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「シャコは人間より色が見える」は誤解だった。色センサー12種類なのに、色の見分けは人間以下

「シャコは人間より色が見える」は誤解だった。色センサー12種類なのに、色の見分けは人間以下

読む前に予想してみよう!

色センサーが12種類あるシャコは、人間よりも細かく色を見分けられる

研究カード(どんな研究?)
対象
口脚類(シャコの仲間)数種
規模
数個体〜十数個体(各研究)
研究の種類
網膜の生理計測・行動実験(色の識別テスト)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

シャコの目には色センサーが12種類もある。でも実験すると、似た色の見分けは人間よりずっと苦手。「別のやり方」で色を使っているらしい。

ひとことで言うとシャコはセンサーが多いのに、似た色を見分けるのはヘタだった!

もくじ
  1. 動物界でも屈指のややこしい目
  2. センサーが多いのに、見分けはヘタだった
  3. では、12種類のセンサーは何のため?
  4. まとめ

人間の目には、色を感じるセンサー(錐体細胞)が3種類あります。赤・緑・青に強いセンサーの組み合わせで、私たちは何百万もの色を見分けています。

ところが、サンゴ礁にすむシャコの仲間には、色のセンサーが12種類もある種がいます。

「じゃあシャコには、人間には想像もできない色の世界が見えているはず!」。ネットでよく見かけるこの話、実は研究でひっくり返されています。

01動物界でも屈指のややこしい目

シャコの目は、動物の中でもとびきり複雑です。

1989年、トーマス・クローニンさんとジャスティン・マーシャルさんは『Nature』で、シャコの網膜に少なくとも10種類の色の受容細胞があることを報告しました。その後の研究で、紫外線から赤までをカバーする12種類の色センサーを持つ種がいることがわかっています。1999年の『Nature』の論文では、紫外線を感じる細胞にも何種類もあることが示されました。

それだけではありません。2008年の『Current Biology』(Chiou ら)では、シャコが光の振動の向き、つまり偏光を見分け、しかも円偏光というらせん状に回る光まで見分けていることが報告されました。円偏光を見分ける動物は、とても珍しい存在です。

目の真ん中の帯に、たくさんの種類の色センサーが並んでいます。
目の真ん中の帯に、たくさんの種類の色センサーが並んでいます。

02センサーが多いのに、見分けはヘタだった

ふつうに考えると、センサーが多いほど細かく色を見分けられそうです。そこで、オーストラリア・クイーンズランド大学のハンネ・トーエンさんたちは、シャコに直接「テスト」をしました。

12種類もセンサーがあるのに、見分けの細かさでは人間の方が上。予想とは正反対の結果でした。

03では、12種類のセンサーは何のため?

研究チームは、シャコが人間とまったく違うやり方で色を使っているのではないかと考えました。

人間の脳は、複数のセンサーの反応を比べ合わせて色を計算します。これは細かい見分けに強い方式です。

一方シャコは、目を動かして景色を「スキャン」し、どのセンサーが反応したかというパターンで、色をすばやく認識しているのかもしれません。たとえるなら、絵の具を混ぜて微妙な色を比べるのではなく、「12色の色えんぴつのどれに近いか」で即答するようなイメージです。

サンゴ礁は、獲物も敵も仲間も、目まぐるしく動き回る場所。「細かく比べる」より「すばやく判断する」ほうが役に立つのかもしれません。

04まとめ

シャコの目は「人間の上位互換」ではなく、まったく別の設計思想の目でした。

道具が多ければ強いとは限らない。どう使うかで、見える世界はがらりと変わります。「センサーが多いからすごい」という単純な話より、ずっと奥が深いと思いませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHumans see color with three types of cone cells, but some mantis shrimp have as many as twelve types of… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Humans see color with three types of cone cells, but some mantis shrimp have as many as twelve types of color receptors, covering light from ultraviolet to red. For years, many people believed that these animals must see a world of colors we cannot imagine.

In 2014, Hanne Thoen and her team at the University of Queensland tested this belief. They trained mantis shrimp to choose a certain color to get food, and then showed them colors that were slightly different. The shrimp could only tell colors apart when their wavelengths differed by about 12 to 25 nanometers, while humans can usually notice differences of 1 to 4 nanometers. The researchers suggest that mantis shrimp may recognize colors quickly by pattern instead of comparing them carefully.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

人間は3種類の錐体細胞で色を見ますが、シャコの中には紫外線から赤までの光をカバーする、12種類もの色の受容細胞を持つものがいます。長年、多くの人はこの動物が私たちには想像もできない色の世界を見ているに違いないと信じてきました。

2014年、クイーンズランド大学のハンネ・トーエンさんのチームがこの通説を検証しました。彼らはシャコがエサをもらうために特定の色を選ぶよう訓練し、その後、少しだけ違う色を見せました。シャコが色を見分けられたのは波長が約12〜25ナノメートル違うときだけでしたが、人間はふつう1〜4ナノメートルの違いに気づけます。研究者たちは、シャコは色を注意深く比べるのではなく、パターンですばやく認識しているのかもしれないと考えています。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Thoen's team want to find out?

Q2. Which statement is true according to the passage?

Q3. What can we infer from the study?

重要単語

  • photoreceptorC1
    名詞光受容細胞Humans have three types of color photoreceptors. photo(光)+receptor(受け取るもの)。receive の名詞形 receptor とセットで覚える。
  • wavelengthB2
    名詞波長Red light has a longer wavelength than blue light. wave(波)+length(長さ)。比喩で be on the same wavelength「気が合う」とも言う。
  • discriminateC1
    動詞見分ける、識別するThe shrimp could not discriminate between similar colors. discriminate between A and B で「AとBを見分ける」。discriminate against ~ は「~を差別する」なので前置詞に注意。
  • polarizedC1
    形容詞偏光したSome animals can see polarized light. pole(極)が語源。polarized sunglasses は「偏光サングラス」。社会が「二極化した」の意味でも入試に出る。
  • misconceptionB2
    名詞誤解It is a common misconception that more receptors mean better vision. mis-(誤って)+conception(考え)。a common misconception「よくある誤解」が定番の形。
  • hypothesisB2
    名詞仮説The scanning model is still a hypothesis. 複数形は hypotheses。test a hypothesis「仮説を検証する」は研究紹介の頻出表現。

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4コマでわかる

「シャコは人間より色が見える」は誤解だった。色センサー12種類なのに、色の見分けは人間以下の4コマ漫画
シャコは色センサーが12種類(人間は3種類)だから「人間には想像できない色が見えている」…と思われてきたけど、実験したら似た色の見分けは人間よりずっとヘタだったらしい。数が多い=よく見える、ではなかった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Cronin & Marshall (1989) A retina with at least ten spectral types of photoreceptors in a mantis shrimp, Naturedoi.org
  2. Marshall & Oberwinkler (1999) The colourful world of the mantis shrimp, Naturedoi.org
  3. Chiou et al. (2008) Circular Polarization Vision in a Stomatopod Crustacean, Current Biologydoi.org
  4. Thoen et al. (2014) A Different Form of Color Vision in Mantis Shrimp, Sciencedoi.org