「足が速い子は頭もいい」は本当? 122万人の調査で知能テストと関係があったのは"筋力"ではなく"持久力"だった

読む前に予想してみよう!
運動が得意な子は勉強もできる、という傾向は科学的に証明されている
体力と成績に相関を示す研究は多いが、運動で成績が上がるかを確かめた実験の結果はまだ一致していない。
- 対象
- スウェーデンの18歳男性ほか
- 規模
- 約122万人+介入研究58件
- 研究の種類
- コホート研究・系統的レビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
スウェーデンの18歳男性122万人では、持久力が高い人ほど知能テストの点が高かった。一方、筋力とは関係なし。運動で学力が上がるかの実験結果は割れている。
ひとことで言うと関係があったのは"スタミナ"。足の速さは測っていないよ。でも理由はまだナゾ!
小学校のころ、クラスで一番足が速い子が、なぜかテストの点もよかった――。
そんな記憶がある人もいれば、「いや、運動ができる子と勉強ができる子は別だったよ」という人もいるでしょう。「足が速いと頭がいい」は、ネットでもときどき議論になるテーマです。
研究を調べてみると、答えは少しひねりのきいたものでした。体力と頭の良さには関係がありそう。でも、カギは"速さ"ではなかったのです。
01122万人のデータが示した「持久力」との関係
この研究のすごいところは、きょうだいや双子のペアも大量に含まれていたことです。遺伝子がまったく同じ一卵性双生児のペアの中でも、持久力の高いほうが点数が高い傾向がありました。研究チームは、この関係の多くは遺伝よりも一人ひとりの環境や経験で説明できると分析しています。
さらに、15歳から18歳にかけて持久力が上がった人ほど、18歳での点数が高い傾向も見られました。
02「足が速い」と「持久力がある」は別物
ここで注意したいのは、この研究で測ったのは長く動き続ける力(持久力)だということです。50m走のような短距離の速さとは別の能力です。

筋力とは関係がなかったことを考えると、「足が速い=頭がいい」と言い切るのは無理があります。少なくともこの研究からは、「持久力と知能テストの点に関係がある」としか言えません。
03運動すれば成績は上がる? 実験はまだ"割れている"
では、運動をすれば頭が良くなるのでしょうか。ここからが本当に知りたいところです。
- 2016年、米国スポーツ医学会の見解をまとめたドネリーらの系統的レビューでは、体力や運動が子どもの認知機能(注意や記憶など)に良い影響を与えることを支持する研究が多い一方、成績そのものへの効果は、対照群を置いた実験では結果がまちまちでした
- 2019年、オランダのシンらは、運動の授業を増やすなどの介入研究58件を調べ、質の高い11件に絞って評価しました。結論は「全体の成績への効果は、まだはっきりしない。ただし算数・数学については良い効果の強い証拠がある」というものでした
04なぜ「足が速い=頭がいい」と感じるのか
観察研究で「関係がある」と出ても、それは相関です。原因と結果が逆のこともあれば、別の要因が両方に影響していることもあります。
- よく眠り、規則正しく生活している子は、体力も集中力も高いかもしれない
- 運動クラブで身につく「続ける習慣」が、勉強にも生きているのかもしれない
- 目立つ子の印象が強く残り、「運動も勉強もできる子」ばかり思い出してしまう
こうした要因が重なって、「足が速い子は頭もいい」という印象が生まれたのかもしれません。
05まとめ
- 122万人の調査では、持久力が高い人ほど知能テストの点が高い傾向
- 筋力とは関係なく、「足の速さ」そのものを測った研究ではない
- 運動で成績が上がるかは、実験ではまだ決着していない(数学は有望)
判定は「ビミョー」。「足が速い子は頭がいい」とは言えないけれど、体を動かすことと頭の働きには、何かしらのつながりがありそう。その正体は、今も研究が続いています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAre children who run fast also smart?
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Are fast runners also smart? Scientists in Sweden studied about 1.2 million young men. Men with more stamina, who could exercise for a long time, got higher scores on intelligence tests.
But strong muscles did not matter. Also, this study did not measure running speed. Exercise may help the brain, but we still do not know if it makes school grades better.
62 words ・ CEFR A2
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足が速い人は頭もいいのでしょうか。スウェーデンの科学者たちは、約120万人の若い男性を調べました。長い時間運動を続けられる、スタミナのある男性ほど、知能テストの点が高くなりました。
しかし、筋肉の強さは関係ありませんでした。また、この研究は走る速さを測っていません。運動は脳の役に立つかもしれませんが、学校の成績を良くするかどうかは、まだわかっていません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
体力(スタミナ)と知能テストの点の関係を調べた研究の話なので B。
Q2. What did NOT matter for the test scores?
But strong muscles did not matter. とあるので C。
Q3. In this passage, "stamina" means ...
直後の who could exercise for a long time が言い換えになっているので A。
Are children who run fast also smart? A Swedish study used data on about 1.22 million men who took fitness and intelligence tests at age 18. Their fitness was measured on an exercise bike.
Men with better heart and lung fitness tended to get higher test scores, even after their family's economic background was considered. Muscle strength had no link with the scores. So what mattered was endurance, the ability to keep going for a long time.
But this kind of study only shows a link. It does not show that exercise makes people smarter. When a 2019 review looked at 58 studies, the effect of exercise on school grades in general was hard to judge. For math, though, there was strong evidence of a positive effect.
127 words ・ CEFR B1
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足の速い子は頭もいいのでしょうか。スウェーデンのある研究は、18歳で体力テストと知能テストを受けた約122万人の男性のデータを使いました。体力はエアロバイクで測られました。
心臓と肺の持久力が高い男性ほど、家庭の経済的な背景を考慮しても、テストの点が高い傾向がありました。筋力は点数と関係がありませんでした。つまり、大事だったのは持久力、すなわち長い時間動き続ける力だったのです。
しかし、この種の研究がわかるのは関係があるということだけです。運動で人が賢くなるということまではわかりません。2019年のレビューが58件の研究を調べたところ、運動が学校の成績全体にどう影響するかは判断がつきませんでした。ただし数学については、良い効果を示す強い証拠がありました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
持久力とテストの点に関係がある一方、運動で学校の成績全体が上がるかは判断しにくいと述べているので B。
Q2. According to the 2019 review, in which subject was there strong evidence of a positive effect?
For math, though, there was strong evidence of a positive effect とあるので D。
Q3. Why does the writer say "this kind of study only shows a link"?
直後に It does not show that exercise makes people smarter とあり、関係があっても運動が点数を上げた原因とは言えないという注意なので A。
At the age of 18, Swedish conscripts had to pedal a stationary bicycle and sit an intelligence test. In 2009, researchers at the University of Gothenburg analyzed the results for about 1.22 million men. Those with better cardiovascular fitness scored higher on intelligence, even after socioeconomic factors were taken into account.
Muscle strength showed no link. Because the data included many sibling and twin pairs, the team could look more closely. Even within pairs of identical twins, who share the same genes, the fitter twin tended to score higher.
So the link seems to come mainly from individual environment, not genes. Men whose fitness improved between 15 and 18 also tended to do better on the test at 18. The study has clear gaps, though. It measured endurance, so it says nothing about sprinting speed, and every participant was male. It was also observational.
A daily habit such as sleep could raise both fitness and test scores without one causing the other. Trials that actually add exercise to students' lives have produced mixed results. A 2019 review of 58 such studies could not settle whether exercise improves school performance in general, but it found strong evidence of benefits in mathematics.
200 words ・ CEFR B2
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スウェーデンの徴兵対象者は、18歳になると固定式の自転車をこぎ、知能テストを受けなければなりませんでした。2009年、ヨーテボリ大学の研究者たちは、約122万人の男性の結果を分析しました。心肺の持久力が高い人ほど、社会経済的な要因を考慮した後でも、知能テストの点が高くなっていました。
筋力には関連が見られませんでした。データにはきょうだいや双子のペアが多く含まれていたので、研究チームはさらにくわしく調べることができました。同じ遺伝子を持つ一卵性双生児のペアの中でさえ、体力の高いほうが点数が高い傾向があったのです。
つまり、この関係は主に遺伝ではなく、個人の環境から生じているようです。15歳から18歳の間に体力が向上した男性は、18歳でのテストの成績も良い傾向がありました。ただし、この研究には明らかな穴があります。測ったのは持久力なので短距離の速さについては何もわからず、参加者は全員男性でした。また、これは観察研究です。
睡眠のような日々の習慣が、どちらかが原因になることなく、体力とテストの点の両方を高めている可能性もあります。実際に生徒の生活に運動を取り入れる試験の結果はまちまちです。そうした研究58件を調べた2019年のレビューは、運動が学業成績全体を高めるかどうかについては決着をつけられませんでしたが、数学については効果を示す強い証拠を見つけました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
持久力と知能の関連を示す研究と、観察研究であることなどの限界、介入研究の結果を論じているので C。
Q2. What did the comparison within identical twin pairs suggest?
So the link seems to come mainly from individual environment, not genes とあるので D。
Q3. Which limitation of the Swedish study does the author mention?
It was also observational. のあとに、睡眠のような習慣が両方を高めているかもしれないと述べているので C。対象は男性のみ、測ったのは持久力。
重要単語
- fitnessB1名詞体力Cardiovascular fitness was measured on a bicycle.
fit(健康な・合う)+-ness。physical fitness で「身体的な体力」。 - cognitiveC1形容詞認知のCognitive tests measure memory and reasoning.
名詞 cognition。cognitive function(認知機能)は心理学・医学の長文で頻出。 - correlationC1名詞相関Correlation does not prove causation.
Correlation does not imply causation.(相関は因果を意味しない)は入試の超定番フレーズ。 - enduranceB2名詞持久力Long-distance runners need endurance.
動詞 endure(耐える)。stamina とほぼ同じ意味で、より硬い語。 - achievementB1名詞達成、成績Exercise may affect academic achievement.
academic achievement で「学業成績」。動詞 achieve。 - observationalC1形容詞観察によるAn observational study cannot prove cause and effect.
observational study(観察研究)は experiment(実験)との対比で出る。
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「足が速い子は頭もいい」説。スウェーデンの18歳男性122万人のデータでは、知能テストの点と関係していたのは"持久力"で、筋力とは関係なしだったらしい。運動で成績が上がるかは、実験ではまだ決着していない。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Åberg et al. (2009) Cardiovascular fitness is associated with cognition in young adulthood, PNASdoi.org
- Donnelly et al. (2016) Physical activity, fitness, cognitive function, and academic achievement in children: a systematic review, Medicine & Science in Sports & Exercisedoi.org
- Singh et al. (2019) Effects of physical activity interventions on cognitive and academic performance in children and adolescents, British Journal of Sports Medicinedoi.org
- Hillman, Erickson & Kramer (2008) Be smart, exercise your heart: exercise effects on brain and cognition, Nature Reviews Neurosciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













