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1万円もらう喜び<1万円なくす悲しみ。人は「損」を約2倍重く感じるらしい

1万円もらう喜び<1万円なくす悲しみ。人は「損」を約2倍重く感じるらしい

読む前に予想してみよう!

「損失回避」の強さは、どんな金額でも常に2倍ぴったりだ

研究カード(どんな研究?)
対象
実験参加者・市場データ
規模
150論文・607推定値のメタ分析ほか
研究の種類
実験研究とメタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

同じ金額でも「得」より「損」の方が心に重く響く。多くの研究で約2倍とされるが、小さな金額では弱まるという反論もある。

ひとことで言うと「もらう」うれしさより「なくす」くやしさの方が大きい!

もくじ
  1. コイン投げの賭け、あなたは乗る?
  2. 「損」の重さを数式にした2人
  3. マグカップを手放したくない理由
  4. ただし「2倍の法則」には反論も
  5. 日常にひそむ「損したくない」
  6. まとめ

道で1万円を拾ったら、うれしい。

でも、財布から1万円を落としたら……そのショックは、拾ったうれしさよりずっと大きくないですか?

同じ1万円なのに、心の中の「重さ」が違う。行動経済学では、これを損失回避と呼びます。

01コイン投げの賭け、あなたは乗る?

こんな賭けを想像してください。

コインを投げて、表なら1万円もらえる。裏なら1万円払う。

確率は五分五分なので、損も得もないはず。でも多くの人は「やめておく」と答えます。

では、表なら2万円もらえるなら? ここでやっと「乗ってもいいかな」と思う人が増えてきます。つまり、1万円の損を埋めるには、約2万円の得が必要という感覚なのです。

02「損」の重さを数式にした2人

この心のクセを理論にまとめたのが、心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーです。

1979年に発表されたプロスペクト理論は、「人は金額そのものではなく、基準点から見て得か損かで判断する」と考えました。そして、損の側のグラフは得の側よりも急になる——つまり損の方が強く感じられる、と表現したのです。

カーネマンはこの研究などで、のちにノーベル経済学賞を受けています。

03マグカップを手放したくない理由

損失回避は、持ち物を手放すときにも顔を出します。

1990年の有名な実験では、大学のロゴ入りマグカップをもらった人ともらわなかった人に分けて値段をつけてもらいました。すると、持ち主が「売るならこの値段」とつけた額は、買う側が「この値段なら買う」とつけた額の2倍以上になったのです。

一度「自分のもの」になると、手放すことが「損」に感じられる。これを保有効果といいます。

「自分のもの」になった瞬間、マグカップの価値が上がって見える
「自分のもの」になった瞬間、マグカップの価値が上がって見える

04ただし「2倍の法則」には反論も

ここで大事なツッコミがあります。

2018年、マーケティング研究者のデビッド・ガルらは、「損失回避は思われているほど普遍的ではない」とする論文を発表しました。実際、

  • 少額の損得では、損失回避がほとんど見られない実験もある
  • 質問の出し方や順番によって、数値が大きく変わる

といった報告が出ています。一方で、大規模なデータで損失回避を支持する研究も多く、「存在はするが、強さは状況しだい」というのが現時点の落ち着きどころです。

05日常にひそむ「損したくない」

  • 「今だけ」「残りわずか」と言われると焦る
  • 投資やギャンブルで負けを取り返そうとして深追いしてしまう
  • 使っていないサブスクを「もったいない」と解約できない

特に負けを取り返そうとする心理は大きな損につながりやすいので要注意です。

06まとめ

人間の心は、得よりも損に敏感にできています。それは危険を避けて生き延びるには役立ったのかもしれません。

でも現代の買い物や判断では、そのクセがかえって損を招くことも。「損したくない!」と思った瞬間こそ、深呼吸のタイミングです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWould you accept a coin-flip bet in which you win 10,000 yen for heads and lose 10,000 yen for tails? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Would you accept a coin-flip bet in which you win 10,000 yen for heads and lose 10,000 yen for tails? Most people would say no, even though the chances are equal. Many only agree when the possible win is about twice the possible loss. Psychologists Daniel Kahneman and Amos Tversky explained this with prospect theory in 1979. They argued that people judge outcomes as gains or losses from a reference point, and that losses feel stronger.

Some researchers argue that this loss aversion is weaker when the amounts of money are small. A 1990 experiment showed a related effect with mugs. People who were given a university mug asked for more than twice as much to sell it as others were willing to pay.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

表なら1万円もらえて、裏なら1万円払うコイン投げの賭けを受けますか。確率は同じなのに、ほとんどの人は断るでしょう。多くの人は、得られるかもしれない額が失うかもしれない額の約2倍になって初めて賭けに応じます。心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーは、1979年にプロスペクト理論でこれを説明しました。彼らは、人は結果を基準点から見た得か損かで判断し、損の方が強く感じられると主張しました。

一部の研究者は、金額が小さいときにはこの損失回避は弱まると主張しています。1990年の実験では、マグカップを使って関連する効果が示されました。大学のマグカップをもらった人は、それを売るのに、ほかの人が払ってもよいと考える額の2倍以上を求めたのです。

4択リーディングクイズ

Q1. Why do most people refuse the coin-flip bet?

Q2. What did the 1990 mug experiment show?

Q3. Which statement best reflects what some researchers argue?

重要単語

  • loss aversionC1
    名詞(句)損失回避Loss aversion makes people avoid fair bets. aversion は「嫌悪」。have an aversion to ~「~が大嫌いだ」。行動経済学の最重要語。
  • endowment effectC1
    名詞(句)保有効果The endowment effect makes our own things seem more valuable. endow は「授ける」。be endowed with ~「(才能など)に恵まれている」は入試頻出。
  • gambleB2
    名詞・動詞賭け(をする)Most people refused the coin-flip gamble. gamble on ~「~に賭ける」。take a gamble「一か八かやってみる」。
  • reference pointC1
    名詞(句)基準点Gains and losses depend on the reference point. refer to ~(参照する)の名詞 reference。「何と比べるか」で損得が決まる、という発想。
  • coefficientC1
    名詞係数The loss aversion coefficient is about two. co-(共に)+efficient(働く)。数学・統計の文脈で使う。correlation coefficient「相関係数」。
  • asymmetryC1
    名詞非対称性There is an asymmetry between gains and losses. a-(否定)+symmetry(対称)。形容詞 asymmetric。
  • magnitudeC1
    名詞大きさ、規模The magnitude of the effect depends on the situation. 地震の「マグニチュード」と同じ語。magnify(拡大する)と同語源。
1万円拾ったうれしさより、1万円落としたショックの方がでかい。行動経済学では「損失回避」と呼ばれ、多くの研究で損は得の約2倍重く感じるとされてる。ただ、少額だと弱まるというツッコミも。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Kahneman & Tversky (1979) Prospect theory: An analysis of decision under risk, Econometricadoi.org
  2. Tversky & Kahneman (1992) Advances in prospect theory: Cumulative representation of uncertainty, Journal of Risk and Uncertaintydoi.org
  3. Kahneman, Knetsch & Thaler (1990) Experimental tests of the endowment effect and the Coase theorem, Journal of Political Economydoi.org
  4. Brown, Imai, Vieider & Camerer (2024) Meta-analysis of empirical estimates of loss aversion, Journal of Economic Literaturedoi.org
  5. Gal & Rucker (2018) The loss of loss aversion: Will it loom larger than its gain?, Journal of Consumer Psychologydoi.org