ギャラリーウォーク ― 友だちの英作文を「美術館のように」読み歩き、付箋でコメントを残す
書いた英作文を机の上や壁に並べ、全員が付箋を持って見て回る。前で発表するより緊張が小さくなりやすく、たくさんの英文を読み、良いところを見つけて書く。コメントを「書く側」こそ伸びる、という研究もある復習・推敲の活動です。
- ⏱ 時間
- 15-20分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 全体(立ち歩き)
- 🎯 技能
- ライティング・リーディング・復習
- 📶 CEFR
- A2-B1

- 友だちの英文をたくさん読み、上手な表現・構成を見つけて自分の作文に取り入れる。
- 「良いところ2つ+提案1つ」の型で、具体的で優しいコメントを英語で書く。
- コメントを受け取って、自分の作文を書き直す(推敲する)。
英作文を書かせたあと、先生が全員分を添削して返す――これだけで週末が消えます。しかも生徒は赤ペンの数を見て落ちこむだけ、ということも少なくありません。ギャラリーウォークでは、まず生徒どうしで読み合い、コメントし合います。生徒にとっては、自分と同じレベルの英文を何本も読める貴重な機会でもあります。
ギャラリーウォークってなに?
ひとことで言うと、書いた英作文を机や壁に並べ、全員が美術館のように見て回って読み、付箋で「良いところ2つ+提案1つ」のコメントを残し、最後に自分の作文を書き直す活動です。
料理教室で、みんなが作った料理を試食して回り、「この味つけがいい」「もう少し塩を」とメモを置いていくようなものです。人の料理を味わううちに「この工夫、自分もまねしよう」と気づきます。コメントを書くために人の作品をよく読むことが、自分の作品をよくするヒントになるのが大事なところです。
発表会・先生の添削とのちがい
| 発表会(前で読み上げ) | 先生の添削 | ギャラリーウォーク | |
|---|---|---|---|
| 読む・聞く作品の数 | 発表した数人分 | 自分の1本 | 1回で5〜6本ほど |
| コメントするのはだれ | 先生(と一部の生徒) | 先生 | 生徒全員が、複数の友だちの作品に |
| 緊張 | 大きい | なし | 前で話さないので小さくなりやすい(作品を見られるのが苦手な生徒には番号で展示) |
| そのあと | 発表で終わりがち | 赤ペンを見て終わりがち | コメントを使って書き直す |
やり方を3ステップで
- 並べる:英作文を机の上に置き、付箋を1人6枚以上持つ。
- 見て回る:合図で時計回りに移動し、1作品1分30秒〜2分(移動をふくむ)で読んで、付箋に「★2つ+♡1つ」を書いて貼る。
- 書き直す:席に戻ってもらった付箋を読み、まねしたい表現も使って、自分の作文を1か所以上書き直す。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 活動 | 先生の動き |
|---|---|---|
| 0:00〜3:00 | コメントの型の説明・先生の実演 | 1つの作文に付箋を貼る見本を見せる |
| 3:00〜4:00 | 作品を机の上に置き、付箋を配る(1人6枚以上) | 動く順番(時計回り)を指示 |
| 4:00〜14:00 | ギャラリーウォーク(1作品1分30秒〜2分、5〜6本) | 合図で次の作品へ。コメントの質を見て回る |
| 14:00〜16:00 | 自席に戻り、もらった付箋を読む | 良いコメントを2〜3紹介 |
| 16:00〜20:00 | まねしたい表現のメモ・自分の作文の書き直し | 書き直した部分に下線を引かせる |

- 作品を用意:前の時間に書いた英作文(自己紹介、日記、スピーチ原稿、意見文など)。名前は書いても番号でもよい(恥ずかしがるクラスは番号で)。
- コメントの型を教える:「Two Stars and a Wish」=良いところ2つ(★)と提案1つ(♡)。「Good!」だけは禁止、どこが良いかを具体的に書く。
- 先生の実演:見本の作文を拡大投影し、1枚の付箋に★2つと♡1つを書いて貼って見せる(1つの作品に付箋は1枚)。「I like your sentence "…"」のように本文を引用するのがコツ。
- 配置:作品を自分の机の上に置き、全員が立つ(名前を伏せて番号で展示するときは、自分の机に置くとだれの作品か分かってしまうので、授業の前に先生が集めて番号をつけ、順番を混ぜて机に置いておく)。時計回りに1つずつ移動する(班単位で移動してもよい)。
- ギャラリーウォーク(10分):1作品1分30秒〜2分(移動をふくむ。50語ほどの作品の目安)で、5〜6本読む。100語を超える意見文やブックレビューなどは、1作品3分ほどにして読む数を3本に減らすか、コメントを★1つ+♡1つにする。授業の前に、先生が見本の作品を1本読んで付箋を書き、かかる時間を試しておく。先生の合図で次へ。1つの作品に付箋は1人1枚。全作品を回れなくてもよい。気に入った表現はワークシートにメモする。
- 付箋を読む(2分):自席に戻り、もらった付箋を読む。いちばん役に立ったコメントに○をつける。
- 書き直し(4分):付箋やメモした表現を使って、自分の作文の1か所以上を書き直す。書き直した部分に下線を引いて提出する(先生は下線部分を中心に見ればよいので、添削の負担が減る)。
ギャラリーウォークに向く作品(中学〜高校)
- 自己紹介カード(My name is … / I like … / I can …)
- 夏休みの思い出日記(過去形)
- 将来の夢のスピーチ原稿(want to / because)
- 好きな場所・おすすめの店の紹介(There is … / You can …)
- 町の紹介ポスター(ALT や海外の人向け)
- 「学校に〇〇は必要か」意見文(I think … / First, … Second, …)
- 教科書の物語の続き・別の結末
- 英語の短い詩(俳句・acrostic poem)
- 修学旅行のしおり・おすすめ観光プラン
- 自分が選んだ社会問題についての提案(高校)
- 読んだ本の紹介(ブックレビュー)
- 4コマ漫画のセリフ
★ 良いところのコメント:I like your sentence "…". / Your example about … is interesting. / You used "because" well. / Your first sentence catches my attention. / Your ending is great. ♡ 提案のコメント:Maybe you can add … / How about using … instead of …? / I want to know more about … / Check the spelling of … / You can use "First, Second" to make it clear.
- 小学校:絵+短い英語のカード(I like …)を並べ、シールやスタンプで「いいね」を貼る。コメントは「Nice!」「Cute!」など1語でよい。
- 中学:コメントは日本語でもよいところから始め、慣れたら英語のコメントの型に移る。文法のチェック項目(三単現の s、過去形)を1つだけ指定して探させると、見るところがはっきりする。
- 高校:意見文で、反論や質問を付箋に書く(I agree, but what about …?)。作者は付箋に答える形で書き直す。
- 大人数クラス:40作品は10分では読みきれないので、班(10人)の中の作品だけを読む、または「自分の席の前後5作品」に限定する。
- 苦手な生徒が多いクラス:コメントは★1つでよいことにし、コメントの型の文に作品の言葉を入れるだけにする。作品はあらかじめ先生がざっと見て、大きな問題がないものにしておく。
- オンライン・タブレット:共有スライドに1人1枚で作品を貼り、コメント機能や付箋アプリでコメントする。教室の外(家)でも読めて、別のクラスの作品も読める。
ギャラリーウォークは、作文を完成させる途中の形成的な活動です。原則は、その場で助言して次に生かす評価にします。記録に残す場合は、1回の活動用の表をそのまま使わず、単元の目標と評価規準に合わせて、書き直し後の作文(下線部分)と書いたコメントの質を見ます。下の表はそのための例です。
| 観点 | 見るところ | A(十分満足) | B(おおむね満足) | C への手立て |
|---|---|---|---|---|
| 知識・技能 | 書き直した英文の正確さ | 修正した箇所を、既習の語句・文法を使って正確に書き直せる | 既習の語句・文法を使って、おおむね正確に書き直せる | 先生がどこを直すか一緒に選ぶ |
| 思考・判断・表現 | コメントの具体性 | 本文を引用し、具体的な良い点と提案を書ける | 良い点を具体的に書ける | コメントの型を選ばせる |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 助言をもとにした書き直しの判断 | もらったコメントを比べて、採用する助言とその理由を考え、自分の作文をよりよく書き直している | コメントを参考に、自分の作文を書き直そうとしている | いちばん役に立ったコメントを1つ一緒に選び、どう直すか考えさせる |
読んだ作品の数やコメントした数は活動を進めるための目安で、評価の根拠にはしません。「主体的に学習に取り組む態度」は、粘り強い取組の中で自分の学習を調整しようとしているかを含めて見る観点です 1。1回の書き直しだけで判断せず、単元の中の何回かの書き直しと振り返りの記録(どの助言を選び、どう直し方を変えたか)から見ます。文章全体のまとまりも評価したいときは、下線部分だけでなく書き直し後の全文を提出させます。
- コメントが「Good!」「Nice!」だけ→ 本文を引用する型(I like your sentence "…")を必ず使うルールにする。良いコメントの例を先生が読み上げる。
- 悪口・からかいのコメントが出る→ 最初に「作者が読んで、うれしくて、役に立つコメント」がルールだと確認する。付箋に自分の名前を書かせると、責任をもったコメントになる。
- 英文のまちがいをどんどん指摘してしまう→ 文法の指摘は1つまで、と決める。内容へのコメントを優先する。
- 見るだけで読まない・ふざけて歩く→ 1作品ごとに付箋1枚を必ず書くので、読まないと書けない。合図で移動する形にして、だらだら歩きを防ぐ。
- 自分の作品を見られるのを嫌がる→ 全員の作品を名前を伏せて番号で展示する(先生が集めて順番を混ぜて置き、作者の席とは関係ない机に並べる)。それでも不安が強いクラスは、先生が書いた見本や、名前を消した過去の作品(使ってよいと本人が了承したもの)を並べる練習から始め、次の回から自分の作品を出すか本人が選べるようにする。
集中英語プログラムで学ぶ英語学習者91人(9クラス・2つのレベル)を対象にした研究では、1学期のあいだ他人の作文にコメントする「与える側」だけをしたグループと、コメントを「受け取る側」だけをしたグループを比べたところ、与える側のグループの方が自分の作文の力をより大きく伸ばしました。また、与える側の中では、習熟度の低いレベルの学習者の方が、高いレベルの学習者より大きく伸びたと報告されています 2。ただしこれは1学期にわたる研究です。ギャラリーウォークでは1回の授業で、一人ひとりが5〜6回ほど「与える側」を経験します。
第二言語のライティングでの生徒どうしのフィードバック(ピア・フィードバック)の研究26本をまとめたメタ分析では、全体として作文にプラスの効果(d = .73)が見られ、先生のフィードバックや自己推敲と比べて有意な差はありませんでした(ただし比較した研究は少数)。また、ことば(語彙・文法)より内容に対して効果が大きく、新しく書く作文より書き直しに対して効果が大きかったとされています 3。これは研究どうしを比べた分析で、「内容中心のコメントを書かせると効果が大きい」と直接比べた結果ではありません。それでも、書き直しや内容面で効果が大きく出ていたことを手がかりに、ギャラリーウォークのあとに必ず書き直しの時間をとり、コメントでは内容にも目を向けさせています。
❓ よくある質問
Q. コメントが「Good!」「Nice!」だけになるときは?
良いところ2つ(★)と提案1つ(♡)を書く「Two Stars and a Wish」の型を教え、「Good!」だけは禁止にします。I like your sentence "…" のように本文を引用する型を必ず使うルールにし、良いコメントの例を先生が読み上げます。
Q. 悪口やからかいのコメントが心配です。
最初に「作者が読んで、うれしくて、役に立つコメント」がルールだと確認し、付箋に自分の名前を書かせます。作品を見られるのを嫌がるクラスは、先生が集めて名前を伏せ、番号をつけて順番を混ぜて展示します。それでも不安が強ければ、先生が書いた見本や、本人の了承を得て名前を消した過去の作品で練習してから、次の回に自分の作品を出すか本人が選べるようにします。
Q. 英文のまちがいを指摘させてもいいですか?
文法の指摘は1つまでと決め、内容へのコメントを優先します。ピア・フィードバックのメタ分析では、語彙・文法より内容に対して、新しく書く作文より書き直しに対して効果が大きかったとされています 3。研究どうしを比べた結果で、内容中心のコメントそのものを比べたわけではありませんが、これを手がかりに最後に必ず書き直しの時間をとります。
Q. コメントを書く側にも効果はありますか?
他人の作文にコメントする「与える側」だけをしたグループは、「受け取る側」だけのグループより自分の作文の力を大きく伸ばし、与える側の中では習熟度の低いレベルの学習者の方が大きく伸びたと報告されています 2。ただし1学期にわたる研究です。ギャラリーウォークでは1回の授業で、一人ひとりが5〜6回ほど与える側を経験します。
🎁 玉手箱で使えるツール
原田英語の「英語の先生の玉手箱」の無料ツール。登録なしで授業にそのまま使えます。
📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- Lundstrom, K., & Baker, W. (2009). To give is better than to receive: The benefits of peer review to the reviewer's own writing. Journal of Second Language Writing, 18(1), 30-43. doi:10.1016/j.jslw.2008.06.002 ✔ DOI照合済91人の実験。他人の作文にコメントする「与える側」の方が、もらう側より自分の作文が伸びた
- Vuogan, A., & Li, S. (2023). Examining the effectiveness of peer feedback in second language writing: A meta-analysis. TESOL Quarterly, 57(4), 1115-1138. doi:10.1002/tesq.3178 ✔ DOI照合済英作文のピア・フィードバック(生徒どうしのコメント)のメタ分析(26研究)
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






