心理学ホント

作品を「取っておく」と言うだけで、子どももやる気が出た。4歳から効く“意味”の力

作品を「取っておく」と言うだけで、子どももやる気が出た。4歳から効く“意味”の力

読む前に予想してみよう!

作品を「保存する」と伝えるだけでは、小さな子どものやる気は変わらない

研究カード(どんな研究?)
対象
米国の4〜9歳の子どもと大人
規模
子ども604人・大人582人(4研究)
研究の種類
オンラインの選択実験
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

作ったものが「箱にしまわれる」か「バラバラにされる」か。それだけで4〜9歳の子どもも大人も、作る活動を選ぶ割合が大きく変わった。

ひとことで言うと作ったものが残るとわかるだけで、子どもも大人もやる気が出るみたい!

もくじ
  1. 「箱にしまう」か「バラバラにする」か
  2. シール1枚を払ってでも「残したい」
  3. 壊されるなら「楽な方」を選ぶ
  4. 「楽しもう!」はどこまで効く?
  5. まとめ

一生けんめい作った工作が、授業のあとすぐ捨てられるとしたら。次の授業、がんばれますか?

「そりゃやる気なくなるよ」と思った人。その感覚、4歳の子どもにもすでにあるらしいのです。

2026年7月、心理学の専門誌『Psychological Science』に、米シカゴ大学の研究チームの論文が載りました。4つの研究で、4〜9歳の子ども604人と大人582人を調べた結果、作ったものが「残る」とわかるだけで、やる気がはっきり変わったといいます。9月には米国心理科学協会(APS)も紹介記事を出しました。

01「箱にしまう」か「バラバラにする」か

ゲームは2種類。片方は、作ったハートが箱にしまわれる。もう片方は、作ったハートがバラバラにされる。

ポイントは、しまわれたハートが「いつまで残るか」「あとで見られるか」は何も説明していないこと。意味としてはほぼゼロに近い、ごく小さな「残る」です。

それでも、どちらのゲームをしたいか聞くと、子どもの約8割、大人の8〜9割が「しまわれる方」を選びました。年齢による差もほとんどありませんでした。

違いは「作品が残るかどうか」だけ。それでも選び方は大きく変わった
違いは「作品が残るかどうか」だけ。それでも選び方は大きく変わった

02シール1枚を払ってでも「残したい」

次の研究では、ゲームにシール1枚の“料金”をつけました。ふだんは子どもも大人も、当然タダの方を選びます。

ところが、作品が残るのは有料の方だけにすると、タダを選ぶ子どもは85%から50%に、大人は89%から62%に下がりました。シールを払ってでも、残る方を選ぶ人が増えたのです。

おもしろいのは、パズルが勝手に動くアニメを見るだけの場合。こちらは「残るかどうか」で選び方がほとんど変わりませんでした。大事なのは「物が残ること」ではなく、自分が作ったものが残ることだったわけです。

これは、自分で組み立てた物を高く評価してしまう「IKEA効果」ともつながる話です。

03壊されるなら「楽な方」を選ぶ

3つ目の研究では、ハートをちゃんと組み立てるか、ピースをそのまま箱に放り込む(楽ちん)かを選ばせました。

作品が残る場合、大人の83%が組み立てる方を選択。ところが「どうせ分解される」と言われると、34%に急落しました。子どもも、残る場合は約8割が組み立てを選び、壊される場合は年齢が上がるほど楽な方に流れました。

04「楽しもう!」はどこまで効く?

砂のお城のように、すぐ消えるものを作るのも楽しいですよね。最後の研究では「このゲームの目的は楽しむこと!」と強調してみました。

すると、組み立てを選ぶ割合は子どもも大人も上がりました。ただし論文によると、作品が残らない条件の“やる気の穴”を完全には埋められなかったそうです。楽しさと「意味」は、別々の燃料のようです。

05まとめ

作品を写真に撮る、名前をつける、誰かに見てもらう。著者たちは、こうしたささいな「残し方」も、意味として働くかもしれないと書いています。

宿題のノートも、部活の記録も、「どこかに残る」と思えれば少しがんばれる。自分や家族の作ったものを、まずはちゃんと見てあげることから始めてみませんか。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWould you work hard on something if you knew it would be destroyed right away? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Would you work hard on something if you knew it would be destroyed right away? Researchers at the University of Chicago ran four online studies with 604 children aged four to nine and 582 adults. Participants chose between games in which they built hearts or stars from puzzle pieces. In one version, the finished shape was saved in a box; in the other, it was broken apart.

About 80 percent of children and 80 to 90 percent of adults chose the version where their work was saved. More people were even willing to pay a sticker to keep their work. The study, published in Psychological Science, suggests that even a tiny sense of meaning can motivate people.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

すぐに壊されると分かっていたら、あなたは何かを一生けんめい作るでしょうか。シカゴ大学の研究者たちは、4〜9歳の子ども604人と大人582人を対象に、4つのオンライン研究を行いました。参加者は、パズルのピースでハートや星を作るゲームの中から選びました。一方では完成した形が箱に保存され、もう一方ではバラバラにされました。

子どもの約80%と大人の80〜90%が、作品が保存される方を選びました。作品を残すためなら、シールを1枚払ってもよいと考える人も増えました。『Psychological Science』に発表されたこの研究は、ごく小さな「意味」でも人をやる気にさせうることを示唆しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What did participants build in the games?

Q2. About what percentage of children chose the version where their work was saved?

Q3. What is the main message of the study?

重要単語

  • motivateB2
    動詞やる気にさせる、動機づけるGood feedback can motivate students. 名詞 motivation、形容詞 motivated。be motivated to do「~する意欲がある」。
  • meaningA2
    名詞意味、意義Helping others gives my life meaning. 「語の意味」だけでなく「生きがい・意義」も表す。meaningful「意義のある」。
  • take apartB1
    句動詞分解するHe took the old radio apart. 目的語が代名詞なら take it apart の語順。反対は put together「組み立てる」。
  • assembleB2
    動詞組み立てる、集めるIt took an hour to assemble the shelf. 名詞 assembly(組み立て、集会)。assembly line「組み立てライン」。
  • preserveB2
    動詞保存する、守るWe should preserve old buildings. pre-(前もって)+serve(守る)。名詞 preservation。preservative は「保存料」。
  • emphasizeB2
    動詞強調するThe teacher emphasized the importance of sleep. 名詞 emphasis(put emphasis on ~「~を重視する」)。英つづりは emphasise。
  • shareB2
    名詞割合、取り分The share of students who walk to school is rising. 動詞「共有する」でおなじみだが、名詞の「割合・シェア」も論説文で頻出。
作った作品が「箱にしまわれる」か「すぐ分解される」か。違いはそれだけなのに、4〜9歳の子どもも大人も、残る方の活動を強く選んだらしい。見るだけでは効かず、自分で作るときに特有。部活や勉強のやる気にも通じそう。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Liu & Yang (2026) Moved by the Lightest Touch of Meaning: Even Minimal Significance Matters for Motivation From Childhood, Psychological Sciencedoi.org
  2. Association for Psychological Science: It's the Small Things: Treating Something as Even Slightly Significant Affects Motivationpsychologicalscience.org
  3. Ariely et al. (2008) Man's search for meaning: The case of Legos, Journal of Economic Behavior & Organizationdoi.org
  4. Marsh et al. (2018) When and how does labour lead to love? The ontogeny and mechanisms of the IKEA effect, Cognitiondoi.org