パクチーが「石けんの味」に感じる人は遺伝子のせい? 2.6万人の調査が見つけた“においセンサー”

読む前に予想してみよう!
パクチー嫌いは、たった1つの遺伝子で完全に決まる
関係する遺伝子の候補は見つかったが、その影響は小さく、経験や文化など他の要因も大きいと考えられている。
- 対象
- ヨーロッパ系の成人・カナダの若者
- 規模
- 約2.6万人+約1,600人
- 研究の種類
- ゲノムワイド関連解析・横断調査
- 確かさ
- ★★★☆☆
パクチーを「石けんっぽい」と感じるかどうかに、においセンサーの遺伝子の違いが関わっていた。ただし、ありふれた遺伝子の違いで説明できるのはごく一部で、決めつけはできない。
ひとことで言うとパクチー嫌いは「鼻のセンサー」の個性も関係してるかも!
タイ料理やベトナム料理に欠かせないパクチー。「これがないと始まらない!」という人がいる一方で、「石けんみたいな味がして無理」という人もいます。
同じ葉っぱなのに、なぜここまで感じ方が分かれるのでしょうか。
実は、この「石けん味」問題には、鼻にある"においセンサー"の遺伝子が関わっているらしいことがわかってきました。ただし、話はそう単純ではありません。
01パクチーの「石けん臭」の正体
パクチーの香りのもとは、主にアルデヒドと呼ばれるにおい成分です。研究によると、パクチーに含まれるアルデヒドのうち、ある種類は「フルーティー・青くさい」と表現され、別の種類は「石けんっぽい・脂っぽい」と表現されます。
実際、石けんや洗剤の香料にもアルデヒドの仲間が使われています。パクチーが石けんっぽく感じられるのは、においの成分そのものが一部共通しているから、と考えると納得がいきます。
022.6万人を調べたら「においセンサー」の近くに目印
つまり、鼻のセンサーの形が少し違うと、パクチーの特定のにおいを強く拾ってしまうのかもしれない、というわけです。

03でも「遺伝子のせい」とは言い切れない
ここでどんでん返しです。同じ研究で、ありふれた遺伝子の違い全体で説明できる割合(遺伝率)を見積もったところ、わずか約9%でした。見つかった目印1つの影響も、決して大きくはありません。
一方、双子を調べた別の研究では、パクチーの評価について、においセンサー以外の遺伝子(刺激を感じるセンサーや苦味のセンサーの遺伝子など)との関連も報告されています。つまり、関わる遺伝子は1つではなさそうです。
さらに、カナダの若者を調べた研究では、パクチー嫌いの割合は東アジア系で21%、ヨーロッパ系で17%、南アジア系で7%、中東系で3%と、背景によって大きく違いました。パクチーをよく使う料理が身近な人たちで嫌いな人が少ないのでは、という見方もあります。遺伝子だけでなく、子どものころから食べ慣れているかも効いていそうです。
においの好き嫌いは、経験によって変わりやすいことも知られています。初めは苦手だったにおいが、くり返し出会ううちに平気になったり、楽しい思い出と結びついて好きになったりすることは珍しくありません。パクチーも、遺伝子という「スタート地点」の差に、食べてきた経験が上書きされていく食べ物なのかもしれません。
04まとめ
パクチーの「石けん味」には、においセンサーの遺伝子の違いが関わっている可能性があります。でも、それで説明できるのはほんの一部。慣れや食文化も大きな役割を果たしていそうです。
「パクチー派」と「アンチ派」、どちらも鼻の個性。食卓では、お互いの感じ方を尊重していきましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFor some people, cilantro is a must in Thai and Vietnamese dishes, while others say it tastes like soap.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Cilantro is a green herb used in Thai and Vietnamese food. Some people love it, but others say it tastes like soap.
Why? Cilantro and soap share some smells. In a study of about 26,000 people, scientists found a small difference in a gene for smell sensors in the nose. But genes explain only a small part. Eating cilantro often since childhood may also help people like it.
68 words ・ CEFR A2
和訳を見る
パクチーは、タイ料理やベトナム料理に使われる緑のハーブです。大好きな人もいますが、石けんのような味がすると言う人もいます。
なぜでしょうか。パクチーと石けんには、共通するにおいがあるのです。約2万6000人を対象にした研究で、科学者たちは鼻のにおいセンサーの遺伝子に小さなちがいを見つけました。しかし、遺伝子で説明できるのはほんの一部です。子どものころからパクチーをよく食べていることも、好きになる助けになるのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
パクチーが石けんの味に感じられる理由(におい・遺伝子・経験)を説明しているので C。
Q2. What did scientists find in the study of about 26,000 people?
found a small difference in a gene for smell sensors in the nose とあるので A。C は「遺伝子はごく一部しか説明しない」に矛盾。
Q3. In this passage, "share" some smells means cilantro and soap ...
share は「共有する」。パクチーと石けんが同じにおいの成分を一部もつ、という意味なので D。
For some people, cilantro is a must in Thai and Vietnamese dishes, while others say it tastes like soap. Part of the reason is chemistry: cilantro contains smell compounds called aldehydes, and some of them are also used in soaps. In 2012, researchers asked thousands of people of European ancestry whether cilantro tasted soapy and compared their answers with their genes. They found a marker near a group of smell receptor genes, including OR6A2, which reacts to these aldehydes.
However, common genetic differences explained only about 9% of the trait. A Canadian study also showed that dislike was much rarer among Middle Eastern young people than among East Asian ones, which suggests that experience matters too.
116 words ・ CEFR B1
和訳を見る
タイ料理やベトナム料理にパクチーは欠かせないという人がいる一方で、石けんのような味がすると言う人もいます。理由の一部は化学にあります。パクチーにはアルデヒドと呼ばれるにおい成分が含まれていて、その一部は石けんにも使われているのです。2012年、研究者たちは何千人ものヨーロッパ系の人々に、パクチーが石けんっぽい味がするかどうかを尋ね、その答えを遺伝子と比べました。すると、においの受容体遺伝子群の近くに目印が見つかりました。
その中には、これらのアルデヒドに反応するOR6A2が含まれています。しかし、ありふれた遺伝子のちがいで説明できたのは、この特徴のわずか約9%でした。カナダの研究でも、パクチー嫌いは東アジア系の若者より中東系の若者のほうがずっと少ないことが示され、経験も重要であることがうかがえます。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, why might cilantro taste like soap?
cilantro contains smell compounds called aldehydes, and some of them are also used in soaps とあるので B。
Q2. How much of the trait did common genetic differences explain?
explained only about 9% of the trait とあるので C。
Q3. What does the Canadian study suggest?
背景によって嫌いな人の割合が大きくちがい、which suggests that experience matters too とあるので A。
To some people cilantro tastes fresh. To others it tastes unmistakably of soap. The soapy impression has a chemical basis. Cilantro's aroma is dominated by aldehydes, some of which are described as soapy or fatty and resemble compounds used in soaps and detergents.
In 2012, researchers at a genetic testing company asked 14,604 customers of European ancestry whether cilantro tasted soapy to them. They then checked the result against reports from another 11,851 people about whether they liked it. A genome-wide analysis found a variant on chromosome 11, inside a cluster of olfactory receptor genes and near OR6A2, a receptor known to bind cilantro aldehydes.
The genetic story is thin, though. The heritability captured by common variants was only about 9%, and the single variant had a modest effect. Nor has any experiment confirmed that OR6A2 is really the gene responsible. Experience matters too.
A separate study of young Canadians found that dislike ranged from 21% among East Asians to 3% among Middle Easterners. In comparisons like that, genetic background and food experience are intertwined, and people who grow up with cilantro may simply be more used to it.
189 words ・ CEFR B2
和訳を見る
パクチーを新鮮な味だと感じる人もいます。一方で、まぎれもなく石けんの味がすると感じる人もいます。石けんっぽい印象には化学的な根拠があります。パクチーの香りはアルデヒドが中心で、その一部は石けんっぽい、あるいは脂っぽいと表現され、石けんや洗剤に使われる化合物に似ているのです。
2012年、遺伝子検査会社の研究者たちは、ヨーロッパ系の顧客14,604人に、パクチーが石けんの味がするかを尋ねました。次に、その結果を、別の11,851人による「パクチーが好きか」という報告と照らし合わせました。ゲノムワイド解析によって、11番染色体の嗅覚受容体遺伝子群の中、パクチーのアルデヒドと結合することが知られている受容体OR6A2の近くに、ある変異が見つかりました。
ただ、遺伝子による説明は弱いものです。ありふれた変異でとらえられる遺伝率は約9%にすぎず、その1つの変異の影響もささやかなものでした。また、OR6A2が本当に原因となる遺伝子なのかを確かめた実験もありません。経験も影響します。
カナダの若者を対象にした別の研究では、嫌いな人の割合は東アジア系の21%から中東系の3%まで幅がありました。このような比較では遺伝的背景と食経験が絡み合っており、パクチーを食べて育った人は、単にその味に慣れているだけかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best summarizes the passage?
遺伝子の変異との関連は見つかったが遺伝率は約9%と小さく、Experience matters too とあるように経験も影響する、という全体の主張なので D。
Q2. What is uncertain about OR6A2, according to the passage?
Nor has any experiment confirmed that OR6A2 is really the gene responsible とあるので C。
Q3. Why does the writer say genetic background and food experience are "intertwined" in the Canadian comparison?
intertwined は「絡み合った」。集団間の差が遺伝によるのか食経験によるのか切り分けられない、という限界を指しているので B。
重要単語
- cilantroB2名詞パクチー、コリアンダーの葉Some people think cilantro tastes like soap.
アメリカ英語。イギリス英語では coriander と呼ぶことが多い。 - olfactoryC1形容詞嗅覚のOlfactory receptors detect smells in the nose.
olfactory receptor(嗅覚受容体)が定番。gustatory(味覚の)とセットで覚える。 - variantC1名詞(遺伝子の)変異型、異なる型A genetic variant may change how we sense odors.
vary(変わる)の仲間。ウイルスの「変異株」も variant。 - aldehydeC1名詞アルデヒド(におい成分の一種)Aldehydes give cilantro its strong smell.
化学用語。香料や洗剤の香りにも使われる成分群。 - heritabilityC1名詞遺伝率The heritability of this trait seems to be low.
heritable(遺伝しうる)の名詞形。inherit(受け継ぐ)、heritage(遺産)と同語源。 - familiarityB2名詞なじみ、慣れFamiliarity can make a strange food taste better.
familiar(なじみのある)の名詞形。be familiar with ~「~をよく知っている」は入試頻出。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
このネタ、誰かに教えたくなった?
パクチーが石けんの味に感じる人、遺伝子が関わっているらしい。約2.6万人を調べた研究で、においセンサーの遺伝子の近くに目印が見つかった。でもありふれた遺伝子の違いで説明できるのはごく一部。「慣れ」や文化も大きいみたい。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
- Eriksson et al. (2012) A genetic variant near olfactory receptor genes influences cilantro preference, Flavourdoi.org
- Mauer & El-Sohemy (2012) Prevalence of cilantro (Coriandrum sativum) disliking among different ethnocultural groups, Flavourdoi.org
- Knaapila et al. (2012) Genetic Analysis of Chemosensory Traits in Human Twins, Chemical Sensesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










