. 「発がん性がおそらくある」の本当の意味
  3. なぜ夜勤は体に負担なのか
  4. まとめ

病院、工場、コンビニ、警察、消防……。私たちの社会は、夜も働く人たちに支えられています。

一方で「夜勤は体に悪い」という話もよく聞きます。実際のところ、どれくらいの負担があるのでしょうか。そして、少しでもダメージを減らす方法はあるのでしょうか。

研究の数字を、正確に読み解いてみます。

01看護師約19万人を24年間追いかけた

結果、交替勤務の年数が長いほど、冠動脈疾患のリスクがやや高い傾向が見られました。

注目したいのは、その後の変化です。夜勤をやめてから年数がたつほど、リスクは下がる方向でした。夜勤の影響は「一生消えない傷」ではなく、ある程度は戻っていく可能性があるのです。

02「発がん性がおそらくある」の本当の意味

2019年、WHOの専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、夜勤を「グループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)」に分類しました。

こう聞くとドキッとしますが、この分類は「がんを起こす可能性を示す証拠がどれくらい確かか」を表すもので、「どれくらい危険か(リスクの大きさ)」を表すものではありません。

ヒトでの証拠は「限定的」で、動物実験などの証拠を合わせての判断です。夜勤をしている人が必ずがんになる、という意味では決してありません。

夜勤は、太陽を基準にした体内時計と、仕事の時刻とのズレを生む
夜勤は、太陽を基準にした体内時計と、仕事の時刻とのズレを生む

03なぜ夜勤は体に負担なのか

2016年の『BMJ』のレビューでは、交替勤務の健康への影響として、睡眠不足と眠気、事故やミスの増加、代謝(血糖など)の乱れなどが整理されています。

背景にあるのは、体内時計と生活時刻のズレです。人の体は、夜は眠り、昼は活動するように時計がセットされています。夜に働き昼に眠る生活は、時差ボケを何度もくり返しているような状態とも言えます。

2018年のメタ分析でも、交替勤務と心血管病のリスクには関連が見られました。ただしどれも観察研究で、生活習慣や職場環境の違いが影響している可能性もあります。

勤務の組み方も大切です。一般に、体内時計は「遅らせる」方が得意なので、交替のローテーションは日勤→準夜勤→深夜勤と時計回りに進めるほうが体が合わせやすいと考えられています。また、夜勤が何日も続くと睡眠不足がたまりやすいため、連続夜勤の回数を減らすことも負担を軽くする工夫の一つです。

食事のタイミングも見逃せません。真夜中に重い食事をとると、体内時計がまだ「夜」と判断している時間帯に胃腸を働かせることになります。夜勤中は軽めの食事にするなどの工夫も役立ちます。

夜勤明けの睡眠は、昼間の明るさや生活音で途切れやすくなります。遮光カーテンや耳栓を使い、家族にも「この時間は寝ている」と共有しておくと、まとまった睡眠をとりやすくなります。

04まとめ

夜勤は、社会に欠かせない働き方です。研究は「夜勤=危険」と決めつけるのではなく、体内時計とのズレが負担になることを示しています。

仮眠、光の調整、決まった時間の睡眠。小さな工夫の積み重ねが、夜を支える人たちの体を守ります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOur society depends on people who work at night, but how much does night work affect their health? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Our society depends on people who work at night, but how much does night work affect their health? In a 2016 study, researchers followed 189,158 healthy female nurses in the US for up to 24 years. They looked at how many years each nurse had worked rotating shifts that included at least three night shifts a month. The longer the nurses had done this kind of work, the slightly higher their risk of heart disease was.

But the risk tended to fall as the years passed after they stopped working nights. Experts think the main problem is the mismatch between the body clock and working hours. Working at night and sleeping in the day is a little like having jet lag again and again.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

私たちの社会は夜に働く人々に支えられていますが、夜の仕事は彼らの健康にどれくらい影響するのでしょうか?2016年の研究で、研究者たちはアメリカの健康な女性看護師189,158人を最長24年間追跡しました。彼らは、各看護師が月に少なくとも3回の夜勤を含む交替勤務を何年間したかを調べました。この種の仕事をした期間が長いほど、心臓病のリスクがやや高くなっていました。

しかし、夜勤をやめてから年数がたつにつれて、リスクは下がる傾向がありました。専門家たちは、主な問題は体内時計と勤務時間のずれだと考えています。夜に働いて昼に眠ることは、時差ボケを何度もくり返すことに少し似ています。

4択リーディングクイズ

Q1. What kind of work did the study examine?

Q2. What happened after nurses stopped working nights?

Q3. Why does the writer compare night work to jet lag?

重要単語

  • shift workB2
    名詞(句)交替制勤務Shift work can disrupt your body clock. night shift「夜勤」、work the night shift「夜勤をする」。
  • rotatingB2
    形容詞交替の、回り番のShe works rotating shifts at the hospital. rotate「回転する・交替する」から。rotation「回転、輪番」。
  • carcinogenicC1
    形容詞発がん性のあるThe agency classified it as probably carcinogenic. carcino-(がん)+-genic(生み出す)。名詞 carcinogen「発がん物質」。
  • anchor sleepC1
    名詞(句)毎日同じ時間帯に確保する睡眠Anchor sleep helps stabilize your rhythm. anchor は「錨(いかり)」。リズムをつなぎとめるイメージ。
  • fatigueB2
    名詞疲労Fatigue increases the risk of mistakes at work. 発音 /fəˈtiːɡ/。chronic fatigue「慢性疲労」。
  • misalignmentC1
    名詞ずれ、不一致Circadian misalignment is common among night workers. mis-(誤って)+align(一直線に並べる)+-ment。align with ~「~と足並みをそろえる」。
  • distortC1
    動詞ゆがめるOther factors may distort the results. dis-(離れて)+tort(ねじる)。distort the facts「事実をゆがめる」。

動画でもっと知る

米国の看護師約19万人を24年追った研究で、夜勤を含む交替勤務の年数が長いほど心臓病のリスクがやや高い傾向。でも夜勤をやめてから年数がたつほど、その差は小さくなっていたらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Vetter C et al. (2016) Association Between Rotating Night Shift Work and Risk of Coronary Heart Disease Among Women, JAMAdoi.org
  2. Kecklund G, Axelsson J (2016) Health consequences of shift work and insufficient sleep, BMJdoi.org
  3. Torquati L et al. (2018) Shift work and the risk of cardiovascular disease. A systematic review and meta-analysis including dose-response relationship, Scandinavian Journal of Work, Environment & Healthdoi.org
  4. IARC (2019) IARC Monographs Volume 124: Night Shift Workiarc.who.int