心理学ホント

【逆効果】怒りはサンドバッグで発散するほど燃え上がる。600人の実験が示した意外な結果

【逆効果】怒りはサンドバッグで発散するほど燃え上がる。600人の実験が示した意外な結果

読む前に予想してみよう!

怒りはクッションを殴るなどして発散すると、おさまりやすい

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生
規模
約600人
研究の種類
ランダム化比較実験
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「怒りは吐き出せばスッキリ」は逆だった。相手を思い浮かべてサンドバッグを殴った人は、何もしなかった人より怒りも攻撃性も高かった。効くのは「クールダウン」。

ひとことで言うとイライラは「なぐって出す」より「しずめて消す」ほうがうまくいく!

もくじ
  1. 侮辱されたあと、サンドバッグを殴ってもらった
  2. 「発散すればスッキリ」と信じるほど危ない
  3. 154研究の結論は「クールダウン一択」
  4. まとめ

ムカッとしたとき、「枕を殴ればスッキリする」「カラオケで叫べば忘れる」と思っていませんか?

最近は、お皿やテレビをわざと壊せる「レイジルーム(怒り部屋)」なんてサービスまであります。怒りはためこむと爆発するから、こまめにガス抜きしよう——いかにも正しそうな考え方です。

ところが心理学の実験は、まったく逆の答えを出しました。怒りは発散するほど、むしろ燃え上がるかもしれないのです。

01侮辱されたあと、サンドバッグを殴ってもらった

アメリカの社会心理学者ブラッド・ブッシュマンは、2002年にこんな実験を発表しました。

つまり、相手を思い浮かべながら殴るのは「怒りを捨てる作業」ではなく、怒りのリハーサルになっていたのです。

02「発散すればスッキリ」と信じるほど危ない

ブッシュマンらは1999年にも、さらに皮肉な結果を報告しています。

「殴って発散するとスッキリする」という記事を事前に読ませた人ほど、実際にサンドバッグを殴りたがり、その後の攻撃性も高かったのです。

「発散は良いこと」という思い込みそのものが、怒りの火に油を注ぐ。考えてみれば、怒りながら殴ったり叫んだりすると心臓はドキドキ、筋肉はカチカチ。体は「戦闘モード」のままです。

「発散」は、怒りの炎をあおぐうちわになりがち
「発散」は、怒りの炎をあおぐうちわになりがち

03154研究の結論は「クールダウン一択」

では、何が効くのでしょう。2024年、ブッシュマンらは怒りの対処法を調べた154の研究(参加者のべ1万人以上)をまとめて分析しました。

結果はくっきり分かれました。深呼吸・瞑想・ヨガ・ゆっくりした呼吸など、体の興奮を下げる活動は、怒りや攻撃性をしっかり減らしました。一方、サンドバッグ打ちやジョギングなど、興奮を上げる活動は、平均すると効果がほぼゼロだったのです。

ここで大事なのは、運動そのものが悪いわけではないこと。ふだんの運動は心身の健康にとても役立ちます。ただ、怒っている最中の「対処法」としては、興奮を下げるほうが確実ということです。

04まとめ

怒りは、吐き出せば消える「ガス」ではありません。何度も思い返すほど育つ「火」です。

イラッとしたら、殴る・叫ぶより、まず深呼吸。それだけで、あとで後悔する言葉や行動をぐっと減らせます。

なお、怒りが強すぎて日常生活や人間関係に支障が出ているときは、ひとりで抱えず、専門家に相談してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people believe that letting anger out, for example by hitting a pillow, makes them feel better. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many people believe that letting anger out, for example by hitting a pillow, makes them feel better. In 2002, psychologist Brad Bushman tested this idea with about 600 students. After receiving harsh comments on their essays, some students hit a punching bag while looking at a photo of the person who insulted them. Others hit it as exercise, and a third group sat quietly.

The first group felt the angriest and later acted the most aggressively in a game. The quiet group was the least aggressive. In 2024, an analysis of 154 studies found that activities that lower physical arousal, such as slow breathing and meditation, clearly reduced anger, while activities that raise arousal had almost no effect on average.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの人は、たとえば枕を殴るなどして怒りを外に出すと気分がよくなると信じています。2002年、心理学者ブラッド・ブッシュマンは約600人の学生を対象にこの考えを検証しました。作文に辛辣なコメントを受けた後、一部の学生は自分を侮辱した人の写真を見ながらサンドバッグを殴りました。ほかの学生は運動としてサンドバッグを殴り、3つ目のグループは静かに座っていました。

最初のグループがいちばん強い怒りを感じ、その後のゲームでいちばん攻撃的にふるまいました。静かにしていたグループがいちばん攻撃性が低かったのです。2024年、154の研究を分析した結果、ゆっくりした呼吸や瞑想など体の興奮を下げる活動は怒りをはっきり減らした一方、興奮を上げる活動は平均するとほとんど効果がないことが分かりました。

4択リーディングクイズ

Q1. How were the students made angry in the 2002 study?

Q2. What did the 2024 analysis find?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • ventC1
    動詞(感情を)吐き出す・発散するShe vented her anger on a pillow. 名詞では「通気口」。vent one's anger on ~「~に怒りをぶつける」の形で使う。
  • catharsisC1
    名詞カタルシス・感情の浄化Many people believe in catharsis, but the data say otherwise. ギリシャ語で「浄化」。アリストテレスが悲劇の効果を説明した語。形容詞は cathartic。
  • ruminationC1
    名詞反すう(同じことをくよくよ考え続けること)Rumination keeps the anger alive. もとは牛などの「反すう」。ruminate on ~「~を思い悩む」。心理学の英文で頻出。
  • arousalC1
    名詞(体や心の)興奮・覚醒の度合いDeep breathing lowers physical arousal. arouse(呼び起こす)の名詞形。arouse interest「興味をかき立てる」も頻出。
  • aggressionB2
    名詞攻撃性・攻撃行動Venting may actually increase aggression. 形容詞 aggressive は「攻撃的な」のほか「積極的な」というプラスの意味もある。
  • provokeB2
    動詞怒らせる・引き起こすThe harsh comments provoked the students. pro-(前へ)+voke(呼ぶ)。provoke a reaction「反応を引き起こす」。形容詞 provocative「挑発的な」。
  • insultB2
    動詞・名詞侮辱する/侮辱He felt insulted by the comment. アクセントは動詞 in-SULT、名詞 IN-sult。名詞・動詞でアクセントが変わる型の代表例。

動画でもっと知る

4コマでわかる

【逆効果】怒りはサンドバッグで発散するほど燃え上がる。600人の実験が示した意外な結果の4コマ漫画
怒ったらサンドバッグを殴ってスッキリ…は心理学的にほぼ逆効果らしい。相手を思い浮かべて殴った人ほど、その後も攻撃的に。154研究をまとめた分析でも、効いたのは深呼吸みたいな「しずめる系」だった。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Bushman (2002) Does venting anger feed or extinguish the flame? Catharsis, rumination, distraction, anger, and aggressive responding, Personality and Social Psychology Bulletindoi.org
  2. Bushman, Baumeister & Stack (1999) Catharsis, aggression, and persuasive influence: Self-fulfilling or self-defeating prophecies?, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  3. Kjærvik & Bushman (2024) A meta-analytic review of anger management activities that increase or decrease arousal: What fuels or douses rage?, Clinical Psychology Reviewdoi.org