脳と心理ホント

スタンフォード大が実証。座るより「歩く」ほうがアイデアは約6割増えていた

スタンフォード大が実証。座るより「歩く」ほうがアイデアは約6割増えていた

読む前に予想してみよう!

歩きながら考えると、「答えが一つに決まる問題」も解きやすくなる

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生・成人
規模
4実験・のべ176人
研究の種類
実験研究(主に被験者内比較)+メタ分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

歩きながら考えると、座っているときより自由な発想が増えた。室内のランニングマシンで壁を見ながらでも効果があり、歩いた直後もしばらく続いた。

ひとことで言うとアイデアにつまったら、まず歩こう!脳の発想力が上がるかも。

もくじ
  1. 「歩く」と「座る」でアイデアの数を比べた
  2. 壁を見ながらでも効果があった
  3. 歩いたあとも「余韻」が残る
  4. ただし「正解を当てる問題」は別
  5. まとめ

哲学者や作家には、散歩好きがやたらと多い――そんな話を聞いたことはありませんか? 机の前でうんうん唸るより、外を歩いているときにアイデアが降ってくる。

これ、単なる偉人のこだわりではありませんでした。アメリカ・スタンフォード大の研究者が、歩くと発想力が上がることを実験で確かめたのです。

01「歩く」と「座る」でアイデアの数を比べた

この課題で測っているのは拡散的思考。ひとつの正解を探すのではなく、「あれもアリ、これもアリ」と可能性を広げていく力です。ブレインストーミングで必要になる、まさにその力ですね。

02壁を見ながらでも効果があった

「外の景色や新鮮な空気のおかげでは?」と思うかもしれません。研究チームもそれを疑いました。

そこで、室内のランニングマシンで、何もない壁を向いて歩く条件を用意。すると、それでも座っているときより発想がはっきり豊かになったのです。屋外の散歩が特に良い結果を出した課題もありましたが、殺風景な部屋でも効果は十分に出ました。さらに、車いすに乗って屋外を押してもらうだけの条件と比べると、「外の刺激」の効果と「歩くこと」の効果は別々に働いていることも分かりました。

つまり、景色ではなく「歩く」という動きそのものに効果がありそうだ、ということです。

景色がなくても、歩くだけで発想はふくらむ
景色がなくても、歩くだけで発想はふくらむ

03歩いたあとも「余韻」が残る

さらに面白いのが、歩いた直後に座って考えても、しばらくは発想力が高いままだったこと。

会議の前に少し歩いてくるだけでも、効果を持ち越せる可能性があるわけです。

04ただし「正解を当てる問題」は別

万能ではありません。同じ研究では、3つの単語に共通する1つの言葉を探すような、答えが一つに決まる問題(収束的思考)では、歩いて成績が上がった人は23%にとどまり、全体としてはむしろ成績がやや下がりました。

なぜ歩くと発想が広がるのか、詳しい仕組みはまだ分かっていません。体を軽く動かすことで気分や覚醒度が上がる、考えが一か所にとどまりにくくなる、などの説がありますが、決着はついていない段階です。

なお、この研究の最初の実験は「座る→歩く」の順番で同じ人に課題をしてもらう形だったため、2回目のほうが慣れて有利になる可能性がありました。研究チームは2つ目の実験で順番を入れ替えたり「座る→座る」の条件を加えたりして、この点を確かめています。また、28の研究をまとめた2022年のメタ分析でも、体を動かすことはアイデア出しの成績を中程度高めるという結果で、1回だけの運動より、数日〜数週間続ける運動のほうが効果が大きい傾向でした(Sports Medicine - Open, 2022)。

05まとめ

アイデアに詰まったら、机にしがみつくより立ち上がって歩く。それが科学的にも理にかなった作戦でした。

ただし、ひらめいたあとの「まとめる作業」は、座ってじっくり。広げるときは歩く、絞るときは座る。この使い分けが、最強の発想術かもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany writers and thinkers have loved walking, and a Stanford study suggests there is a good reason. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many writers and thinkers have loved walking, and a Stanford study suggests there is a good reason. Researchers Marily Oppezzo and Daniel Schwartz ran four experiments with 176 people in total. Participants were asked to list unusual uses for common objects, such as a button. In the first experiment, they produced about 60 percent more original ideas when walking than when sitting.

Walking on a treadmill while facing a blank wall worked too, so the effect did not depend on fresh air or nice views. The benefit also continued for a while after people sat down again. However, walking did not improve performance on problems with only one correct answer.

110 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの作家や思想家が散歩を好んできましたが、スタンフォード大学の研究は、それには十分な理由があることを示しています。研究者のマリリー・オペッツォとダニエル・シュワルツは、のべ176人で4つの実験を行いました。参加者は、ボタンのような身近な物の意外な使い道を挙げるよう求められました。最初の実験では、座っているときより歩いているときのほうが約6割多く独創的なアイデアを出しました。

何もない壁を向いてランニングマシンの上を歩いても効果があったので、効果は新鮮な空気や美しい景色によるものではありませんでした。その効果は、再び座った後もしばらく続きました。しかし、正解が一つしかない問題では、歩いても成績は上がりませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Which statement is true about walking on a treadmill?

Q3. Based on the passage, which activity would walking probably help most?

重要単語

  • creativityB2
    名詞創造性Walking may boost your creativity. create(創る)→ creative(創造的な)→ creativity。boost creativity「創造性を高める」がよく使われる組み合わせ。
  • treadmillB2
    名詞ランニングマシンShe walked on a treadmill while thinking. tread(踏む)+mill(回転する装置)。「単調な繰り返しの仕事」という比喩の意味もある。
  • divergent thinkingC1
    名詞(句)拡散的思考Divergent thinking helps you find many possible answers. diverge は「分かれて広がる」。di-(離れて)+verge(向かう)。
  • convergent thinkingC1
    名詞(句)収束的思考Convergent thinking is needed to find one right answer. converge は「一点に集まる」。con-(共に)。divergent と対で覚える。
  • residualC1
    形容詞残りの、残存するThere was a residual effect after walking. reside(とどまる)と同語源。名詞 residue は「残留物」。
  • generateB2
    動詞生み出すWalking helped people generate more ideas. generate ideas / electricity / income などと結びつく。gene(生まれる)が語源で、generation(世代)と同じ仲間。

動画でもっと知る

スタンフォード大の実験で、座って考えるより歩きながら考えたほうが、最初の実験でアイデアの数が平均で約6割も増えたらしい。しかも室内で壁を見ながら歩いてもOK。会議、歩きながらやろう。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Oppezzo & Schwartz (2014) Give your ideas some legs: the positive effect of walking on creative thinking, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognitiondoi.org
  2. Colzato et al. (2013) The impact of physical exercise on convergent and divergent thinking, Frontiers in Human Neurosciencedoi.org
  3. Rominger et al. (2022) Acute and chronic physical activity increases creative ideation performance: a systematic review and multilevel meta-analysis, Sports Medicine - Opendoi.org