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「名前を呼ぶと好かれる」説を科学で調べたら、半分だけホントだった

「名前を呼ぶと好かれる」説を科学で調べたら、半分だけホントだった

読む前に予想してみよう!

騒がしい場所でも、自分の名前が呼ばれると気づきやすい

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生・成人
規模
数十人規模(複数の実験)
研究の種類
実験室実験・脳画像研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

自分の名前は、騒がしい中でも耳に飛び込む特別な言葉。脳も特別に反応する。ただし「名前を呼べば好感度アップ」を直接示す証拠はまだ限られている。

ひとことで言うと自分の名前は、脳にとって特別な言葉!でも呼びすぎ注意。

もくじ
  1. ホントの部分:名前は「脳のアラーム」
  2. もう一つのホント:名前の文字まで好き?
  3. まだ分からない部分:「好感度が上がる」の証拠
  4. 名前を「覚えている」ことが伝わる効果
  5. まとめ

「人を動かすには、相手の名前を呼びなさい」

ビジネス書や会話術の本で、よく見かけるアドバイスです。確かに、名前で呼ばれると悪い気はしませんよね。

でも、これって科学的に本当なのでしょうか? 調べてみると、「ホントの部分」と「まだ分からない部分」がはっきり分かれていました。

01ホントの部分:名前は「脳のアラーム」

まず確かなのは、自分の名前は脳にとって特別な言葉だということです。

騒がしいパーティー会場でも、どこかで自分の名前が呼ばれると、なぜかピンと気づく。これはカクテルパーティー効果と呼ばれています。

注意を向けていないはずの音でも、自分の名前だけは脳の「見張り役」が拾い上げているようなのです。

その後の脳画像研究(Carmody と Lewis、2006年など)でも、自分の名前を聞いたときには、他の人の名前を聞いたときとは違う脳の反応が見られることが報告されています。

02もう一つのホント:名前の文字まで好き?

さらに面白いのがネーム・レター効果です。

ベルギーの心理学者ヨゼフ・ニュッティンは、人は自分の名前に含まれるアルファベットを、他の文字より好む傾向があることを報告しました。自分に関係するものは、なんとなく好ましく感じてしまう。人間って、ちょっとかわいいですね。

自分の名前は、ぼんやりしていても脳が拾い上げる「特別な音」
自分の名前は、ぼんやりしていても脳が拾い上げる「特別な音」

03まだ分からない部分:「好感度が上がる」の証拠

では、「会話で名前を呼ぶと好かれる」はどうでしょう?

じつはここが弱いところ。名前を呼ぶことで好感度が上がるかを、きちんと比べた実験はそれほど多くないのです。

  • 名前を呼ばれると注意が向くのは確か
  • 自分に関係するものを好む傾向もある
  • でも、そこから「名前を呼べば好かれる」までは一段ジャンプがある

数少ない実験の一つが、1972年にアメリカで行われた研究(Kleinke ら)です。録音した就職面接で、応募者が面接官の名前を何度も呼ぶと、聞いた人たちはその応募者を「わざとらしい」「誠実でない」と低く評価しました。同じ研究の別の実験でも、名前を使う側と呼ばれる側とで評価が分かれました。

一方で同じ研究では、面接官から名前で呼ばれた男性は、その面接官をより好ましく感じていたという結果も出ています。つまり、名前を呼ぶ効果は「なぜ呼んでいるか」の受け取られ方しだい。好かれようとする下心が見えると、逆効果になりやすいのです。

会話のたびに名前を連呼されると「営業トークっぽい」「なれなれしい」と感じる人がいるのも、このためでしょう。日本では、名字か下の名前か、呼び捨てかなど、呼び方の距離感も大切です。

04名前を「覚えている」ことが伝わる効果

それでも、名前を呼ぶことには意味があります。

名前を覚えていることは、「あなたのことをちゃんと認識しています」というサインになるからです。久しぶりに会った人に名前で呼ばれると、うれしいですよね。そのうれしさの正体は、名前の音そのものより、覚えてもらえていたという事実なのかもしれません。

逆に、名前を間違えられたときのショックを思い出してみてください。ちょっとした言い間違いでも、「自分はその程度の存在なのか」と感じてしまうことがあります。名前は、その人のアイデンティティ(自分らしさ)と強く結びついた言葉。だからこそ、正しく覚えて、大切に呼ぶことに意味があるのです。

05まとめ

自分の名前は、脳がいつも見張っている特別な言葉。これは科学的にホントです。

でも「名前を呼べば好かれる」は、半分だけホント。大事なのは名前のテクニックより、相手をちゃんと覚えて、大切に思っている気持ちの方なのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany books say that calling people by their name makes them like you. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many books say that calling people by their name makes them like you. Science supports only part of this idea. It is true that our own name is special to the brain.

In 1959, British psychologist Neville Moray played different messages into each ear and asked people to focus on one side. About a third of them still noticed their name in the ignored ear. Later brain imaging studies also found special responses to one's own name.

However, there is little direct evidence that using names increases liking. In a 1972 study, job applicants who used the interviewer's name many times were rated as insincere. What matters more may be showing that you remember the person.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの本には、人を名前で呼ぶと好かれると書いてあります。科学はこの考えの一部だけを支持しています。自分の名前が脳にとって特別だというのは本当です。

1959年、イギリスの心理学者ネヴィル・モレイは、左右の耳にちがうメッセージを流し、片方に集中するよう人々に求めました。それでも、約3分の1の人が、無視している方の耳で自分の名前に気づきました。その後の脳画像研究でも、自分の名前に対する特別な反応が見つかりました。

しかし、名前を使うと好感度が上がるという直接の証拠はほとんどありません。1972年の研究では、面接官の名前を何度も使った就職の応募者は、誠実でないと評価されました。より大切なのは、相手のことを覚えていると示すことなのかもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Moray's 1959 experiment show?

Q2. How were job applicants who used the interviewer's name many times rated?

Q3. What is the writer's main point?

重要単語

  • attentionA2
    名詞注意Her own name caught her attention. pay attention to ~「~に注意を払う」、catch / attract one's attention「注意を引く」。
  • dichotic listeningC1
    名詞(句)両耳分離聴(左右に別の音を流す方法)Dichotic listening tests send different sounds to each ear. dicho-(2つに分ける)。注意の研究で使われる専門用語。
  • phenomenonB2
    名詞現象The cocktail party phenomenon is well known. 複数形は phenomena。単複の形が入試の文法・語法問題で狙われる。
  • insincereC1
    形容詞不誠実なOverusing names can sound insincere. in-(否定)+sincere(誠実な)。Sincerely yours,(手紙の結び)の sincere。
  • identityB2
    名詞自分らしさ、身元A name is part of our identity. identity card「身分証明書」。動詞 identify「特定する」。
  • nuancedC1
    形容詞微妙な差異を含んだ、一筋縄ではないThe truth is more nuanced than the popular claim. 名詞 nuance(ニュアンス)から。単純に白黒つけられないことを表す、評論文の頻出語。
  • approvalB2
    名詞承認、好意的な評価He used her name to gain her approval. 動詞 approve of ~「~をよいと認める」。of を伴う点が頻出。
うるさいパーティーでも、自分の名前だけは耳に飛び込んでくることがある「カクテルパーティー効果」。脳は自分の名前に特別に反応するらしい。でも「名前を呼べば好かれる」は、実は科学的な証拠がそこまで強くない話だった。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Moray (1959) Attention in dichotic listening: Affective cues and the influence of instructions, Quarterly Journal of Experimental Psychologydoi.org
  2. Wood & Cowan (1995) The cocktail party phenomenon revisited: How frequent are attention shifts to one's name in an irrelevant auditory channel?, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognitiondoi.org
  3. Carmody & Lewis (2006) Brain activation when hearing one's own and others' names, Brain Researchdoi.org
  4. Nuttin (1985) Narcissism beyond Gestalt and awareness: The name letter effect, European Journal of Social Psychologydoi.org
  5. Kleinke, Staneski & Weaver (1972) Evaluation of a person who uses another's name in ingratiating and noningratiating situations, Journal of Experimental Social Psychologydoi.org