静かな教室で鳴るおなかの「グ〜」、その正体は腸の“お掃除タイム”だった

読む前に予想してみよう!
「おなかがすいた」と脳に伝えるホルモン・グレリンは、日本の研究チームが発見した
1999年に児島将康さん、寒川賢治さんらが発見し、科学誌『Nature』で発表した。
- 対象
- 空腹の健康な成人/犬
- 規模
- 少人数の生理学実験
- 研究の種類
- 実験研究・レビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
おなかの音は、胃や腸が中のガスや液体を押し流すときの音。空腹時には、腸が定期的に強く動く「お掃除の波」が起こり、音が出やすい。
ひとことで言うとおなかのグ〜は、腸が「お掃除するよ〜」と動いている音!
テスト中、静まりかえった教室で、おなかが「グ〜〜〜」。顔から火が出るほど恥ずかしい瞬間ですよね。
でも、あの音は体がサボっていない証拠でもあるんです。
おなかの音の正体は、胃や腸が中身を押し流すときの音。特に空腹のときは、腸が「お掃除タイム」に入っていて、音が出やすくなっています。
01音の正体は「ガスと液体の移動」
胃や腸は、筋肉でできたホースのようなもの。この筋肉が波のように縮んで、中身を少しずつ先へ送っています(ぜん動運動)。
このとき、中にガス(空気)と液体がまじっていると、ホースの中でゴボゴボと音がします。水と空気が入ったペットボトルを握ると「ゴポッ」と鳴るのと同じです。
食後にも腸は動いていますが、食べ物がクッションになって音が小さくなりがち。一方、空っぽのときはガスと液体だけが動くので、音が響きやすいんです。
02空腹時に起こる「お掃除の波」
MMCは、ざっくり言うと空腹時に腸が行う定期的な大そうじ。食べ物がなくなってしばらくすると、胃から腸にかけて強い収縮の波が起こり、残った食べカスや細菌、はがれた細胞などを下流へ押し流します。
人では、この波が1時間半〜2時間くらいの間隔でくり返されると考えられています。
実際に音を測った研究もあります。1999年、日本の友政(Tomomasa)さんらは、空腹の健康な人のおなかにマイクを貼り、同時に胃腸の動きを測りました。すると、おなかの音の大きさはお掃除の波の段階に合わせて変化し、強い収縮が起こる時期にいちばん大きくなっていたのです。おなかが鳴るタイミングがなんとなく周期的なのは、このためと考えられます。
そして、ごはんを食べるとこのお掃除の波はピタッと止まり、ゆっくり混ぜながら消化する「食後モード」に切りかわります。腸は、食事中と空腹時で、まったくちがう働き方をしているんですね。
この「お掃除」がうまくいかないと、小腸に細菌が増えすぎる原因になることもあると考えられており、医学的にも注目されています。

03「おなかすいた」ホルモンの発見は日本から
空腹とおなかの音をつなぐ物質のひとつが、グレリンというホルモンです。
グレリンは、1999年に国立循環器病研究センターの児島将康さん、寒川賢治さんらの研究チームが発見し、科学誌『Nature』で発表しました。ただしこのときは、成長ホルモンを出させる物質としてラットの胃から見つかったもので、食欲を高める働きはその後の研究でわかりました。胃から出て、脳に「おなかがすいた!」と伝える、いわば空腹のメッセンジャーです。
グレリンは、空腹時の胃や腸の動きを強める働きもあると考えられています。また、胃腸の動きに関わる別のホルモン(モチリン)も、空腹時のお掃除の波と深く関係しています。
04まとめ
おなかの「グ〜」は、空っぽの胃や腸がガスや液体を押し流す音。特に空腹時は、腸が定期的にお掃除の波を起こしているので音が出やすいんです。
次におなかが鳴っても、恥ずかしがらなくて大丈夫。「今、腸がお掃除中なんです」と心の中でつぶやいてみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerStomach growling is not a sign that something is wrong.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Has your stomach ever growled in a quiet classroom? The sound comes from gas and liquid moving through your stomach and intestines. When your stomach is empty, your gut does a kind of cleaning.
Every one and a half to two hours, a strong wave pushes old food and bacteria forward. The growling is loudest during these waves. A hormone called ghrelin, found by a Japanese team, tells your brain you are hungry.
73 words ・ CEFR A2
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静かな教室で、おなかが鳴ったことはありますか?あの音は、胃や腸の中をガスと液体が移動することで出ています。胃が空っぽのとき、腸は一種のお掃除をします。
1時間半〜2時間ごとに、強い波が古い食べかすや細菌を先へ押し流すのです。おなかの音は、この波のときにいちばん大きくなります。日本の研究チームが見つけたグレリンというホルモンは、おなかがすいたことを脳に伝えます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
おなかが鳴る理由がテーマなので C。
Q2. How often does the strong cleaning wave come?
Every one and a half to two hours, a strong wave pushes ... とあるので B。
Q3. In this passage, "empty" means ...
empty は「空の」。胃の中に何も入っていない状態なので D。
Stomach growling is not a sign that something is wrong. The stomach and intestines are like muscular hoses that squeeze in waves to move their contents forward. When gas and liquid are mixed inside, this movement makes noise. After a meal, food softens the sound, but when the stomach is empty, only gas and liquid move, so the noise is louder.
When we have not eaten for a while, the gut also performs regular cleaning waves, which push leftover food and bacteria along every one and a half to two hours. A 1999 Japanese study recorded stomach sounds and found that they were loudest during the strongest of these waves. Eating stops these waves.
114 words ・ CEFR B1
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おなかが鳴るのは、何かがおかしいというサインではありません。胃や腸は筋肉でできたホースのようなもので、波のように縮んで中身を先へ送っています。中にガスと液体がまざっていると、この動きで音が出ます。食後は食べ物が音をやわらげますが、胃が空っぽのときはガスと液体だけが動くので、音が大きくなります。
しばらく何も食べていないとき、腸は定期的なお掃除の波も起こし、1時間半〜2時間ごとに残った食べかすや細菌を押し流します。1999年の日本の研究では、おなかの音を録音し、この波のうち最も強い段階で音がいちばん大きくなることがわかりました。食事をするとこの波は止まります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
おなかが鳴る仕組みと、空腹時に音が出やすい理由の説明なので A。
Q2. Why is the noise louder when the stomach is empty?
food softens the sound, but when the stomach is empty, only gas and liquid move, so the noise is louder とあるので C。
Q3. What can we infer from the last sentence?
Eating stops these waves. と、音が最も大きいのはこの波のとき、という記述を合わせると、何か食べれば大きな音が出にくくなると推測できるので B。
The rumbling of an empty stomach, embarrassing as it may be, is evidence of a busy gut. The stomach and intestines move their contents by peristalsis, waves of muscular contraction, and when gas and liquid are pushed along together, the result is audible. After a meal, food dampens these sounds, but when the gut is empty only gas and fluid move, making noise more noticeable. In 1969, Szurszewski reported that in fasting dogs, waves of electrical activity traveled regularly down the small intestine. This pattern, later named the migrating motor complex, acts like a housekeeper, sweeping away leftover food, bacteria and dead cells roughly every one and a half to two hours in humans.
In 1999, Tomomasa and colleagues placed microphones on the abdomens of fasting volunteers and found that bowel sounds were loudest during the most intense phase of this cycle. Hormones also play a part: ghrelin, discovered by a Japanese team in 1999, signals hunger and may strengthen these movements. Note, however, that the sound study involved few participants, and some suggested links, such as weak cleaning waves leading to bacterial overgrowth, are not fully established.
188 words ・ CEFR B2
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空っぽのおなかが鳴る音は、恥ずかしいものかもしれませんが、腸が忙しく働いている証拠です。胃や腸は、筋肉の収縮の波であるぜん動運動によって中身を動かしており、ガスと液体が一緒に押し流されると、それが聞こえる音になります。食後は食べ物がこうした音を弱めますが、腸が空っぽのときはガスと液体だけが動くので、音が目立ちやすくなります。1969年、ズルシェフスキーさんは、絶食中の犬で、電気的な活動の波が小腸を規則的に下っていくことを報告しました。のちに伝播性消化管収縮運動(MMC)と名づけられたこのパターンは、家の掃除係のように働き、人ではおよそ1時間半〜2時間ごとに、残った食べかす、細菌、はがれた細胞を押し流します。1999年、友政さんらは絶食中のボランティアのおなかにマイクを貼り、腸の音がこのサイクルの最も強い段階でいちばん大きくなることを発見しました。
ホルモンも関わっています。1999年に日本のチームが発見したグレリンは空腹を知らせ、こうした動きを強めるかもしれません。ただし、音の研究は参加者が少なく、お掃除の波が弱いと細菌が増えすぎるといった、指摘されているつながりのいくつかは、まだ完全には確立していない点に注意が必要です。
4択リーディングクイズ
Q1. What role does the migrating motor complex play?
acts like a housekeeper, sweeping away leftover food, bacteria and dead cells とあるので D。食後ではなく空腹時の働き。
Q2. What did Tomomasa and colleagues find?
bowel sounds were loudest during the most intense phase of this cycle とあるので A。
Q3. Which statement reflects the author's caution?
最終文で、音の研究は参加者が少なく、一部のつながりはまだ確立していないと述べているので C。
重要単語
- growlB2動詞・名詞(おなかが)鳴る、うなるMy stomach growled during the test.
もとは犬などが「うなる」。rumble(ゴロゴロ鳴る)も同じ場面で使える。 - intestineB2名詞腸The small intestine absorbs nutrients.
small intestine(小腸)、large intestine(大腸)。intestinal(腸の)も覚えたい。 - peristalsisC1名詞ぜん動運動Peristalsis pushes food through the gut.
peri-(周りに)+stalsis(締めつけ)。管の周りが順番に締まって中身を送るイメージ。 - empty stomachB1名詞(句)空腹(空っぽの胃)Don't take this medicine on an empty stomach.
on an empty stomach「空腹時に」の形が定番。薬の注意書きでよく見る。 - hunger hormoneB2名詞(句)空腹ホルモンGhrelin is often called the hunger hormone.
グレリン(ghrelin)の別名。反対に満腹を伝えるのは leptin(レプチン)など。 - fastingC1名詞・形容詞絶食(中の)、断食The cleaning waves appear during fasting.
fast は「速い」のほかに「断食する」の意味がある。breakfast は break(破る)+fast(断食)=夜の断食を破る食事。
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静かな教室でおなかが「グ〜」。あれは、空っぽの胃や腸が、残りカスやガスを押し流す“お掃除の波”を起こしている音らしい。おなかがすいた合図のホルモン「グレリン」を見つけたのは日本の研究チーム。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Kojima et al. (1999) Ghrelin is a growth-hormone-releasing acylated peptide from stomach, Naturedoi.org
- Szurszewski (1969) A migrating electric complex of canine small intestine, American Journal of Physiologydoi.org
- Tomomasa et al. (1999) Gastrointestinal Sounds and Migrating Motor Complex in Fasted Humans, American Journal of Gastroenterologydoi.org
- Deloose et al. (2012) The migrating motor complex: control mechanisms and its role in health and disease, Nature Reviews Gastroenterology & Hepatologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











