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第2章|言語習得の科学コラム2026-09-282026-10-09 更新

英語の誤りの訂正とフィードバックの方法|リキャスト・プロンプトの使い分け

生徒が英語で間違えたとき、その場で直すべきか、あとでまとめて伝えるべきか。直しすぎると話すのが嫌になるし、放っておくと同じ誤りが続く。誤りの訂正は、多くの英語の先生が悩むテーマです。この記事では、口頭フィードバックの種類と使い分け、ライティングの添削の工夫、大人数クラスでの工夫を紹介します。

01誤りは「学びのサイン」

第二言語習得の研究では、学習者の誤りは、言語を身につけていく過程で自然に起こるものだと考えられています。たとえば、過去形のルールを覚えた生徒が goed のように言うのは、ルールを使おうとしている証拠でもあります。

とはいえ、誤りをそのままにしておいてよいわけではありません。フィードバックを考えるときは、次の2つの視点が役立ちます。

  • 活動のねらい:正確さ(accuracy)を練習する場面か、流暢さ(fluency)を練習する場面か
  • 誤りの種類:意味が伝わらなくなる誤りか、伝わるけれど形が違う誤りか

正確さを練習する場面では、その場で丁寧に直します。流暢さを練習する場面では、会話の流れを止めず、あとでまとめて扱うのが基本です。

ポイント:すべての誤りを直す必要はありません。「今日のねらいに関係する誤り」を優先しましょう。

そもそも誤りはなぜ直すのかJo Gakonga - ELT Training|Error correction in English teaching - Part 1- Why correct?

使い方:誤りの訂正を「なぜ直すのか」から考えるシリーズの第1回です。この節の正確さと流暢さの2つの視点と照らし合わせ、自分の授業で直す誤りの方針を書き出します。

02口頭フィードバックの種類

口頭での訂正フィードバックは、いくつかの種類に分けて説明されることがよくあります。ここでは授業で使いやすい5つを紹介します。

1. リキャスト(言い直し)

生徒の発言を、正しい形で自然に言い直します。

  • Student: I go to Osaka yesterday.
  • Teacher: Oh, you went to Osaka yesterday? Nice!

会話の流れを止めないのが長所ですが、生徒が訂正に気づかないこともあります。

2. 明示的訂正

誤りをはっきり指摘し、正しい形を示します。

  • Teacher: Not "go". Yesterday is past, so we say "went".

3. 引き出し(エリシテーション)

正しい形を生徒自身に言わせます。

  • Teacher: Yesterday, you...? (手で後ろを指す)
  • Student: I went!

4. メタ言語的ヒント

文法のヒントだけを出します。

  • Teacher: Yesterday... past tense?

5. 繰り返し

誤りの部分だけを、上昇調で繰り返します。

  • Teacher: You GO to Osaka?

3〜5は、生徒に考えさせる(自分で直させる)タイプのフィードバックで、プロンプトと呼ばれることもあります。

誤りの直し方、どう使い分ける?BBC Learning English|The Teachers' Room: Correcting errors

使い方:その場で直すか後で直すか、どう気づかせるかなど、誤りの訂正の選び方を扱うBBCの教師向け動画です。この節の5つのフィードバックを、場面ごとに当てはめます。

03場面ごとの使い分け

どのフィードバックが一番良いかは、場面によって変わります。目安として、次のように使い分けると整理しやすくなります。

  • スモールトークや自由な会話:リキャストで流れを止めない。または活動後に全体でまとめて扱う
  • 新出文法の練習:引き出しやメタ言語的ヒントで、生徒自身に直させる
  • 発表の練習:発表の後に、良い点を先に伝えてから、1つだけ改善点を伝える
  • 何度も同じ誤りが出るとき:明示的訂正ではっきり伝え、全体で確認する

生徒への声かけの例です。

  • Good try! Let's check one thing.
  • Can you say that again? Think about the tense.
  • That's a good sentence. Just one small change...

どの方法を使うときも、まず内容に反応してから、形を扱うと、生徒は「伝わった」という安心感を持てます。Oh, you went to Osaka! What did you do there? のように、内容に興味を示すことが大切です。

楽しく直すスピーキング訂正Cambridge University Press ELT|Error Correction in Speaking - The Fun Way: Herbert Puchta (Teaching Teenagers Tip #4)

使い方:中高生のスピーキング中の誤りを楽しく直すヒントの動画です。この節の「まず内容に反応してから形を扱う」と合わせ、生徒が話すのを怖がらない直し方を1つ試します。

04ライティングの添削の工夫

ライティングで赤ペンを入れすぎると、生徒は真っ赤な答案を見てやる気をなくしてしまいます。次の工夫で、添削の負担を減らしつつ効果を高めましょう。

  • 焦点を絞る:今回の課題でねらう文法(例:過去形)の誤りだけを直す
  • 記号で示す:直接正しい形を書かず、誤りの種類を記号で示す。例:T=時制、S=主語と動詞の一致、Sp=スペル。生徒は記号をヒントに自分で直します
  • 良い表現にも印を:うまく書けている文に波線を引き、Nice! と書く
  • 書き直しの時間を取る:返却したら、授業中に5分、書き直す時間を取ります

40人分の添削は大変なので、全員の作文から、よくある誤りを5つ選んで全体で扱う方法も有効です。誰の作文かは伏せて、スクリーンに映して「どこを直せばいい?」とペアで考えさせます。

英作文へのフィードバック術English with Cambridge|Tips for giving effective feedback to improve your learners’ writing skills

使い方:ライティング力を伸ばす効果的なフィードバックのヒントをまとめた動画です。この節の「焦点を絞る」「記号で示す」と比べ、自分の添削の手順を見直します。

0540人クラスでの全体フィードバック

大人数クラスでは、一人ひとりに丁寧なフィードバックをする時間は限られます。そこで役立つのが、活動後の全体フィードバックです。

手順

  1. ペア活動中、先生は机間を回って良い表現とよくある誤りをメモする
  2. 活動後、黒板を2つに分けて書く:Good sentences / Let's fix
  3. Good sentencesを読み上げてほめる
  4. Let's fixの文をペアで直させる:What's wrong with this sentence? Fix it with your partner.
  5. 全体で確認し、もう一度同じ活動をする

最後にもう一度活動することで、直した形をすぐに使う機会になります。

生徒同士のフィードバックも活用しましょう。ペアで作文を交換し、チェックリスト(主語と動詞があるか、過去形になっているか、最後にピリオドがあるか)で確認し合うと、自分の誤りにも気づきやすくなります。

ピア添削で書く力を伸ばすBritish Council | TeachingEnglish|Teaching tips: How to encourage peer editing & correction

使い方:生徒同士で作文を読み合って訂正し合うピア・エディティングの進め方の動画です。この節の生徒同士のフィードバックを始める前に、チェックリストの作り方を確かめます。

06生徒が自分で直せるようにする仕組み

フィードバックの最終的な目標は、生徒が自分の誤りに気づき、自分で直せるようになることです。そのための仕組みをいくつか紹介します。

1. 誤りノート(マイ・ミステイク・リスト)

返却された作文やテストで指摘された誤りを、ノートの専用ページに書き写し、正しい形を並べて書きます。

  • × I very like music. → ○ I really like music.
  • × He play tennis. → ○ He plays tennis.

次に作文を書く前に、このリストを見返す習慣をつけると、同じ誤りが減っていきます。

2. セルフチェックリスト

作文を提出する前に、自分で確認する項目をリストにしておきます。

  • 主語と動詞があるか
  • 三人称単数の -s を忘れていないか
  • 時制はそろっているか
  • 文の最初は大文字、最後はピリオドか

3. 録音での自己チェック

スピーキングの練習を1人1台端末で録音し、聞き直して、自分で気づいた誤りを1つ書きます。自分の声を聞くのは最初は恥ずかしいものですが、自分で気づいた誤りは記憶に残りやすいものです。

指示の英語例です。

  • Check your writing with the checklist before you hand it in.
  • Listen to your recording and find one thing to improve.

先生のフィードバックと、生徒自身のセルフチェックを組み合わせることで、訂正の効果は大きく高まります。

07生徒のセルフチェックに使える道具と、教室に導入する手順

セルフチェックを習慣にするには、「何で確かめるか」を具体的に示すことが大切です。紙のチェックリストに加えて、次の道具を段階的に紹介しましょう。

目的使う道具・サイト使い方
書く練習英語日記このサイトの3文英語日記ジム。お題と模範文つきで毎日3文書いて保存できる。誤りノートを見てから書く習慣づけに使わせる
文法のチェックLanguageTool無料で使える文法チェッカー。提出前の作文を貼り、指摘された所だけを、チェックリストと照らして自分で直す
学習者向けの作文チェックVirtual Writing Tutor英語学習者のために作られた英作文チェック。よくある学習者の誤りに気づく練習に使う
レベルの判定Write & Improve英作文を書くとケンブリッジがレベルを判定してくれる(要登録)

道具を教室に導入する手順

  1. まず紙のセルフチェックリストを1か月使い、自分で確かめる習慣を作る
  2. 次に、チェックツールの指摘を「全部受け入れる」のではなく、「チェックリストの項目に当たる指摘だけ直す」ルールで使わせる
  3. ツールで直した所には印をつけて提出させ、先生は印の所が正しく直っているかだけを見る
  4. 学期末に、誤りノートで同じ誤りが減ったかを生徒自身に数えさせる

登録が必要なサービスや、自動で添削・判定するサービスを生徒に使わせる場合は、各サービスの利用規約の年齢条件と学校の方針を確かめ、18歳未満の生徒には保護者の同意を得たうえで使わせましょう。ツールの指摘には誤りもあるので、最後は生徒自身がチェックリストで判断する、という位置づけにします。

08よくある失敗と、今日からできること

よくある失敗

  • 話している途中で何度も止めて直す→生徒が話すのを怖がる
  • 誤りをまったく扱わない→同じ誤りが定着してしまう
  • 誰の誤りかが分かる形で全体に紹介する→生徒が恥ずかしい思いをする
  • 赤ペンで全部直す→先生も生徒も疲れる

今日からできること

  • 次の活動で、直す誤りの種類を1つだけ決める
  • 活動中のメモ用紙に「Good」「Fix」の2つの欄を作る
  • 作文の添削では、記号で誤りを示す方法を試す

フィードバックの目的は、間違いをなくすことではなく、生徒が自分で気づいて直せるようになることです。「直された」ではなく「自分で直せた」経験を増やしていきましょう。

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速く効果的なフィードバックEdutopia|6 Teacher-Approved Tips for Faster, More Effective Feedback
SLA研究を教室の実践につなげる講演Teachers College, Columbia University|Making Research on ISLA Relevant for Teacher Practices. Plenary Talk by Dr. Roy Lyster (PART 1)

今日やること

よくある質問

スピーキング中の誤りはその場で直すべきですか?

活動のねらいによります。流暢さを練習する場面では、会話の流れを止めずにリキャストしたり、活動後にまとめて扱ったりする方法がよく使われます。正確さを練習する場面では、その場で生徒に考えさせるフィードバックが有効です。

作文は全部直したほうがいいですか?

すべてを直すと生徒の負担が大きく、どこが大事な誤りか分かりにくくなります。課題のねらいに関係する誤りに絞って示し、書き直す機会を設けるのがおすすめです。

生徒同士で訂正させても大丈夫ですか?

チェックリストなど、確認する観点を具体的に示せば効果的です。ただし、生徒同士では気づけない誤りもあるので、全体フィードバックと組み合わせましょう。

読了ボーナス

最後まで読んだあなたに、目から鱗をもう1枚

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