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【ギュられるとは?】Z世代が使う謎スラング 「ギュられる」の意味&正体── AIに職を奪われる恐怖が言語になった日

🤖 AI × Z世代 × 日本語スラング

Z世代が使う謎スラング
ギュられる」の正体──
AIに職を奪われる恐怖が
言語になった日

シンギュラリティ → ギュ → ギュられる。
中高生の間で1年前から広がるこの言葉が映す、日本の若者のリアルな危機感

「ギュられる」──この言葉を聞いたことがありますか?
中高生の間で約1年前から広がっているこのスラングの意味は、「AIに仕事を奪われること」
語源は「シンギュラリティ(技術的特異点)」。それが縮まって「ギュ」になり、「ギュられる」になった。
──Z世代の言語感覚が、AI時代の不安をここまでカジュアルに表現する時代が来ています。

1「ギュられる」とは何か──Z世代スラングの解剖学

まず、この言葉の成り立ちを整理しましょう。

🔬 「ギュられる」の語源ツリー
Singularity
シンギュラリティ
ギュ
略称化
ギュられる
受身形=AIに奪われる

Xユーザーの@Gechipyiさんが「友達が『ギュられる』って言葉多用するんだけど」と投稿したことで一気に可視化されたこのスラング。その定義は明快です。

ギュられる
【動詞・受身形】gyu-rareru
AIの急速な進化(シンギュラリティ)によって、
自分の職業・スキル・学んできたことの価値が消滅すること
特にプログラミングなどの知的労働について使われる。
用例:「プログラミング勉強してもどうせギュられるじゃん」

注目すべきは、この言葉が約1年前から中高生の間で使われていたという点です。つまりSNS上で「発見」される前から、10代の日常会話にすでに浸透していた。これはZ世代がAIの脅威を「ニュース」としてではなく、「自分ごと」として体感している証拠です。

💡

Z世代のスラングは「短縮化」と「受身化」が特徴。「シンギュラリティ」という7音節の外来語を「ギュ」の1音に圧縮し、さらに「られる」をつけて被害者目線にする。この言語センスこそが、彼らのAIに対する姿勢──抵抗ではなく受容、でも諦めでもない──を象徴しています。

2Xで大炎上──発端となったポストと反応の全貌

2025年2月、この言葉はXで一気にトレンド入りしました。火付け役となったのが、AI研究者のうみゆき氏(@umiyuki_ai)の率直すぎるポストです。

🔥 VIRAL POST
うみゆき@AI研究(@umiyuki_ai):
「あんまハッキリ認めたくないが、僕なんか高校生からずっとプログラミングの勉強とかしてたけど今AIがコード書けるようになっちゃって人生かなりムダにしたわ。今の高校生はギュられること間違いなしというかすでにほぼギュられちゃった感があるプログラミングなんか近寄らんとこ…」

これに対し、さまざまな立場からの反応が殺到しました。

😰
高校生の本音
「高校生です。大学入ったあとの就職先なかったら全員平等にギュられるので。むしろ、金と多少のドメイン知識持ってるジジババのほうが羨ましい
🤔
うみゆきの逆説的見方
「中高生の立場からすればオッサンどもが全員ギュられようがざまあという程度の事で、せいぜい全部リセットされやがれって感じかもね」
KEY REACTIONS
mattn(@mattn_jp)エンジニア:
「もしかしたら将来、エンジニアの仕事はこういう、コード書けないながらAIで作られてしまった不幸なシステムを調査して直すことになるのかもしれんなぁ。(嫌だ)」
賢木イオ(@studiomasakaki)AIイラスト:
「定期的にビッグテックが滅ぼしにくる個人開発勢の賽の河原を22年から眺めてきたけど、なんだかんだで皆さんいろいろなところから声が掛かってご活躍されてるので、『できない』へのトライ自体にはそれなりに価値があるんだなという感想」
千葉(@chiba15683):
「🤓『高専に入ってプログラマーになる‼️』
🤖『人間がコードを書く時代は終わりました』
これ

この議論が浮き彫りにしたのは、世代間の「ギュ」に対する温度差です。ベテランエンジニアは「自分の蓄積が無駄になった」と嘆き、中高生は「そもそもヒエラルキーが崩壊するならチャンスだ」と逆張りする。同じ「ギュられる」という言葉が、世代によってまったく異なる感情を呼び起こしているのです。

3データが語る現実──プログラマー雇用は本当に崩壊しているのか

「ギュられる」は単なるスラングなのか、それとも現実を反映しているのか?データを見てみましょう。

📊 指標 数値 出典
米国プログラマー雇用減少率(2023→2025) -27.5% 米国労働統計局
22〜25歳の若手開発者の雇用減少率 -20% スタンフォード大学研究
ソフトウェア開発者(設計寄り)の雇用変動 -0.3% 米国労働統計局
AIが2030年までに消滅させる仕事 9,200万件 世界経済フォーラム
AIが同時期に創出する新たな仕事 1億7,000万件 世界経済フォーラム

ここで重要なのは、「コードを書く人」と「設計する人」で明暗がくっきり分かれている点です。

IEEE Spectrumの2025年末の報道によれば、米国のプログラマー(コーディング中心の職種)の雇用は2023年から2025年にかけて27.5%も減少した一方、ソフトウェアデベロッパー(設計・アーキテクチャ寄りの職種)はわずか0.3%の減少にとどまっています。

さらにスタンフォード大学の研究では、22〜25歳の若手開発者がChatGPT登場以降に約20%の雇用を失った一方、26歳以上の開発者は安定または増加していることが判明しました。

“But what nobody predicted was that the biggest impact by far would be on programmers.”

「しかし、最も大きな影響がプログラマーに及ぶとは、誰も予測していなかった」

── Hugo Malan, Kelly Services(IEEE Spectrum 2025年12月)

つまり、Z世代の「ギュられる」という感覚は、データ上も裏付けられているのです。特に「教科書的な知識=基本的なコーディング構文やアルゴリズム」がAIに最も代替されやすいという研究結果は、まさに「これからプログラミングを学ぼうとする若者」が最も影響を受ける構造を示しています。

4「3ヶ月後に大手が解決してしまうリスク」──深津貴之の指摘

THE GUILDの深津貴之氏(@fladdict)は、この議論にさらに深い視点を加えました。

INSIGHT
「23年ぐらいからAI使い込んでる人は、『今できないに取り組んでも3ヶ月後には大手で解決してしまうリスク』を織り込んでるけど、25〜6年からAI使い込んでる人は、まだその経験がないから、今のできないに、真面目に対処しようとするのか。」

これは非常に核心的な指摘です。深津氏が言っているのは、AIの進化速度を「体感」したかどうかで、行動が根本的に変わるということ。

2023年組の世界観
「今、必死に解決しようとしている問題が、3ヶ月後にはOpenAIやGoogleが解決してしまう」──この経験を繰り返したことで、「何に時間を投資するか」の判断基準そのものが変わった。
2025〜26年組の世界観
AIの進歩は知っているが、「自分の取り組みが無駄になった」という実体験がまだない。だから従来の勉強法──コツコツとスキルを積み上げる──をそのまま続けようとする。

この「体感の差」こそが、「ギュられる」を使う世代と使わない世代の分水嶺かもしれません。すでにギュられる経験をした人は、その言葉を痛みとともに理解している。まだの人は、「まさか自分が」と思っている。

賢木イオ氏の反論も重要です:「ビッグテックが滅ぼしにくる個人開発勢」を見てきたが、挑戦した人は結局声がかかる。つまり「ギュられるリスクがあっても、挑戦したこと自体に市場価値がつく」という構造は、まだ健在なのかもしれません。

5落合陽一「2026年にはほとんどの知的作業がAIに置き換わる」

メディアアーティストで筑波大学准教授の落合陽一氏は、さらに踏み込んだ未来予測を語っています。

落合氏はエンジニアtype誌のインタビューで、最も置き換えられやすいのは「人対データ」の仕事だと指摘しました。データを直接扱うソフトウェアエンジニアは代替の筆頭であり、「コードを書くよりも高度な技術が求められる」時代がすでに到来していると述べています。

⚠️ ギュられやすい仕事 💪 ギュられにくい仕事
定型的なコーディング(ボイラープレート作成) システム設計・アーキテクチャ構築
データ入力・事務処理 要件定義・顧客との合意形成
テンプレート型カスタマーサポート レガシーシステムの調査・修正
定型的な書類作成・翻訳 AIが出力したコードの品質レビュー
リファクタリング・言語マイグレーション 「何を作るべきか」の意思決定

mattn氏の「AIで作られてしまった不幸なシステムを調査して直す仕事」という予測は、皮肉ながら非常に的を射ています。AIが大量のコードを生成する時代には、そのコードの品質を判断し、問題を特定し、修正できる人間がむしろ重宝されるのです。

💡

Google のCEOスンダー・ピチャイ氏は「自社コードの25%がAI支援」と明かしつつも、「真の成果はエンジニアの置き換えではなく、開発速度の10%向上」だと強調しています。これは「ギュる」のではなく「ブーストする」という捉え方です。

6それでも「ギュられない」スキルとは──生存戦略マップ

では、どうすれば「ギュられない」側に回れるのか?データと専門家の意見を統合すると、以下の構造が見えてきます。

🛡️ ギュられない4つの条件
① 曖昧さを扱えるか
AIは明確な仕様に強いが、「何を作るべきか」という曖昧な要求を具体化するのは苦手。要件定義力は最強の盾。
② 物理世界と繋がっているか
リアルなモノ・現場と結びついた仕事はAIだけでは完結しない。インフラ、ハードウェア、対面サービスなど。
③ AIを「使う側」にいるか
AIに代替されるのではなく、AIを道具として使いこなす側に回る。プロンプトエンジニアリング、AI監査、AIオペレーションなど。
④ 信頼と責任が伴うか
法的責任、倫理的判断、組織間の信頼構築──これらはAIに委任できない。規制産業ほど人間の出番が残る。

世界経済フォーラムのFuture of Jobs Report 2025によると、2030年までに職業スキルの39%が変容するとされています。しかし同時に、AIは9200万の仕事を消滅させる一方で1億7000万の新しい仕事を創出し、差し引き7800万のプラスになるという予測も出ています。

“The role of developers is shifting from just writing code to guiding, validating, and optimizing what AI produces.”

「開発者の役割は、コードを書くことから、AIの出力を導き、検証し、最適化することへとシフトしている」

── World Economic Forum, Future of Jobs Report 2025

7英語で読み解く「AI失業」──世界はどう議論しているか

「ギュられる」は日本独自のスラングですが、同じ不安は英語圏でもさまざまな表現で語られています。英語学習者のために、関連する英語表現を整理しましょう。

AI displacement
AIによる(職の)排除・置き換え
最もフォーマルな表現。ニュースや研究レポートで頻出。“AI displacement of entry-level jobs”(エントリーレベルの職のAI置き換え)
get automated out
自動化されて職を失う
カジュアルな表現。「ギュられる」に最も近いニュアンス。“I’m worried about getting automated out.”(自動化で追い出されないか心配だ)
made redundant by AI
AIによって不要になる
イギリス英語で特によく使われる。”redundant” は「余剰・不要」の意。“Half of junior roles could be made redundant.”
the AI ice age
AI氷河期
就職氷河期のAI版。米国のテック業界で使われ始めている表現。“The AI ice age is hitting CS graduates hardest.”(AI氷河期はCS卒が最も打撃を受けている)
upskill or perish
スキルアップか死か
AI時代の生存戦略を一言で表すフレーズ。LinkedInやビジネスメディアで頻出。日本語の「リスキリング」に相当。
🌍

興味深い対比:日本のZ世代は「ギュられる」(受身=される側)という表現を選んだのに対し、英語圏では “upskill or perish”(能動=する側に回れ)という命令形が主流。言語の選び方に、文化的な対処姿勢の違いが表れています。

8Z世代の言語が映す未来──「ギュ」は絶望か、それとも適応か

「ギュられる」という言葉を、ただの若者言葉として片づけるのはもったいない。この言葉には、Z世代の3つの本音が凝縮されています。

本音① 「努力が無駄になる」恐怖の言語化

日本の教育は「努力は報われる」が前提です。しかしAI時代には、何年もかけて磨いたスキルが一夜にして陳腐化する。「ギュられる」は、この「努力の無力化」に対するやりきれなさを、たった4文字で表現しています。英語にこれほど簡潔な等価表現はありません。

本音② 世代間ヒエラルキーへの挑戦

「オッサンどもが全員ギュられようがざまあ」というポストが示すように、Z世代の一部は「ギュ」を既存の権力構造を破壊するチャンスとして捉えています。経験も年功序列も意味をなくすなら、「ゼロからのスタート」は若者に有利──という逆転の発想です。

本音③ それでも「笑い飛ばす」Z世代のレジリエンス

「ギュられる」はネガティブな意味の言葉ですが、そこにユーモアを込めているのがZ世代らしさ。深刻な話題を深刻に語らず、スラング化することで心理的な距離をとる。これは彼らなりの精神的サバイバル戦略なのかもしれません。

COMPARISON

過去の「若者の危機感スラング」との比較:

時代 スラング 意味 背景
2000年代 負け組 格差社会の敗者 就職氷河期
2010年代 オワコン 終わったコンテンツ SNS時代の栄枯盛衰
2024〜2025年 ギュられる AIに代替される 生成AI革命

まとめ──「ギュられる」時代をどう生きるか

「ギュられる」は単なるスラングではありません。
それはAI時代を生きるZ世代の、最もリアルな危機感の結晶です。

米国ではプログラマーの雇用が2年で27.5%減少──「ギュ」は現実
ただし消える仕事の倍近い、新しい仕事が生まれている
「コードを書く人」から「AIの出力を導く人」へのシフトが加速中
深津貴之の指摘:「3ヶ月後に大手が解決するリスク」を織り込む時代
それでも「挑戦した人には声がかかる」という構造は健在
英語圏では “upskill or perish”──日本では「ギュられる」。言葉が違えば戦略も変わる

「ギュられる」と笑い飛ばせるうちに、
「ギュる側」に回る準備を始めよう。

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