語学・英語学習ホント

中学英語の「to」「of」「and」が聞き取れない。英語学習者がつまずく“小さな単語”の研究

中学英語の「to」「of」「and」が聞き取れない。英語学習者がつまずく“小さな単語”の研究

読む前に予想してみよう!

英語学習者は、よく知っている短い単語(of や to)のほうが、内容語より聞き取りやすい

研究カード(どんな研究?)
対象
中級の英語学習者(様々な母語)
規模
人数は原論文を参照
研究の種類
聞き取り実験(文の途中で止めて書き取り)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

英語学習者は、難しい単語より「to」「of」「a」のような短い機能語を聞き落としやすい。母語や英語レベルが違っても同じ傾向が出た。

ひとことで言うと英語で聞きのがしやすいのは、むずかしい単語より「to」や「a」だった!

もくじ
  1. 「知ってる単語」でも聞こえていない
  2. 英語の「小さな単語」は姿を変える
  3. ネイティブは「強い音節」を目印にしている
  4. まとめ

英語の音声を聞いて、スクリプトを見たときに「え、こんな簡単な文だったの!?」とショックを受けたことはありませんか?

実は、英語学習者が聞き落としているのは難しい単語ではないことが多いのです。犯人は to、of、a、and、can のような、中学1年で習う小さな単語でした。

01「知ってる単語」でも聞こえていない

機能語は使用頻度が高く、学習者は「よく知っている」はず。それなのに聞き取れないのは、知識の問題というより音の問題だということです。

02英語の「小さな単語」は姿を変える

自然な英語では、機能語は弱く・短く・あいまいに発音されます。これを弱形(じゃくけい)と呼びます。

  • to → 「トゥー」ではなく「タ」に近い音
  • and → 「アンド」ではなく「ン」だけ
  • can → 「キャン」ではなく「クン」
  • of → 「オブ」ではなく「ア」に近い音

さらに前後の単語とくっついて(連結)、「a cup of tea」は「アカパティー」のように聞こえます。教科書で見た文字の形と、耳に入る音の形が大きく違うのです。

文字で見ると4語、耳には1つのかたまり
文字で見ると4語、耳には1つのかたまり

03ネイティブは「強い音節」を目印にしている

では英語話者はどうやって聞き取っているのでしょうか。

カトラーとノリスの1988年の実験によると、英語話者は強く読まれる音節を「単語の始まり」の目印にして、音の流れを区切っています。英語の内容語の多くは強い音節で始まるため、これは効率的な戦略です。

逆に言えば、弱い機能語は「目印にならない」部分として、文脈から補われていることになります。学習者も内容語に頼って意味を組み立てていると考えられます。ただし、機能語を落とすと時制や否定、数などの重要な情報を取りこぼす危険があります。

例えば「I can go」と「I can't go」。弱形の「can(クン)」と強く言う「can't(キャーント)」を区別できないと、意味が正反対になってしまいます。

04まとめ

リスニングの大きな落とし穴の一つは、よく知っているはずの小さな単語でした。原因は知識というより、弱形・連結による音の変身にあると考えられます。

今日のスクリプトで、to や of がどんな音になっているかを1つだけ確かめてみてください。「知ってる単語が聞こえない」謎が、少しずつ解けていきます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany learners believe that they fail to understand spoken English because of difficult vocabulary. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many learners believe that they fail to understand spoken English because of difficult vocabulary. However, a study by the listening researcher Field suggests otherwise. In 2008, he played recordings to intermediate learners with different first languages, stopped the audio from time to time, and asked them to write down the last few words.

The learners recognized function words such as prepositions and articles significantly less accurately than content words such as nouns and verbs. This was true regardless of their first language or level. The reason is probably not a lack of knowledge but the sound itself. In connected speech, function words are pronounced in weak, short forms and often join the words around them. As a result, "a cup of tea" may sound like one long word.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの学習者は、話された英語が理解できないのは難しい語彙のせいだと信じています。しかし、リスニング研究者フィールドの研究は別の見方を示しています。2008年、彼は母語の異なる中級学習者に録音を聞かせ、ときどき音声を止めて、直前の数語を書き取らせました。

学習者は、前置詞や冠詞などの機能語を、名詞や動詞などの内容語よりも有意に不正確にしか認識できませんでした。これは母語や英語レベルに関係なく当てはまりました。その理由は知識不足ではなく、おそらく音そのものにあります。つながった話し言葉では、機能語は弱く短い形で発音され、周りの単語とくっつくことが多いのです。その結果、「a cup of tea」は1つの長い単語のように聞こえることがあります。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Field ask the learners to do in his study?

Q2. Which statement is true according to the passage?

Q3. What can we infer from the example "a cup of tea"?

重要単語

  • function wordB2
    名詞(句)機能語(前置詞・冠詞・助動詞など)Function words are often weak in natural speech. 文法的な「つなぎ」の役割をもつ語。to, of, a, the, can, and など。数は少ないが出現頻度は圧倒的に高い。
  • content wordB2
    名詞(句)内容語(名詞・動詞・形容詞など)Content words carry most of the meaning. 意味の中心を担う語で、ふつう強く読まれる。function word と対で覚える。
  • weak formC1
    名詞(句)弱形(弱く発音された形)The weak form of "to" sounds like "tuh." 反対は strong form(強形)。辞書の発音記号欄に2つ載っている語は弱形をもつ。can の弱形 /kən/、and の弱形 /ən/ /n/ など。
  • connected speechC1
    名詞(句)つながった話し言葉Words blend together in connected speech. 単語を1つずつ区切らない自然な発話。連結(linking)・脱落・同化などの音変化が起きる。
  • segmentationC1
    名詞(音声の)区切り、分節Segmentation is hard when words run together. segment「区切り・部分」から。リスニング研究では「音の流れを単語に切り分けること」を指す。
  • prepositionB1
    名詞前置詞"Of" and "to" are common prepositions. pre-(前に)+ position(置く)=名詞の前に置く語。article(冠詞)、auxiliary(助動詞)も文法用語としてセットで。
  • transcriptB2
    名詞スクリプト、文字起こしCheck the transcript after you listen. trans-(移す)+ script(書く)。音声を文字に移したもの。日本で言う「スクリプト」は英語では transcript が自然。
英語のリスニングで聞き落とすのは、難しい単語じゃなくて「to」「of」「a」みたいな中学レベルの小さな単語だったらしい。しかも母語や英語レベルが違ってもほぼ同じ傾向。知ってる単語でも聞こえにくい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Field (2008) Bricks or mortar: Which parts of the input does a second language listener rely on? TESOL Quarterlydoi.org
  2. Field (2003) Promoting perception: lexical segmentation in L2 listening. ELT Journaldoi.org
  3. Cutler & Norris (1988) The role of strong syllables in segmentation for lexical access. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performancedoi.org