1つの単語を「深く知る」ワードマップ ― 意味・仲間・使い方を1枚に
「意味を1つ覚えた」は、単語を知ることのほんの入り口。真ん中に1語、まわりに派生語・コロケーション・自分の例文。単語との「関わり」を増やす活動です。
- ⏱ 時間
- 10-15分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 個人→ペア
- 🎯 技能
- 語彙・ライティング
- 📶 CEFR
- A2-B2

- 単語を「意味1つ」ではなく、形・使い方・仲間の語までふくめて知る。
- 自分の例文を書くことで、その語を「自分のこと」に結びつける。
- 辞書を「意味を調べる道具」から「使い方を調べる道具」に変える。
ワードマップってなに?
ひとことで言うと、大事な単語を1つ真ん中に書き、そのまわりに意味・仲間の形(派生語)・よく一緒に使う語・似た語や反対の語・発音・自分の例文を書き出して、1つの単語を深く知るための図です。
単語を「知っている」には、意味のほかにも、形・使い方・一緒に使う語など、たくさんの面があります 1。単語テストで意味を1つ答えられても、文の中で使えるとは限りません。ワードマップでは、辞書で調べながら1語のいろいろな面を1枚に集め、最後に自分のことを書いた例文で、その語を実際に使ってみます。
新しく知り合った人の「プロフィール帳」を作るようなものです。名前(=意味)だけでなく、家族(=派生語)、仲のいい友だち(=よく一緒に使う語)、似ている人(=類義語)、呼び方(=発音)まで知ると、その人とぐっと親しくなれます。名前を知っているだけの人と、よく知っている人のちがいが、意味だけ覚えた単語と使える単語のちがいです。
似た活動とのちがい
| ワードマップ | コロケーション・ハント | マインドマップ・スピーキング | |
|---|---|---|---|
| 真ん中にあるもの | 大事な単語1つ | (真ん中はなく)教科書本文 | 話すお題 |
| 書き出すもの | その語の意味・形・使い方・例文 | 本文中の「一緒に使う語」のかたまり | 話す内容の単語 |
| ねらい | 1語を深く知る | かたまりで覚える | 原稿なしで話す準備 |
やり方を3ステップで
- 語を決める:本文の中で何度も使いそうな大事な語を1つ選ぶ(先生が割りあててもよい)。
- 調べてうめる:辞書や教科書で調べながら、6つの枠(意味・仲間の形・一緒に使う語・似た語/反対の語・発音・自分の例文)をうめる。
- 見せ合って学ぶ:ペアでマップを見せ合う。同じ語なら相手のマップから1つ書き足し、違う語なら相手の語で学んだことを1つ別の欄に書く。数日後にマップを隠して思い出してみる。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜2:00 | 黒板に decide のマップをモデルとして書いて見せる | 6つの枠の中身を確認 |
| 2:00〜3:00 | 1人1語(またはペアで1語)を割りあてる | 自分の語をワークシートに書く |
| 3:00〜11:00 | 机の間を回り、③(一緒に使う語・使い方)の探し方を個別に教える | 辞書・教科書で調べながら6つの枠をうめる |
| 11:00〜14:00 | 「ペアで見せ合おう」 | 同じ語なら相手のマップから1つ書き足す/違う語なら相手の語で学んだことを別の欄に書く |
| 14:00〜15:00 | 良い例文を2〜3個読み上げ、コロケーションに下線 | 聞いて、自分の例文を見直す |

- 語を選ぶ。 本文の中で、何度も使いそうな重要語(例:decide, environment, popular)を1人1語、またはペアで1語。担当語は先生が名簿順に割りあてると、選ぶ時間を節約できます。
- モデルを見せる(2分)。 黒板の真ん中に decide と書き、まわりに6つの枠を描いて、先生が1つずつうめて見せます。
- ワークシートの6つの枠をうめる(8分)。
- ① 意味(日本語)と品詞
- ② 仲間の形(派生語):decide → decision / decisive
- ③ よく一緒に使う語・使い方:コロケーション(よく使う組み合わせ)の make a decision と、語法・文型の decide to + 動詞 を分けて書く
- ④ 似た語・反対の語
- ⑤ 発音・アクセント(強く読む所に●)
- ⑥ 自分のことを書いた例文
- 辞書の使い方をその場で教える。 ②③は辞書の例文の中から探させます。紙の辞書でも電子辞書でも、太字の組み合わせ表示を見るよう声をかけます。
- ペアで見せ合う(3分)。 ペアが同じ語を担当しているときは、相手のマップから「いいな」と思った枝を1つ自分のマップに書き足します。違う語のときは、ワークシートの「From my partner's map」欄に、相手の語と、そこから学んだことを1つ書きます。
- 数人の例文を全体で紹介。 先生は良い例文を板書し、③のコロケーションに下線を引きます。
- 掲示または保存。 完成したマップは教室に掲示するか、ノートに貼らせます。数日後の想起クイズの材料になります。
中学向けのマップに向く語(どれも派生語・組み合わせが豊富)
- decide(decision / decide to ~ / make a decision)
- popular(popularity / be popular with ~)
- interest(interesting / interested / be interested in ~)
- help(helpful / help ~ with … / ask for help)
- use(useful / useless / use A for B / use A to do)
- care(careful / careless / take care of ~)
高校向け 7. environment(environmental / protect the environment) 8. depend(dependent / independent / depend on ~) 9. solve(solution / solve a problem / find a solution) 10. influence(influential / have an influence on ~) 11. succeed(success / successful / succeed in ~) 12. agree(agreement / disagree / agree with ~)
- 小学校:文字は最小限に。真ん中に絵カード、まわりに「色」「大きさ」「どこにある?」の絵や英単語を貼る「絵のマップ」にします。
- 中学:枠を3つ(意味・仲間の形・自分の例文)にしぼると、10分で終わります。
- 高校:③コロケーションと④類義語の使い分け(例:big / large / huge)を重点に。英英辞典を使わせても。
- 大人数クラス:班ごとに1語を担当し、完成マップを教室に掲示。他の班のマップを見て回る「ギャラリーウォーク」をすると、自分の班以外の語のマップも読めます。
- 苦手な生徒が多いクラス:②③に選択肢を用意しておき(decision / decisive / decided から選ぶ)、①と⑥だけ自分で書く形にします。
- オンライン・タブレット:共同編集のスライドに1人1枚。先生が画面共有でいくつか紹介します。
- 知識・技能:派生語・コロケーションを正しく調べて書けているか。後日、マップの語を使った穴埋め問題で確かめます。
- 知識・技能(つづき):⑥の例文で、その語を正しい使い方(語法・コロケーション)で使えているか。
- 思考・判断・表現:語彙の練習が中心の活動なので、この観点は別の場面で見るのが自然です。見るなら、「新しいクラスメートに自分を紹介するために、伝えたい内容を選んで、その語を使って文を作る」のように、目的・相手・場面を決めて書かせます。
- 主体的に学習に取り組む態度:辞書を使ったか・ペアのアイデアを取り入れたかは、チェックリストでの確認にとどめます。見るなら、必要な情報が見つからないときに辞書の見出しや用例を見直し、得た情報をもとにマップや例文を直そうとしているか(粘り強さと、やり方の調整)を、ふり返り欄などで見ます。
| 観点 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| ②③の調べ | 派生語とコロケーション・使い方を複数正しく書けている | どちらか1つは正しく書けている | 誤りが多い、または自分で適切な情報を見つけるのが難しく、手助けが必要(空欄は判断材料が足りないものとして別に扱う) |
| ⑥の例文 | 語の使い方が正しく、自分のことが伝わる | 少し誤りはあるが意味は通じる | 例文がない・辞書の写し |
- 全部の新出語でやろうとして時間が足りなくなったら → 1語に10分かかります。何度も使う重要語だけにしぼります。
- 辞書の例文をそのまま写していたら → ⑥は「自分のこと」に限定し、主語を I や my family にするよう声をかけます。
- ③コロケーションが見つけられない生徒がいたら → 辞書の太字・例文のどこを見るかを、投影して1回やって見せます。
- 作って終わりになっていたら → 数日後に、マップを隠して「真ん中の語から何本の枝を言えるか」をペアで試すと、想起クイズ にもなります。
- ペアの見せ合いが雑談になったら → 「1つ写したら手を挙げる」など、終わりの合図をはっきりさせます。
語彙研究の総説では、単語を「知っている」と言うには、意味だけでなく形・使い方・一緒に使う語など多くの側面があり、語彙学習の大原則は学習者が語と関わる量(engagement)を増やすことだとまとめられています 1。ワードマップは、1語について何度も調べ、考え、書くことで、この「関わり」を1枚に集める活動です。
関与負荷仮説(Involvement Load Hypothesis)という考え方もあります。その語が「必要」で、自分で「調べ」、文の中で使えるか「判断する」ほど、語が記憶に残りやすいというものです 2。ワードマップでは、辞書で語の意味を調べる場面が「調べる(Search)」に、自分の例文で使う場面が「判断する(Evaluation)」に近い作業です。辞書で派生語を集める作業も語に関わる量を増やしますが、原論文の「調べる」(知らない語の意味や、言いたいことに合う語を探すこと)と厳密に同じとは限りません。
単語に向き合う活動をすれば必ず覚えられる、というわけではありません。単語カード・単語リスト・書く・穴埋めなどの意図的な語彙学習をまとめたメタ分析では、活動によって覚えられた割合に大きなばらつきがあり、時間がたつと成績は大きく下がっていました 3。この結果は、一度の活動だけでは長く覚えていられるとは限らないことを示しています。そこから考えると、後日に復習や思い出す機会を設けるのが妥当です(復習のあり・なしを比べた研究ではありません)。なお、⑥で自分の文の中で語を使うことは、関与負荷仮説でいう「判断する」にあたる作業として位置づけられます 2。
❓ よくある質問
Q. ワードマップには、何を書かせればいいですか?
真ん中に重要語を書き、まわりの6つの枠に ①意味と品詞 ②派生語(decide → decision / decisive)③よく一緒に使う語・使い方(make a decision / decide to + 動詞)④似た語・反対の語 ⑤発音・アクセント ⑥自分のことを書いた例文、を書かせます。
Q. ワードマップは、すべての新出語で作るべきですか?
1語に10分ほどかかるので、本文の中で何度も使いそうな重要語だけにしぼります。1人1語かペアで1語を担当させ、名簿順に割りあてると選ぶ時間を節約できます。中学なら枠を意味・仲間の形・自分の例文の3つにしぼると、10分で終わります。
Q. なぜ意味だけでなく、使い方まで調べさせるのですか?
単語を知っているとは、意味だけでなく形・使い方・一緒に使う語など多くの側面を知ることで、語彙学習の大原則は学習者が語と関わる量を増やすことだ、と語彙研究の総説はまとめています 1。自分で調べ、自分の文で使うほど記憶に残りやすいという関与負荷仮説もあります 2。
Q. 辞書の例文を、そのまま写してしまいます。
⑥の例文は「自分のこと」に限定し、主語を I や my family にするよう声をかけます。コロケーションが見つけられない生徒には、辞書の太字・例文のどこを見るかを投影して、1回やって見せます。
Q. ワードマップを作っても、忘れてしまいます。
意図的な語彙学習のメタ分析では、時間がたつと成績が大きく下がっていました 3。数日後にマップを隠して「真ん中の語から何本の枝を言えるか」をペアで試すなど、思い出す機会を作ります。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Schmitt, N. (2008). Instructed second language vocabulary learning. Language Teaching Research, 12(3), 329-363. doi:10.1177/1362168808089921 ✔ DOI照合済語彙指導研究の総説。1語について覚えるべき側面は多く、語との関わり(engagement)を増やすことが最大の原則
- Laufer, B., & Hulstijn, J. (2001). Incidental vocabulary acquisition in a second language: The construct of task-induced involvement. Applied Linguistics, 22(1), 1-26. doi:10.1093/applin/22.1.1 ✔ DOI照合済課題の「必要・検索・評価」の度合い(関与負荷)が語の定着を左右するという関与負荷仮説の論文
- Webb, S., Yanagisawa, A., & Uchihara, T. (2020). How effective are intentional vocabulary-learning activities? A meta-analysis. The Modern Language Journal, 104(4), 715-738. doi:10.1111/modl.12671 ✔ DOI照合済単語カード・単語リスト・書く・穴埋めなど「覚えるための活動」の習得率をまとめたメタ分析(22研究)
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





