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時速80kmで海に突っ込んでも首が折れない。カツオドリの仲間の“人間には真似できない”ダイブ

時速80kmで海に突っ込んでも首が折れない。カツオドリの仲間の“人間には真似できない”ダイブ

読む前に予想してみよう!

カツオドリの仲間は、海に飛び込む直前まで翼を広げたままにしている

研究カード(どんな研究?)
対象
シロカツオドリ・カツオドリ・オーストラリアシロカツオドリ
規模
映像解析・死んで見つかった1羽と頭骨標本・生きた鳥の眼の測定と水中映像(各研究)
研究の種類
映像解析・模型を使った物理実験・眼の光学測定
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

カツオドリの仲間は最高で秒速24mで海に飛び込む。細い首が折れないのは、くちばしの形と首の筋肉のおかげ。翼をたたむタイミングや、水中で見るための目の調節も研究されている。

ひとことで言うとカツオドリはものすごい速さで海に飛びこんでも、首をケガしないしくみがある!

もくじ
  1. 秒速24m、細い首で水面に突っ込む
  2. 翼をたたむタイミングは「残り時間」で決まる?
  3. 水に入った瞬間、目のピントを切りかえる
  4. まとめ

高い空から、翼をたたんで一直線に海へ。ドボン!と水しぶきが上がった数秒後、くちばしに魚をくわえて浮かんでくる。

これが、カツオドリやシロカツオドリの仲間の狩りです。英語ではブービーやガネットと呼ばれます。

人間が同じ勢いで水に飛び込んだら、大ケガをしかねません。なぜ彼らは平気なのでしょうか。

01秒速24m、細い首で水面に突っ込む

2016年、アメリカ・バージニア工科大学のチーム(Chang ら)は、この「ダイブ」を物理の目で調べ、『PNAS』に発表しました。

カツオドリの仲間は、最高で秒速24m(時速86km)ほどで水面に突っ込むことがあります。しかも、くちばしの先から水に入るので、最初に衝撃を受けるのは頭、その次は細長い首です。首はまっすぐな棒を上から押したときのように、ぐにゃりと折れ曲がる危険があります。

研究チームは同じ考え方を、足から飛び込む人間にもあてはめました。鳥の首は計算上、秒速80m前後まで耐えられる一方、訓練を積んだ人間(スタントダイバー)は秒速24m前後で首をケガする危険があると見積もっています。

翼をたたむタイミングが遅すぎても早すぎてもダメ。
翼をたたむタイミングが遅すぎても早すぎてもダメ。

02翼をたたむタイミングは「残り時間」で決まる?

翼を広げたまま水に入ったら、翼を痛めてしまいます。でも早くたたみすぎると、空中で狙いがずれてしまう。

1981年、イギリス・エディンバラ大学のデイヴィッド・リーさんたちは、シロカツオドリのダイブ映像を分析し、『Nature』に発表しました。鳥は、水面までの距離や速さを別々に計算しているのではなく、水面の見え方が広がっていく速さから「ぶつかるまでの残り時間」を直接読み取り、それをもとに翼をたたんでいるのではないか、という説です。

この「残り時間」を表す量はタウ(τ)と呼ばれ、人間がボールをキャッチしたり、車がブレーキをかけたりするときの研究にも広く使われるようになりました。小さな海鳥の観察が、知覚心理学の有名な理論につながったのです。

03水に入った瞬間、目のピントを切りかえる

もう一つの難題は目です。人間が水中で目を開けるとぼやけるのは、角膜で光を曲げる力が水の中ではほとんど失われるからです。

2012年、ニュージーランドのチーム(Machovsky-Capuska ら)は、オーストラリアシロカツオドリの目を調べました。すると、頭が水に入った直後に目のピントが調節され、45ジオプター以上も失われる屈折力を補っていることがわかりました。水中の映像では、魚を目で追いかけて捕まえていたと考えられる場面が、最も捕獲率が高かったのです。

04まとめ

カツオドリの仲間のダイブは、形・筋肉・タイミング・目という4つの面から研究されてきた、よくできた技でした。

「海に飛び込む鳥」という一言の裏に、物理学と知覚の研究がぎっしり詰まっている。人間はまねせず、映像で楽しむのが正解です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerGannets and boobies hunt by plunging into the sea, sometimes at speeds of up to 24 meters per second. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Gannets and boobies hunt by plunging into the sea, sometimes at speeds of up to 24 meters per second. Because they enter the water beak first, their long, thin necks could easily bend and break. In 2016, a team at Virginia Tech studied this problem using a model made of a cone, which stood for the beak, attached to a flexible rod, which stood for the neck.

They found that neck length, neck muscles, and diving speed all affect the risk of injury. The birds' sharp beaks reduce the impact, and their strong muscles keep the neck stiff. The researchers also estimated that a person diving feet first would risk neck injury at about 24 meters per second.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

シロカツオドリやカツオドリは、ときに秒速24メートルもの速さで海に飛び込んで狩りをします。くちばしから水に入るので、長く細い首は簡単に曲がって折れてしまいそうです。2016年、バージニア工科大学のチームは、くちばしに見立てた円すいを、首に見立てた曲がる棒につないだ模型を使って、この問題を研究しました。

その結果、首の長さ、首の筋肉、飛び込む速さのすべてが、ケガの危険性に影響することがわかりました。鳥のとがったくちばしは衝撃を減らし、強い筋肉は首をしっかり固めます。研究者たちはまた、足から飛び込む人間は秒速24メートルほどで首をケガする危険があると見積もりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the 2016 team use to study the dive?

Q2. Which factor is NOT mentioned as affecting the risk of injury?

Q3. What did the researchers estimate about people diving feet first?

重要単語

  • plungeB2
    動詞・名詞飛び込む、突っ込むGannets plunge into the sea to catch fish. plunge into ~「~に飛び込む」。株価が plunge(急落する)の意味もニュースで頻出。
  • impactB1
    名詞衝撃、影響The beak shape reduces the impact force. 物理的な「衝撃」と、have an impact on ~「~に影響を与える」の2つの意味を押さえる。
  • buckleC1
    動詞(圧力で)曲がる、折れ曲がるA thin neck could buckle on impact. 名詞ではベルトの「留め金」。buckle under pressure「重圧に屈する」という比喩もある。
  • streamlinedC1
    形容詞流線形のThe bird becomes streamlined before entering the water. stream(流れ)+line。比喩で「(手続きなどを)合理化した」の意味もある。
  • accommodateB2
    動詞(目のピントを)調節する、収容するTheir eyes accommodate quickly underwater. ふつうは「収容する・適応させる」。c と m が2つずつのつづりに注意。名詞 accommodation は「宿泊施設」。
  • elasticB2
    形容詞弾性のある、伸び縮みするThe neck was modeled as an elastic rod. ゴムのように元に戻る性質。elastic band は「輪ゴム」。名詞 elasticity「弾力性」は経済でも使う。

動画でもっと知る

シロカツオドリやカツオドリは、最高で時速80km以上で海に飛び込んで魚をとるらしい。細長い首が折れない理由を物理で調べた研究まである。同じ計算を足から飛び込む人間に当てはめると、秒速24mほどで首が危なくなるらしい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Lee & Reddish (1981) Plummeting gannets: a paradigm of ecological optics, Naturedoi.org
  2. Machovsky-Capuska et al. (2012) Visual accommodation and active pursuit of prey underwater in a plunge-diving bird: the Australasian gannet, Proceedings of the Royal Society Bdoi.org
  3. Chang et al. (2016) How seabirds plunge-dive without injuries, PNASdoi.org