海の底の地図は月や火星より粗かった。くわしく測れたのは、まだ3割足らず

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世界で一番深い海の底「チャレンジャー海淵」には、これまで月面を歩いた人の数より多くの人が行っている
月面を歩いたのは12人。チャレンジャー海淵には2019年以降の潜航で訪れた人が増え、今では月面歩行者の数を上回っている。
- 対象
- 世界の海底地形データ
- 規模
- 各国の船の測深データの集約(GEBCO)
- 研究の種類
- 国際共同の観測データ集約
- 確かさ
- ★★★★☆
月や火星は宇宙から全体の地形が測られているが、海底は電波も光も届かず、船の音波でくわしく測れたのは3割足らず。「地図の細かさ」では海底のほうが遅れている。
ひとことで言うと地球の海の底は、月よりもまだ地図ができていないところが多い!
「宇宙は最後のフロンティア」――よく聞く言葉ですよね。でも、地球にもまだまだ謎に満ちたフロンティアがあります。それが海の底です。
じつは、地球の海底の地形をくわしく測れているのは、まだ全体の3割足らず。一方、月や火星は、宇宙を回る探査機によって、星全体の地形がひととおり測られています。
つまり、「地図の細かさ」という点では、自分たちの星の海の底のほうが、月や火星より遅れているのです。なぜ、そんなことになっているのでしょう?
01海は地球の約7割、しかも深い
地球の表面の約7割は海です。そして海の平均の深さは、およそ3700m。富士山(3776m)の高さとほぼ同じ深さが、地球の表面の大部分に広がっているのです。
一番深い場所は、太平洋のマリアナ海溝にあるチャレンジャー海淵で、深さは約1万900m(測定によって数十mの差があります)。エベレスト(8849m)をひっくり返して沈めても、まだ2km以上も余るほどです。
02月は「宇宙から見える」、海底は「見えない」
月や火星の地図が作れたのは、探査機が上空を回りながら、カメラやレーザーで表面を測ることができたからです。月や火星には、地表をおおう海がありません。たとえば月は、NASAの探査機ルナー・リコネサンス・オービターのレーザー高度計などで、全体の地形が100m前後の細かさで測られています。
ところが地球の海底は、何千mもの水の下にあります。光は深い海の底まで届きませんし、電波も水の中ではすぐに弱まってしまいます。宇宙から直接、海底を「見る」ことはできないのです。

03頼りは「音」――船で少しずつ測る
そこで使われるのが音です。
船の底から海底に向けて音を出し、はね返ってくるまでの時間を測れば、海の深さがわかります。イルカやコウモリが音で周りを知るのと同じ原理です(これをソナーといいます)。
今は、扇のように広い範囲に一度に音を出して測る装置が使われていますが、それでも船が通ったところしか測れません。広い海を、船で一筋ずつ塗りつぶしていくような、とても根気のいる作業なのです。
もちろん、人工衛星を使って、海面のわずかな高さの違いから海底のおおまかな地形を推定する方法もあります。海底に大きな山があると、その重力で海水がわずかに引き寄せられ、海面が数m盛り上がるからです。でもそれでわかるのは、数km以上の大まかな凸凹。くわしい地図には、やはり船による測量が必要です。
つまり「海底の地図がない」のではなく、「粗い地図しかない」というのが正確な言い方です。
04深海には、まだ見ぬ世界が広がる
地図ができていないということは、まだ誰も知らない山や谷、生き物がたくさんあるかもしれない、ということでもあります。
たとえば1977年、アメリカの潜水艇「アルビン」が、太平洋のガラパゴス諸島近くの深さ約2500mの海底で、熱い水が噴き出す熱水噴出孔と、そのまわりに集まる生き物たちを発見しました(1979年に Science で報告)。太陽の光が届かない場所で、化学物質からエネルギーを得る微生物を出発点にした生態系が成り立っていたのです。この発見は、生命の誕生の場所を考えるうえでも大きなヒントになりました。
05まとめ
- 月や火星は、探査機によって星全体の地形が測られている
- 地球の海底は、光も電波も届かないため、船の音波で少しずつ測るしかない
- くわしく測れた海底は、まだ全体の3割足らず
- 深海には、熱水噴出孔のような驚きの世界がまだ眠っている
「未知の世界」は、はるか宇宙のかなただけではありません。私たちの足もとの星の、青い海のその下にも、まだ誰も見たことのない景色が広がっているのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAbout 70 percent of Earth's surface is covered by ocean, with an average depth of about 3,700 meters.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
We have maps of the whole Moon and Mars, but we do not have a detailed map of our own ocean floor. Light and radio waves cannot reach the deep sea floor.
So ships send sound down and listen for the echo. This takes a long time. Only a little more than a quarter of the ocean floor has been measured in detail. Scientists want to finish the map by 2030.
71 words ・ CEFR A2
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私たちは月や火星全体の地図を持っていますが、自分たちの星の海底のくわしい地図は持っていません。光や電波は深い海の底まで届かないのです。
そこで船は、音を下に送り、そのはね返りを聞きます。これには長い時間がかかります。くわしく測られた海底は、まだ4分の1を少し超える程度です。科学者たちは、2030年までに地図を完成させたいと考えています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
月や火星と比べて、海底のくわしい地図がまだできていない理由を説明しているので B。
Q2. How do ships measure the ocean floor?
ships send sound down and listen for the echo とあるので C。光や電波は届かない。
Q3. In this passage, "echo" means ...
echo は「こだま・反響」、つまりはね返ってくる音なので D。
About 70 percent of Earth's surface is covered by ocean, with an average depth of about 3,700 meters. The Moon and Mars have been mapped from orbit using cameras and lasers, but light and radio waves cannot pass through thousands of meters of water.
Instead, ships use sonar, sending sound to the seafloor and timing its echo, so they can only map the areas they sail over. Satellites can estimate rough shapes from tiny bumps in the sea surface, but only at a scale of several kilometers. When the Seabed 2030 project began in 2017, just 6 percent of the seafloor had been mapped in detail. By 2024, the figure had passed one quarter.
114 words ・ CEFR B1
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地球の表面の約70%は海におおわれ、その平均の深さは約3700mです。月や火星はカメラやレーザーを使って軌道上から地図が作られてきましたが、光や電波は何千mもの水を通り抜けることができません。
代わりに船はソナーを使い、海底に音を送ってそのはね返りまでの時間を測ります。そのため、船が通った場所しか地図にできないのです。人工衛星は海面のわずかな盛り上がりからおおまかな形を推定できますが、それは数km単位の大きさにとどまります。2017年にシーベッド2030プロジェクトが始まったとき、くわしく地図化された海底はわずか6%でした。2024年までに、その割合は4分の1を超えました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
光や電波が水を通らないため、海底は月より地図にしにくいという内容なので A。
Q2. What percentage of the seafloor had been mapped in detail when Seabed 2030 began?
When the Seabed 2030 project began in 2017, just 6 percent ... とあるので D。70%は海の面積の割合。
Q3. Why do satellite estimates alone not give a detailed seafloor map?
only at a scale of several kilometers とあり、細かい地形はわからないので C。
Orbiting spacecraft have measured the entire surface of the Moon with lasers, at a resolution of around 100 meters. Earth's seafloor is much harder to reach. It lies beneath an average of 3,700 meters of water, and water blocks both light and radio waves.
Satellites can still sketch the largest features. A seamount pulls water toward itself and raises the sea surface above it by a few meters, and instruments in orbit can detect that bulge.
But the method only reveals structures several kilometers across. For detail, ships must send sonar pulses down along their tracks. When the Nippon Foundation and GEBCO launched Seabed 2030 in 2017, only about 6 percent of the seafloor had been mapped to modern standards. By pooling data worldwide, the project now reports 28.7 percent. That number is generous.
A grid cell counts as mapped if it contains at least one depth measurement, and in deep water the resolution can be as coarse as several hundred meters. Some military and commercial surveys have never been released, either. The unmapped parts can hold surprises. In 1977 the submersible Alvin found hydrothermal vents near the Galápagos, surrounded by ecosystems that run on chemical energy instead of sunlight.
200 words ・ CEFR B2
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周回する探査機は、レーザーを使って月の表面全体を約100mの解像度で測ってきました。地球の海底に手を届かせるのは、それよりずっと難しいことです。海底は平均3700mの水の下にあり、水は光も電波もさえぎってしまうからです。
それでも人工衛星は、いちばん大きな地形ならおおまかに描くことができます。海山は周りの海水を引き寄せ、その真上の海面を数m盛り上げます。軌道上の観測機器はその盛り上がりをとらえられるのです。
しかし、この方法でわかるのは数km規模の構造だけです。くわしく知るには、船が航路に沿ってソナーの音波を海底に送るしかありません。2017年に日本財団とGEBCOがシーベッド2030を始めたとき、現代の基準で地図化された海底は約6%にすぎませんでした。世界中のデータを集めることで、このプロジェクトは現在28.7%と報告しています。ただし、この数字は甘めです。
格子の1マスに水深の測定値が少なくとも1つあれば「地図化済み」と数えられ、深い海ではその解像度が数百mという粗さになることもあるからです。また、軍事や商業の調査の中には、一度も公開されていないものもあります。地図のない場所には、思わぬものが隠れていることがあります。1977年、潜水艇アルビンはガラパゴス諸島の近くで熱水噴出孔を発見しました。その周りには、太陽の光ではなく化学エネルギーで成り立つ生態系が広がっていたのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
衛星では数km規模の地形しかわからず、船による測量も28.7%にとどまっている、という内容なので B。
Q2. According to the passage, what does "mapped" mean in the Seabed 2030 figure?
A grid cell counts as mapped if it contains at least one depth measurement とあるので A。
Q3. What does the Alvin discovery illustrate?
The unmapped parts can hold surprises. の例として、太陽の光が届かない深海の生態系の発見を挙げているので D。
重要単語
- seafloorB2名詞海底Most of the seafloor has never been seen by humans.
sea+floor(床)。ocean floor、seabed とも言う。 - sonarC1名詞ソナー(音波探知機)Ships use sonar to measure the depth of the sea.
SOund NAvigation and Ranging の頭文字。radar(レーダー)も同じく頭字語。 - bathymetryC1名詞海底地形(水深)の測量Bathymetry shows the shape of the ocean floor.
bathy(深い)+metry(測ること)。geometry(幾何学)と同じ -metry。 - resolutionB2名詞解像度、細かさThe map has a resolution of about one hundred meters.
多義語。「決意」「(問題の)解決」「決議」の意味も入試頻出。New Year's resolution は「新年の抱負」。 - hydrothermal ventC1名詞(句)熱水噴出孔Strange animals live around hydrothermal vents.
hydro(水)+thermal(熱の)。vent は「通気口・はけ口」。 - submersibleC1名詞(小型の)潜水艇The submersible dived to the bottom of the trench.
submerge(水中に沈む)+-ible(できる)。submarine(潜水艦)より小型の調査艇を指すことが多い。
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- Our Mission(Seabed 2030)seabed2030.org
- How much of the ocean has been explored?(NOAA Ocean Exploration)oceanexplorer.noaa.gov
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月や火星は全体の地形図があるのに、地球の海の底をくわしく測れたのはまだ3割足らずらしい。足もとの星のほうが、宇宙より未知だった。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













