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魚は痛みを感じるのか? マスの頭に「痛みセンサー」が見つかってから続く大論争

魚は痛みを感じるのか? マスの頭に「痛みセンサー」が見つかってから続く大論争

読む前に予想してみよう!

魚には痛みにつながる刺激を感じとる神経(侵害受容器)がないことがわかっている

研究カード(どんな研究?)
対象
ニジマスなど
規模
実験室での神経記録と行動観察(小〜中規模)
研究の種類
電気生理・行動実験と総説・反論論文
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

魚にも痛みの刺激を感じとる神経(侵害受容器)があり、傷つくと行動が変わることは確か。ただ人のように「痛い」と感じているかは今も意見が分かれる。

ひとことで言うと魚にも「いたい!」をキャッチするセンサーがある。感じ方は研究中!

もくじ
  1. マスの頭に「痛みセンサー」があった
  2. 痛み止めで、行動の変化が和らぐ
  3. 「いや、魚には痛みの“感覚”はない」という反論
  4. まとめ

釣り上げた魚が、針を外すときにピチピチはねる。あれは「痛い!」と言っているのでしょうか。それとも、ただの反射なのでしょうか。

「魚は痛みを感じるか」は、じつは生物学者のあいだで20年以上続いている大論争です。どちらの言い分にも、ちゃんとした根拠があります。

01マスの頭に「痛みセンサー」があった

「侵害受容器」とは、体を傷つけるような刺激を感じとるセンサーのこと。人では、このセンサーからの信号が脳に届いて「痛い」と感じます。

研究チームは、行動や体の反応の変化が長く続いたことから、魚が不快な状態にある可能性を示唆しました。

02痛み止めで、行動の変化が和らぐ

その後の研究も積み重なりました。2015年に同じスネドン(Sneddon)さんがまとめた総説によると、この10年ほどで、

  • 硬骨魚(ニジマスなど)の侵害受容器は、ほ乳類のものとよく似ている
  • 痛みにつながる刺激を受けると、体の働きや行動が変わり、それが鎮痛薬で和らぐ
  • 痛みを受けているときは、こわいものから逃げる行動よりも、痛みへの反応が優先されることもある

といった報告が出ているそうです。

痛み止めで行動の変化が和らぐ、という報告がある
痛み止めで行動の変化が和らぐ、という報告がある

03「いや、魚には痛みの“感覚”はない」という反論

いっぽうで、強く反対する研究者もいます。

オーストラリアの神経科学者キー(Key)さん(2016年)は、人が痛みを「感じる」ためには、大脳皮質の特定の部分とその複雑な配線が必要だと主張しました。魚の脳には同じ構造がないので、「魚は痛みを感じるための脳の仕組みをもっていない」というのです。

また、ローズ(Rose)さんら(2012年)は、魚の行動の変化は、意識をともなわない反応でも説明できるかもしれないと指摘しています。

つまり論争のポイントは、「センサーがあるか」ではなく、「その信号を“つらい”と感じる心があるか」。ここは脳の外からは直接測れないので、決着がつきにくいのです。

04まとめ

魚に「痛みのセンサー」があり、傷つくと長く行動が変わることは、かなり確かです。でも、それを人間と同じように「痛い」と感じているかは、まだ答えが出ていません。

答えが出るまで待つのか、それとも「もしかしたら」と考えて扱い方を変えるのか。魚の痛みの問題は、科学だけでなく、私たちの生き物との向き合い方も問いかけています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhether fish feel pain has been debated by biologists for more than 20 years. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Whether fish feel pain has been debated by biologists for more than 20 years. In 2003, a British team found nerves called nociceptors in the heads of rainbow trout. These nerves reacted to strong pressure, heat above 40°C and acid, much like those of mammals and birds. When acid was injected into the trout's lips, the fish moved their gills faster, took longer to start eating, and showed unusual behavior for a long time.

Later studies reported that painkillers reduced such changes. However, some scientists argue that fish lack the brain structures humans need to feel pain. Fish clearly have the sensors. The dispute is whether they consciously feel something unpleasant.

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

魚が痛みを感じるかどうかは、生物学者のあいだで20年以上議論されてきました。2003年、イギリスのチームはニジマスの頭部に侵害受容器と呼ばれる神経を見つけました。これらの神経は、強い圧力、40℃を超える熱、酸に反応し、ほ乳類や鳥のものとよく似ていました。マスの唇に酸を注射すると、魚はエラを速く動かし、えさを食べ始めるまでに時間がかかり、長いあいだふだんと違う行動を見せました。

その後の研究では、鎮痛薬でこうした変化が和らぐことが報告されました。しかし、魚には人が痛みを感じるのに必要な脳の構造がないと主張する科学者もいます。魚がセンサーを持っていることははっきりしています。争われているのは、何か不快なものを意識的に感じているかどうかです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What happened when acid was injected into the trout's lips?

Q3. What is the main point of disagreement among scientists?

重要単語

  • painA2
    名詞痛みPain is more than a simple reflex. take pains「骨を折る、苦労する」は複数形で意味が変わる重要表現。painful(痛い)、painkiller(鎮痛薬)。
  • nociceptorC1
    名詞侵害受容器(痛みの刺激を感じる神経)Trout have nociceptors on their heads. ラテン語 nocere(害する)+receptor(受容器)。innocent(無害な→無罪の)と同語源。
  • reflexB2
    名詞反射A reflex happens without thinking. reflect(反射する)と同語源。複数形 reflexes は「反射神経」の意味でも使う。
  • welfareB2
    名詞福祉、幸福Animal welfare includes the welfare of fish. well(よく)+fare(やっていく)。animal welfare「動物福祉」は入試頻出テーマ。
  • debateB1
    名詞・動詞論争/議論するScientists still debate whether fish feel pain. 動詞は他動詞で debate the issue(about は不要)。argue(言い争う)との違いも押さえる。
  • subjectiveB2
    形容詞主観的なPain is a subjective experience. 反対語 objective(客観的な)とペアで出る。subject(主体)→ subjective。
  • consciouslyB2
    副詞意識的にDo fish consciously feel pain? conscious(意識している)+-ly。be conscious of ~「~を意識している」、consciousness(意識)も頻出。

動画でもっと知る

ニジマスの頭部から、熱・圧力・酸に反応する「痛みセンサー」の神経が見つかった。刺激を受けた魚は長いあいだ行動が変わった。それでも「魚に痛みの感覚はない」と言う研究者もいて論争は続く。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Sneddon, Braithwaite & Gentle (2003) Do fishes have nociceptors? Evidence for the evolution of a vertebrate sensory system, Proceedings of the Royal Society Bdoi.org
  2. Sneddon (2015) Pain in aquatic animals, Journal of Experimental Biologydoi.org
  3. Key (2016) Why fish do not feel pain, Animal Sentiencedoi.org
  4. Rose et al. (2012) Can fish really feel pain?, Fish and Fisheriesdoi.org