4億年前の1年は約400日。地球の1日は、いまも少しずつ長くなっている

読む前に予想してみよう!
「うるう秒」は、地球の1日が毎年1秒ずつ長くなっているから入れられてきた
1日の伸びはずっと小さい。わずかなズレが何年分も積み重なった結果を、ときどき1秒で調整してきた。
- 対象
- 地球の自転と1日の長さ
- 規模
- 紀元前720年〜1600年の日食・月食記録と1600〜2015年の星食記録+化石・レーザー測距
- 研究の種類
- 観測・記録の解析
- 確かさ
- ★★★★☆
月が起こす潮の満ち引きがブレーキになり、地球の自転はゆっくり遅くなっている。過去2700年の平均で、1日は100年に約1.8ミリ秒ずつ長くなってきた。
ひとことで言うと月のせいで、地球の回るスピードがちょっとずつおそくなっているよ!
1日は24時間。これは当たり前すぎて、変わるなんて考えたこともないかもしれません。
でも実は、地球の1日はほんの少しずつ長くなっているのです。そのスピードは、100年でおよそ1.8ミリ秒(1000分の1.8秒)。人間が気づけるような変化ではありません。
ところが、これが何億年も積み重なると話は別。約4億年前には、1年がおよそ400日もあったと考えられているのです。
01犯人は「月」と「潮の満ち引き」
地球の回転(自転)にブレーキをかけているのは、月です。
月の引力は、地球の海の水を引っぱって、海面をわずかに盛り上げます。これが潮の満ち引きです。
地球は自転しているので、海の盛り上がり(潮のふくらみ)は月の真下から少し先へ引きずられた位置にできます。月の引力はこのずれたふくらみを引き戻すように働き、さらに浅い海では海水と海底の間でこすれ合い(摩擦)が起きてエネルギーが熱になります。自転車の車輪に、ブレーキパッドが軽く当たり続けているような状態です。このわずかなブレーキが、地球の回転を少しずつ遅くしているのです。

02そのぶん、月は遠ざかっている
面白いのは、地球が回転のいきおいを失うと、そのぶん月が少しずつ遠ざかることです。地球と月を合わせた「回転のいきおい(角運動量)」は全体として保たれるので、地球が失ったぶんを、月が公転の軌道を広げる形で受け取っているのです。
アポロ計画の宇宙飛行士たちは、月面にレーザー光を反射する鏡を置いてきました。地球からその鏡にレーザーを当て、光が戻ってくるまでの時間を測ることで、月までの距離をセンチ単位で測れるのです。
その結果、月は1年に約3.8cmずつ地球から離れていることがわかっています。ちょうど、人間のつめが伸びるくらいのスピードです。この測定は、50年以上たった今も続けられています。
032700年分の「空の記録」が証拠に
じつは、潮汐のブレーキ(主に月)だけで計算すると、伸びは100年あたり約2.3ミリ秒になるはずです。実際の値が少し小さいのは、氷河期に分厚い氷で押しつぶされていた大地が今もゆっくり盛り上がり(氷河性地殻均衡)、地球の形が変わることで、回転を少し速める方向に働いているためと考えられています。フィギュアスケーターが腕を縮めると回転が速くなるのと同じ理屈です。
日食が見える場所は、地球の回転の速さによって変わります。地球の回転が昔からまったく同じだったと仮定して計算すると、古代の日食が見えるはずの場所は、記録に残る実際の場所とずれてしまうのです。古代の人たちの何気ない記録が、地球の回転を測るものさしになったわけです。
04サンゴの化石が教えてくれた「1年400日」
もっと昔のことは、生き物が教えてくれます。
1963年、アメリカの古生物学者ジョン・ウェルズは、科学誌 Nature に、約4億年前(デボン紀)のサンゴの化石を調べた結果を発表しました。
サンゴには、木の年輪のように、1日ごとの細かい成長のしまと、1年ごとの大きなしまができます。1年分のしまの中にある1日分のしまを数えたところ、およそ400本あったのです。
1年の長さ(地球が太陽をひと回りする時間)は、ほとんど変わりません。つまり、1年に400日あったということは、1日は今より短く、約22時間ほどだったことになります。ウェルズのこの結果は、潮汐の理論から予想される値とおおむね合っていました。
05うるう秒と「最近の逆走」
じつは地球の自転は、月のブレーキだけで決まるわけではありません。地球内部の液体の核の動きや、海や大気の流れでも、毎年わずかに速くなったり遅くなったりします。2020年代には、地球の自転が少し速くなったことも話題になりました。
さらに2024年には、地球温暖化で極地の氷がとけ、海水が赤道のほうへ移動することで、1日が長くなる方向に働いているという研究も PNAS に発表されています。2000年以降、その効果は100年あたり約1.3ミリ秒に達しているという見積もりです。同じ年には、温暖化のこの効果が、史上初の「うるう秒を1秒引く」事態を先送りしているという研究も Nature に出ました。
なお、うるう秒そのものは、2022年の国際度量衡総会で2035年までに(実質的に)廃止することが決まっています。
06まとめ
- 月が起こす潮の満ち引きの摩擦で、地球の回転は少しずつ遅くなっている
- 1日は100年で約1.8ミリ秒ずつ長くなってきた(潮汐のブレーキだけなら約2.3ミリ秒)
- そのぶん、月は1年に約3.8cmずつ遠ざかっている
- 約4億年前のサンゴの化石から、1年は約400日だったとわかった
何億年も先の未来には、1日は今よりずっと長くなっているはずです。今日の「24時間」は、地球の長い歴史の中のたまたまの一瞬。そう思うと、1日の大切さもちょっと違って見えてきませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA day on Earth is not always exactly the same length.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Our day is 24 hours long, but it is slowly getting longer. Every 100 years, a day gets about 1.8 milliseconds longer. This change is too small for people to notice.
The Moon is the reason. It pulls on the oceans and makes tides, and the tides work like a brake on the Earth. About 400 million years ago, one year had about 400 days!
65 words ・ CEFR A2
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1日は24時間ですが、少しずつ長くなっています。100年ごとに、1日は約1.8ミリ秒長くなります。この変化は小さすぎて、人は気づくことができません。
原因は月です。月は海を引っぱって潮の満ち引きを起こし、その潮の満ち引きが地球のブレーキのようにはたらくのです。約4億年前には、1年は約400日もありました!
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
地球の1日が少しずつ長くなっている理由が全体のテーマなので B。
Q2. How many days did one year have about 400 million years ago?
About 400 million years ago, one year had about 400 days! とあるので D。
Q3. In this passage, "notice" means ...
notice は「気づく」。変化が小さすぎて人には感じ取れない、という意味なので A。
A day on Earth is not always exactly the same length. It has been getting longer by about 1.8 milliseconds every 100 years. The main cause is the Moon. Its gravity pulls on the oceans and creates tides, and the friction between the moving water and the sea floor slowly brakes Earth's spin.
As Earth slows down, the Moon moves away by about 3.8 centimeters a year, which scientists measure by shining lasers at mirrors left on the Moon by astronauts. Fossil corals tell a similar story. In 1963, a scientist counted daily growth lines within yearly bands in 400-million-year-old corals and found about 400 days in a year.
109 words ・ CEFR B1
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地球の1日は、いつもまったく同じ長さというわけではありません。100年ごとに約1.8ミリ秒ずつ長くなってきました。主な原因は月です。月の引力が海を引っぱって潮の満ち引きを起こし、動く海水と海底との間の摩擦が、地球の回転に少しずつブレーキをかけるのです。地球の回転が遅くなるにつれて、月は1年に約3.8cmずつ遠ざかっています。
科学者たちは、宇宙飛行士が月に残した鏡にレーザーを当てて、これを測っています。サンゴの化石も同じことを物語っています。1963年、ある科学者が4億年前のサンゴの1年ごとのしまの中にある1日ごとの成長線を数えたところ、1年は約400日あったことがわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
月が起こす潮の摩擦で地球の自転が遅くなっていること、その証拠を説明しているので C。
Q2. How do scientists measure how far the Moon moves away?
by shining lasers at mirrors left on the Moon by astronauts とあるので B。
Q3. If a year had about 400 days long ago, what does this suggest?
1年の長さがほぼ同じで日数が多いなら、1日1日は今より短かったことになる。正解は D。
Earth's rotation is gradually slowing, and ancient astronomers unknowingly recorded the evidence. In 2016, British researchers led by Stephenson analyzed records of eclipses from 720 BC to AD 1600, drawn from Babylonian, Chinese, Arab, and European sources, plus later records of the Moon passing in front of stars up to 2015.
By comparing where eclipses were actually seen with where they would have been visible if Earth's spin had never changed, they concluded that the day has lengthened by about 1.8 milliseconds per century. Tidal friction, mainly from the Moon, should produce about 2.3 milliseconds; the shortfall is attributed to land still rising after the last ice age, which changes Earth's shape and slightly speeds its spin.
Meanwhile, the Moon recedes by about 3.8 centimeters a year as angular momentum is transferred to its orbit. Over longer timescales, daily growth lines in 400-million-year-old corals suggest roughly 400 days per year. Other effects complicate things. Movements in the liquid core cause fluctuations over decades, and a 2024 study argued that melting polar ice, by shifting water toward the equator, is now lengthening the day as well. Coral counts also involve some subjective judgment.
192 words ・ CEFR B2
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地球の自転は少しずつ遅くなっており、古代の天文学者たちはそうとは知らずにその証拠を記録していました。2016年、スティーブンソン率いるイギリスの研究者たちは、バビロニア、中国、アラブ、ヨーロッパの資料に残る紀元前720年から1600年までの日食や月食の記録と、1600年から2015年までの、月が星を隠す現象の記録を分析しました。
実際に食が見えた場所と、もし地球の回転がまったく変わらなかったら見えたはずの場所を比べて、彼らは1日が100年あたり約1.8ミリ秒長くなってきたと結論づけました。潮汐摩擦(主に月によるもの)だけなら約2.3ミリ秒になるはずです。その差は、最後の氷河期のあと今も大地が隆起し続けていることによるとされています。
それが地球の形を変え、回転をわずかに速めているのです。一方、角運動量が月の公転軌道へと受け渡されるにつれて、月は1年に約3.8cmずつ遠ざかっています。さらに長い時間スケールでは、4億年前のサンゴの1日ごとの成長線から、1年はおよそ400日だったと考えられます。ほかの要因が話を複雑にしています。液体の核の動きは数十年単位の変動を起こしますし、2024年の研究は、極地の氷がとけて海水が赤道のほうへ移動することで、現在は1日をさらに長くしていると主張しました。サンゴの成長線の数え方にも、ある程度の主観的な判断が入ります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
日食記録やサンゴの証拠から自転の減速を示し、潮汐・氷河期後の隆起・氷の融解などの要因を論じているので A。
Q2. Why is the observed slowing smaller than the tidal effect alone predicts?
the shortfall is attributed to land still rising after the last ice age, which ... slightly speeds its spin とあるので C。
Q3. What does the 2024 study suggest about melting polar ice?
melting polar ice ... is now lengthening the day as well とあり、1日を長くする方向に加わっているので B。
重要単語
- rotationB2名詞回転、自転Earth's rotation is slowing down very gradually.
rotate(回転する)の名詞形。公転は revolution。rotation と revolution の区別は理科系長文で頻出。 - tidal frictionC1名詞(句)潮汐摩擦Tidal friction acts like a brake on our planet.
tide(潮)の形容詞 tidal + friction(摩擦)。friction は「人間関係のあつれき」の意味でも出る。 - eclipseB2名詞食(日食・月食)Ancient people carefully recorded each eclipse.
solar eclipse(日食)、lunar eclipse(月食)。動詞で「~の影を薄くする」の意味もある。 - leap secondC1名詞(句)うるう秒A leap second was added to keep clocks in step with Earth.
leap は「跳ぶ」。leap year(うるう年)も同じ発想。 - recedeC1動詞遠ざかる、後退するThe Moon recedes from Earth by a few centimeters a year.
re-(後ろへ)+cede(行く)。名詞 recession は「景気後退」。receding hairline「後退する生え際」。 - gravityB1名詞重力、引力The Moon's gravity pulls on the oceans.
grave(重い)が語源。gravitational(重力の)。the law of gravity「重力の法則」。
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4億年前のサンゴの化石を調べると、1年が約400日あったらしい。地球の1日は月のブレーキで今も少しずつ長くなってるとか。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Stephenson, Morrison & Hohenkerk (2016) Measurement of the Earth's rotation: 720 BC to AD 2015, Proceedings of the Royal Society Adoi.org
- Wells (1963) Coral Growth and Geochronometry, Naturedoi.org
- Kiani Shahvandi et al. (2024) The increasingly dominant role of climate change on length of day variations, PNASdoi.org
- Agnew (2024) A global timekeeping problem postponed by global warming, Naturedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











