4/3/2(フォー・スリー・ツー) ― 同じ話を、相手を替えて、だんだん短く
同じ話を3人に、4分→3分→2分と時間を縮めて話すだけ。「内容を一から考える負担」を軽くして、口をなめらかに動かす練習に集中させる定番の流暢さトレーニングです。
- ⏱ 時間
- 10-15分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- ペア
- 🎯 技能
- スピーキング・帯活動
- 📶 CEFR
- A2-B1

- 同じ内容を3回話すことで、「何を言うか」ではなく「どう速く言うか」に頭を使わせる。
- 時間がだんだん短くなる「ちょっと背伸び」の状況で、ふだんより流暢に話す体験をさせる。
- 聞き手は毎回新しい人なので、くり返しても「伝える」目的が消えない。
4/3/2 ってなに?
ひとことで言うと、同じ話を、相手を替えながら3回、持ち時間をだんだん短くして話す活動です(もとは4分→3分→2分。このページでは中高向けに2分→1分30秒→1分)。
同じ道を3回自転車で走るようなものです。1回目は道を確かめながらゆっくり、2回目は道がわかっているので少し速く、3回目は前を見てすいすい走れます。道(話す内容)を一から考える必要が減るぶん、ペダルをこぐこと(なめらかに話すこと)に集中できるのが大事なところです。ただし速く走るために、寄り道(細かい話)は省いて、大事な道すじ(要点)だけを通ります。
スピーチ発表・ふつうのくり返し練習とのちがい
| スピーチ発表 | 同じ時間でのくり返し | 4/3/2 | |
|---|---|---|---|
| 準備 | 原稿を書いて覚える | キーワードのメモ | キーワードのメモだけ |
| 時間 | 1回 | 毎回同じ長さ | だんだん短くなる |
| 聞き手 | クラス全員 | 同じ相手のことも | 毎回ちがう相手 |
| 主にねらうもの | 内容・発表の仕方 | 流暢さに加え、正確さ・複雑さも少し | 流暢さ(くり返しの中での正確さの改善は見られにくい) |
やり方を3ステップで
- メモする:話題を選び、キーワードを5つだけ書く(文は書かない)。
- 3回話す:相手を替えながら、同じ話を2分→1分30秒→1分で話す。短くなるほど、要点を残して細かいところを省く。
- ふり返る:言えなかった語・言いたかった表現を書き、先生が1〜2個だけ全体で教える。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 活動 | 先生のポイント |
|---|---|---|
| 0:00〜2:00 | 話題の提示・キーワードメモ(A も B も全員が自分の話題で) | 文は書かせず、キーワード5つまで |
| 2:00〜4:00 | 1回目(A が話す・2分) | 聞き手は相づちだけ、質問なし |
| 4:00〜5:50 | 移動(20秒)→ 2回目(相手を替えて1分30秒) | 列がずれる方向を毎回同じに |
| 5:50〜7:10 | 移動(20秒)→ 3回目(相手を替えて1分) | 「大事な要点を選んで、相手に伝わる速さで」と声かけ |
| 7:10〜12:40 | 役割交替(20秒)→ B が同じ流れ(2分+移動20秒+1分30秒+移動20秒+1分) | 先生は机の間を回りながら、生徒が言えなかった語をメモする |
| 12:40〜14:40 | ふり返り・表現の共有 | 1〜2個だけ板書、ワークシートに記入 |

- 机の配置:2列を向かい合わせにする。窓側の列が A(話し手)、廊下側の列が B(聞き手)。B の列だけが毎回1つずつずれる(端の人は反対の端へ)。
- 話題を決めてメモ(2分):A も B も全員が、自分が話し手になるときの話題をワークシートから1つ選び、キーワードを5つだけ書く(B はこのメモを後半で使う)。板書「Key words only! No sentences.」
- 1回目(A が話す・2分):B は聞き役。うなずき・相づちだけで、質問はしない。
- 相手を替えて2回目(同じ話を1分30秒):B が1つ横にずれて新しいペアに。A は同じ話を、短い時間で伝える。全部を早口で詰めこむのではなく、要点を残して細かいところは省いてよい。
- 相手を替えて3回目(同じ話を1分):もう一度ずれて、同じ話を1分で。
- 役割を交替:B が話し手、A が聞き手になって同じ流れをくり返す。B(話し手)はその場に座ったままで、今度は聞き手の A の列が毎回1つずつずれる。
- ふり返り(2分):ワークシートの表に「要点を伝えられたか(◎○△)」と「言いたかった語」を書く。先生は、机の間を回りながらメモした「生徒が言えなかった表現」を1〜2個だけ板書して教える。
中学向け(過去形・好きなもの)
- My best memory this year(今年いちばんの思い出)
- What I did last weekend(先週末にしたこと)
- My favorite food and why(好きな食べ物とその理由)
- A place I want to visit(行ってみたい場所)
- My favorite season(好きな季節)
- A person I respect(尊敬する人)
- My school trip(修学旅行)
高校向け(意見・説明) 8. Something I want to try in the future(将来挑戦したいこと) 9. A book, movie, or song that changed me(自分を変えた作品) 10. Should students have part-time jobs?(高校生のアルバイトに賛成?) 11. The good and bad points of smartphones(スマホの良い点・悪い点) 12. Summarize today's textbook story(今日の教科書本文の要約)
- 小学校:時間は30秒→20秒→15秒くらいに短くする。話す内容は「I like ... . I play ... . It's fun.」など3〜4文の自己紹介でよい(研究で確かめられた設定ではなく、実践上の目安です)。
- 中学:2分→1分30秒→1分が目安。キーワードメモを必ず書かせてから始める。
- 高校:本来の4分→3分→2分に近づける。話題を教科書本文の要約や賛否と理由にすると、リテリングの練習にもなる。
- 大人数クラス:40人なら2列を向かい合わせにし、片方の列だけずれる。半数が同時に話し、残りの半数も聞き手として参加するので、発表の順番を待つ時間がほとんどない。
- 苦手な生徒が多いクラス:1回目の前に先生が同じ話題で30秒のモデルを見せる。キーワードの代わりに「絵を3コマ描いてよい」にすると話しやすい。
- オンライン・タブレット:ブレイクアウトの組み替えは手間なので、録音アプリで「同じ話を3回、時間を縮めて自分に録音」する個人版にする。録音から「1分あたりの語数」を出して、1回目と3回目を比べる(1回目は2分、3回目は1分なので、語数そのものを比べても伸びはわからない。止まった回数も合わせて見る)。
毎回の授業で短く続ける活動なので、毎回の点数化はせず、学期に1〜2回、3回目の発話を録音して見ます。
- 知識・技能:既習の語句や文で、止まらずに話し続けられているか(話す速さ・ポーズの少なさ)。
- 思考・判断・表現:時間が短くなっても、話の要点(いつ・何を・どうだった)を落とさずに伝えているか。
- 主体的に学習に取り組む態度:毎回のふり返りで「言えなかった語」「止まった場面」を見つけ、次の回の話し方(キーワードの選び方、つなぎの表現の使い方など)を変えて試そうとしているか。1回のつなぎの表現の使い方だけでは判断せず、何回かのふり返りの記録から見ます(この観点は、粘り強い取組の中で自分の学習を調整しようとしているかを含めて見るものです 1)。
| 観点 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| 流暢さ | 1分間ほぼ止まらず話せる | 何度か止まるが最後まで話せる | 途中で話が止まってしまう |
| 内容 | 要点がすべて伝わる | 要点の一部が抜ける | 要点が伝わらない |
| ふり返りと次の工夫 | ふり返りをもとに次の回の話し方を自分で決め、試している | 先生の助言をもとに次の回の話し方を決めている | ふり返りが「楽しかった」などで終わる(次に試すことを一緒に1つ決める) |
- 1回目から言葉に詰まって、2回目以降も速くならない → 話題を全員が「言うことがある」ものにかえ、キーワードメモの時間を必ずとる。
- 聞き手が退屈して私語を始めたら → 聞き手に「話の中のキーワードを1つメモする」役目を与え、ラウンド後に1人に聞く。
- 列のずれ方で混乱したら → ずれるのは B の列だけ・いつも右へ、と板書して固定する。最初の1回は先生が一緒に移動して見せる。
- 流暢さの活動なのに、つい途中で誤りを直したくなったら → 話している最中は止めず、机の間を回りながらメモして、ふり返りの時間にまとめて扱う。
- 正確さも伸ばしたいときは → 時間を縮めるだけでは、くり返しの中で正確さははっきり上がらなかったので、言語を見直す機会を活動の早い段階に入れることが研究者から提案されています 2。たとえば1回目のあとに「言いたかった表現」を確認する1分をはさむ(1分は実践上の目安で、この入れ方の効果を確かめた研究ではありません)。
もともとの 4/3/2 は、同じ話を相手を替えながら4分・3分・2分で話す活動です。6人の上級の成人学習者(8つの事例)を観察した研究では、1例を除いて3回目の方が速く話せるようになり、言いよどみや言い直しはすべての事例で減りました。文法の正確さは、同じ文法の形がくり返された部分で少し改善が見られたものの、誤りの総数がはっきり減ったわけではありませんでした。また、短い時間に収めるために、学習者は主に重要でない細かい情報を省いていました 3。
その後の実験では、同じ話を4分・3分・2分でくり返したグループは、トレーニング後のテストでも流暢さを保ち、毎回ちがう話題で話したグループより効果が残りました。くり返したグループは同じ語を何度も使っていましたが、著者たちは、伸びを個々の語の取り出しが速くなったことだけでは説明できないとし、語句や文を組み立てる言語の処理が手続き化した(使い慣れて自動的になった)可能性を挙げています 4。対象は ESL の授業を受ける24人です。
ただし「時間を縮める」部分には注意が必要です。時間を縮めると流暢さは最も伸びましたが、正確さや文の複雑さはほとんど変わらず、1回目の言い回しをそのまま再生する傾向が強く出ました 25。時間の長さを変えずにくり返した条件の方が、正確さ・複雑さが少し伸びたという報告もあります 2。どの研究も少人数の学習者が対象で(時間を縮める条件と縮めない条件を比べた研究は、ベトナムの英語学習者20人)、日本の中高生や、このページの短い時間の版で確かめたものではありません。
❓ よくある質問
Q. 4/3/2とはどんな活動ですか?
もともとは、同じ話を相手を替えながら4分・3分・2分で話す活動です 3。このページでは中高向けに2分・1分30秒・1分で回します。聞き手が毎回新しい人なので、同じ話をくり返しても「伝える」目的が消えません。
Q. 机の配置と、相手の替え方は?
2列を向かい合わせにし、片方の列が話し手、もう片方が聞き手です。聞き手の列だけが毎回1つずつずれ、端の人は反対の端へ移ります。「ずれるのは B の列だけ・いつも右へ」と板書して固定し、最初の1回は先生が一緒に移動して見せます。
Q. 話している途中で、誤りを直してもいいですか?
流暢さの活動なので、話している最中は止めません。先生は机の間を回りながら「言えなかった語」や誤りをメモし、最後のふり返りで1〜2個だけ板書してまとめて扱います。話す前のメモはキーワード5つまでにし、文は書かせません。
Q. 4/3/2で正確さも伸びますか?
時間を縮めると流暢さは最も伸びましたが、正確さや文の複雑さはほとんど変わらず、1回目の言い回しをそのまま再生する傾向が出ました 2。正確さも伸ばしたいときは、1回目のあとに「言いたかった表現」を確認する1分をはさむ方法があります(研究者が提案している工夫で、効果そのものは確かめられていません)。
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📑 出典(5件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- Thai, C., & Boers, F. (2016). Repeating a monologue under increasing time pressure: Effects on fluency, complexity, and accuracy. TESOL Quarterly, 50(2), 369-393. doi:10.1002/tesq.232 ✔ DOI照合済4/3/2(時間を縮める)と、同じ時間でくり返す条件を比べた実験。時間を縮めると流暢さは最も伸びるが、正確さ・複雑さは伸びにくかった
- Nation, P. (1989). Improving speaking fluency. System, 17(3), 377-384. doi:10.1016/0346-251X(89)90010-9 ✔ DOI照合済4/3/2 の古典的研究。同じ話を相手を替えて4分・3分・2分でくり返すと、話す速さ・正確さ・内容のまとめ方が一時的に上がることを観察
- de Jong, N., & Perfetti, C. A. (2011). Fluency training in the ESL classroom: An experimental study of fluency development and proceduralization. Language Learning, 61(2), 533-568. doi:10.1111/j.1467-9922.2010.00620.x ✔ DOI照合済同じ話を時間を縮めてくり返す(4/3/2)練習で、流暢さが伸び、新しい話題にも転移した実験
- Boers, F. (2014). A reappraisal of the 4/3/2 activity. RELC Journal, 45(3), 221-235. doi:10.1177/0033688214546964 ✔ DOI照合済同じ話を4分・3分・2分でくり返す 4/3/2 活動で、流暢さは伸びるが正確さは伸びにくいことを示した研究
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





