英語の発音指導のコツ|中学生のうちに押さえたい音とリズム
発音は、学年が上がるほど直しにくくなると感じる先生は多いのではないでしょうか。中学の段階で「どこを気をつければ通じるのか」を知っておくと、その後の学習がずっと楽になります。この記事では、**優先順位の高い音とリズム**に絞って、授業の中で無理なく取り入れる方法を紹介します。

01発音指導は「全部」より「優先順位」
英語の音をすべて完璧にしようとすると、授業時間がいくらあっても足りません。大切なのは、通じやすさに大きく関わる部分から優先して指導することです。
中学生のうちに押さえておきたいポイントは、次の4つに整理できます。
- 日本語にない子音:th, f / v, r / l
- 母音を足さない:desk を「デスク」と語尾に母音をつけない
- 単語の強勢(アクセント):どこを強く長く言うか
- 文のリズム:内容語を強く、機能語を弱く
特に3と4は見落とされがちですが、個々の音が多少ずれていても、強勢とリズムが合っていると意外なほど通じやすくなります。
ポイント:「正しい音」を目指すより「通じる音」を目指す。優先順位を生徒と共有すると、練習に迷いがなくなります。
使い方:発音の教え方を7分ほどで整理した動画です。個々の音・強勢・イントネーションの扱い方を確かめ、この節の4つの優先順位を学年ごとに配分します。
02① 日本語にない子音の教え方
子音は、口の形を目で見せるのが一番の近道です。
th(think, this)
舌先を上の歯に軽く当て、そのすき間から息を出します。
- "Put your tongue between your teeth. Like this. Now blow air. th, th, th."
- 対比練習:sink / think, sick / thick
f / v(five, very)
上の歯を下唇に軽く当てます。f は息だけ、v は声を出します。
- "Bite your bottom lip gently. Now, fff... Now add your voice. vvv..."
- 対比練習:base / vase, best / vest
r / l(right, light)
l は舌先を上の歯の裏に当てる。r は舌先をどこにもつけず、少し奥に引く。
- "For 'l,' touch here with your tongue. For 'r,' don't touch anything."
- 対比練習:rice / lice, road / load, right / light
対比練習は、教師がどちらかを言い、生徒が「1か2か」を指で示すゲームにすると、聞き分けと発音の両方を練習できます。
"Listen. Number one is 'rice,' number two is 'lice.' Which one did I say? Show me with your fingers."
03口の形と実際の音を見せる無料サイト3つと、5分メニューでの使い方
子音の指導は「口の形を目で見せる」のが近道ですが、教師の口だけでは舌の位置が見えません。次のサイトを教室で映すと、見えない部分を補えます。
| サイト | 特徴 | 5分メニューでの使い方 |
|---|---|---|
| Sounds of Speech(アイオワ大学) | 口の中の断面アニメで、舌の位置が見える(スマホアプリは有料版あり) | th・r・l の断面を映し、教師の口の形と見比べさせる |
| YouGlish | その単語を話している YouTube の場面を探せる | 強勢の位置を確かめたい語(Japanese など)を入れ、実際の話し言葉で聞かせる |
| Cambridge Dictionary | 学習者向けの英英辞典。発音の音声つき | 新出語の強勢の位置を確かめ、カードの●・を振るときの確認に使う |
1週間の使い方(毎日の5分メニューに足す)
- 月:Sounds of Speech で th の断面を見せてから、口の形の練習へ
- 火:f / v の断面を見せ、base / vase の「1か2か」ゲーム
- 水:r / l の断面を見比べ、どちらが舌が触れているかを答えさせる
- 木:YouGlish で desk や milk を聞かせ、手拍子の数を数える
- 金:本文の強く言う語を、辞書の強勢と照らし合わせる
教室で動画を映すときは、表示される広告やおすすめ動画に注意し、必要な場面だけを先に用意しておきましょう。
使い方:学習者が苦手とする難しい音の教え方を扱うセッションです。th・f/v・r/l のうち自分が教えにくい音を1つ選び、口の形の示し方を練習します。
04② 母音を足さない・③ 単語の強勢
母音を足さない
日本語は基本的に子音の後に母音がつくため、英語の子音で終わる語にも母音を足してしまいがちです。
- desk →「デスク」ではなく、最後の k は息だけ
- milk →「ミルク」ではなく、l で舌を止めて k は小さく
練習のコツは、手拍子の数で意識させることです。"How many claps? desk. One clap!" と、音節の数だけ手をたたかせると、「デ・ス・ク」の3拍ではなく1拍だと体で理解できます。
単語の強勢
強勢の位置が違うと、単語自体が聞き取ってもらえないことがあります。新出語を扱うときに、強勢の位置を必ず確認する習慣をつけましょう。
- baNAna, comPUter, JaPAN, JapaNESE
- "Which part is strong? Clap on the strong part."
板書やフラッシュカードで、強勢のある音節に●、それ以外に・を振ると、視覚的にも分かりやすくなります。
例:computer → ・●・
使い方:単語の強勢の教え方の回です。新出語の導入に強勢の確認を30秒加える方法を選び、フラッシュカードの●・の振り方と合わせます。
05④ 文のリズムを体で覚える
英語の文は、意味を担う語(名詞・動詞・形容詞・副詞など)が強く、文法的な語(冠詞・前置詞・代名詞など)が弱く短く発音される傾向があります。
リズム練習の例(自作)
- CATS EAT FISH.
- The CATS EAT FISH.
- The CATS will EAT the FISH.
- The CATS will have EATen the FISH.
語数が増えても、手拍子の数(強い語の数)は同じ3回です。弱い語を速く軽く言わないと、リズムに乗れません。
"Clap three times. Keep the same speed. Say the sentence with the claps."
このような練習は、音楽の授業のように楽しめるので、授業の区切りで気分を変えたいときにも役立ちます。教科書の本文から「強く言う語」に下線を引かせるだけでも、リズムへの意識は大きく変わります。
使い方:チャンツや輪唱を授業に取り入れる方法の紹介です。この節の CATS EAT FISH の練習を、チャンツの形にして手拍子とあわせて使います。
06つながる音・消える音にも触れておく
中学3年ごろになると、教科書の音声も自然な速さに近づき、「単語は知っているのに聞き取れない」という声が増えてきます。その原因の多くは、単語と単語がつながったり、音が弱くなったりすることにあります。
よく出るパターン(自作例)
- つながる音:Check it out.(チェッキダウ のように聞こえる)/ an apple / pick it up
- 弱くなる音:I want to go.(to が短く弱い)/ a cup of tea(of がほとんど聞こえない)
- 似た音が重なる:good day / big game(前の音が飲み込まれる)
これらは「正しく発音させる」ことより、聞いて気づかせることを主な目的にすると扱いやすいです。
"Listen to the CD. How many words do you hear? Count them with your fingers."
語数を数えさせると、弱く短く発音された語に気づけます。そのあと、生徒自身にも同じように言わせてみると、リスニングと発音の両方に効果があります。
ただし、つながる音を中学1年から細かく教える必要はありません。まずは子音・母音・強勢・リズムの土台をつくり、その上に少しずつ積み上げるイメージで取り入れましょう。
07授業に組み込む5分間メニュー
発音指導は、毎時間少しずつ繰り返すのが効果的です。授業の中の5分を、次のようなメニューで回してみてください。
5分メニュー例(曜日ごとにテーマを変える)
- 0:00〜1:00:今日の音の口の形を教師が見せる
- 1:00〜2:30:対比ペアで「1か2か」ゲーム
- 2:30〜4:00:その音を含む短文をリピート(例:"I think three thin thieves are there.")
- 4:00〜5:00:ペアで1人ずつ言い、相手が「OK / One more」で判定
1週間のテーマ例
- 月:th
- 火:f / v
- 水:r / l
- 木:母音を足さない(手拍子)
- 金:文のリズム(本文の強く言う語に下線)
"Tell your partner 'OK' or 'One more.' Be kind!"
ペアでの判定は、完璧さより「気をつけているか」を見るように伝えると、からかいや萎縮を防げます。
0840人クラスでの工夫とよくある失敗
40人クラスでの工夫
- 鏡の代わりにペアの目:口の形を隣の人に見てもらう。"Watch your partner's mouth. Is the tongue out for 'th'?"
- 列ごとのリレー:列の前から順に単語を1つずつ言い、最後の人まで回す。教師は歩きながら気になる生徒に一言だけアドバイス。
- 全員で言う→少人数で言う→1人で言う:いきなり1人で言わせず、段階を踏むと恥ずかしさが減ります。
よくある失敗
- 1人を全員の前で何度も直す:本人は恥ずかしく、周りも気まずくなります。→全体に向けて「みんなで確認しよう」と言い、クラス全体で練習する。
- カタカナのふりがなを許してしまう:カタカナは日本語の音に引っ張られます。→強勢記号や口の形のイラストで代用する。
- 発音練習を単元の最初だけで終える:継続しないと定着しません。→5分メニューで毎時間少しずつ。
ポイント:発音は「恥ずかしさ」との戦いでもあります。教師が大げさに口を動かして見せると、生徒も安心してまねできます。
使い方:伝わるかどうかを確かめる発音活動の紹介です。リピートだけで終わらないよう、ペアで「どちらを言ったか」を当てる活動を40人クラス用に1つ作ります。
使い方:「ネイティブのように話す必要があるのか」を扱うセッションです。発音指導の目標を「通じる音」にする理由を、生徒に伝える言葉にして準備します。
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よくある質問
発音記号は中学生に教えるべきですか?
すべてを覚えさせる必要はありませんが、th や r など特に大事な音の記号だけでも知っていると、辞書で自分で確認できるようになります。無理のない範囲で少しずつ紹介するのがおすすめです。
教師自身の発音に自信がない場合はどうすればよいですか?
教科書の音声や、ALTの協力を活用しつつ、口の形や舌の位置など仕組みの説明を教師が担当する方法があります。教師が練習する姿を見せること自体が、生徒にとって良いモデルになります。
どの程度の発音ができていればよいと判断すべきですか?
相手に意味が伝わるかどうかを基準にするのが現実的です。ネイティブのような発音を目標にするより、強勢とリズム、紛らわしい子音の区別ができているかを確認するとよいでしょう。
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